まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

崖っぷちの一戦。最後の福岡国際マラソン振り返り。【SUB-2:20】

福岡国際マラソン振り返り。

 

 

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もう落とせないレース

 

ひょっとして最後の昼スタートのフルマラソン?12時10分スタートなので当日はかなりゆったり準備した。

8時前に起きて、会場が近いので9時半にスペシャルドリンクを預けてから、またホテルに戻ってのんびり。やはりバタバタしないのは良いものだ。

 

気温は13℃、風も微風と、気象コンディションは事前に言われていた通り良さそう。

日差しは強かったが、昨年の方が僅かに暑かったかなと感じた。乾燥しているので、走って風が当たると手も冷たく感じる、気持ち良い天気だ。

 

レース前はそれなりに緊張した。昨年はコロナ禍で久々のロードレースで規制もきつめだったのもあり、ややナーバスになってしまったが、今回は”もう落とせない“という気持ちがあった。

 

金沢マラソンも準備不足の中で30kmまでは良いレースができたと思うが、結果は終盤失速しての16位。

自分としては30〜35kmまで良いレースができていても、この2年で結果は出せていない、そしてタイムを狙うチャンスはもうしばらく無いかもしれない。

 

崖っぷち“というのは少々オーバーかもしれないが、周囲や自分自身にも「まだタイムを伸ばせる」と証明する必要があった。

 

 

[Start-5km-10km-15km]

 

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レーススタート。まずはオーバーペースにならない事と、集団選びが大切だ。

 

後方からレースを進めたが、すぐいくつも細かい集団に分かれた。

去年はみんなハイペースについていく展開となってしまったためか、今回はぼくと同じく自分に適正なペースで走ろうと考えている選手が多かったのではないだろうか。

 

最初の1kmは3分10秒と入りとしては普通くらいで、トラックを3周半ほどしてロードコースへ。今の集団で行ってもいいという所だったが、いつも一緒に走っている小田君くんがもう一つ前の集団を追ったので、ぼくも前を追う事にした。

 

一気に追いつくとエネルギーの消耗が激しいし、かと言ってダラダラ単独走しても疲れるので難しい所だったが、なんとか3kmくらいで追いついた。

ちょっと疲れたけど、ここからは集団を使ってジックリいきたい。

集団は15人ほどで今年のびわ湖マラソンで2時間16〜17分台を出したメンバーが揃っている。

よし、第一のミッションである集団選びは成功だ。ここで今回も失速したらもう言い訳は何も無い、自分の実力不足しかないぞ。

 

入りの5km通過は15:48。集団は落ち着いたように思ったが、昨年より速くて驚いた。

 

途中で行場さんが前に出てきた。9月に転倒で膝を怪我してから突貫工事で仕上げてきたそうだが、後半が強いタイプの選手なので、序盤でこの余裕度なら間違いなく終盤まで競る事になるはず。5-10kmは16:09。このくらいで進んでくれればいいかな。

 

序盤頑張ったためか、この辺りは若干キツく感じた。まぁこの辺はマラソンではよくある事なので、走りながら調子を整えていく。

 

次第に呼吸はだいぶ楽になっていったが、10−15kmは16:27とだいぶ落ちていた。これは目標タイムからすると少し遅いし、一気に落ちすぎではないかと感じた。

 

 

[15-20km-HALF-25km]

 

コースで1番大きな別府大橋の坂で一度先頭に出てみたが、深追いはせず集団の中に戻った。

 

徐々にペースは戻り、15-20kmは16:17。先頭の渋川選手がうまく引っ張ってくれて、ズルズル落ちるという感じにはならなそう。

ただハーフ通過は68:20と、5週間前の金沢マラソンよりは20秒ほど速いが、思ったより遅かった。

昨年より1分遅く、かといってその分余裕があるかというと微妙。さすがに今回は2時間16分台は難しいのではないか、と思った。

これで気落ちしてもいけないので、とにかく2時間17分台を目標に走りたい。

 

給水のスペシャルドリンクも今回は面白いように全部取れている。また胃の不快感もほぼゼロという嬉しい体調。(マラソン選手は出来るだけエネルギーを満タンにしておきたい上、レース中の給水もあり、しかも終盤につれて内臓も疲れていくので全く腹部の不調が無いというのは珍しい)

 

20-25kmは16:23。マラソンでは大体この辺りの距離でリズムが整ってきて、集団の中で流れるように走れる、1番楽しく走れる所である。

 

 

[25km-30km-35km]

 

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25km過ぎからは、いよいよ終盤に向けての余裕度を恐る恐る確認し始める局面。

オーバーペースだと30kmからガクッと身体に堪えるが、今までの経験からその予兆がなんとなくわかってくる。

 

メンバーも経験豊富な選手が多く、ここでは前に出たからない。それほどペースは上がらないのに、集団の整列が一直線になり、やや牽制気味になってしまった。

例年より路面が荒れているように感じ、前が詰まって軽くつまづくような事もあったので、一度給水を利用して前に出たり、横に出てリズムを整えたりしてみる。

 

やや疲れが出て、上体をうまく使えず横ブレしてきたのは感じていたが、慎重にレースを進めてきたのでまだ身体の燃料タンクはまだ十分残っていると感じた。

 

25-30kmは16:26、ほぼ同じペースはキープ。ここまで先頭を引っ張ってくれた渋川選手と山口くん(20'龍馬マラソン王者)に感謝。

 

 

昨年は30kmから一気に疲労がきたが、まず昨年のようにはならないだろう。1km毎の看板の通過も早く感じる時はまだ正常な状態という証拠だ。

 

いよいよ勝負の香椎の折り返し。ここで山口くんがペースアップ。遂にレースが動いた!

反応したのは唯一アディゼロ匠戦(薄底シューズ)で走る職人ランナー井上さんと小田くん。

 

何度も同じレースを走った事のあるが、持ちタイムはあちらがだいぶ上、この3人の勝負にぼくは混ざるべきか?少し悩んだ結果、追う事に決めた。

 

リスクはあるが、今のぼくの目標は自己ベストを1秒でも更新する事ではなく、2時間16〜17分台を出す事。

今のままだとダラダラ目標タイムから離れてしまう可能性がある。

現在の余裕度、残りの距離を考えるとなんとかなると思うし、自分の可能性に賭けたい。

 

すぐペースが落ちて集団が元に戻る事も考えられたが、明らかなペースアップで、4人が抜き出る形となった。

 

あぁやっぱり気持ち良い。これが人と競う醍醐味というものだ。

ここまで石橋を叩くようにレースを進めてきたが、開放されたような気分になった。

 

さすがに楽では無いが、まだいける。そんなにペースアップは続かないはずだ。緩い坂の名島橋も勢いづけてクリア。

30-35kmは16:22と少しペースアップ。きつくなり始める場面で加速できたのは非常に大きい。

 

 

[35-40km-FINISH]

 

しかし山口くんはここにきて、ペースを落ち着かせるどころか、さらにペースアップ。強い。ここは目算が外れてしまった。

まずぼくが離れ、前の2人も次第に離れていった。

 

さすがにここからはサバイバルレースか。

かなり苦しくなったが、マラソンはいつもこういうものだと思って、気持ちを切らさないようにする。

37km付近で少し復活し、前を行く小田君もかわし、落ちてくる選手もだいぶ拾ってきた。

 

厚底シューズが少し前に運んでくるような気もする。

いける、いけるぞ。マラソンとはこうやってペースを落としても、また復活しながら粘って順位を上げていくんだ。

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走りながら手応えを掴みつつあったが…そう甘くないのもマラソン。

ラスト3km付近で、遂にここ数回のマラソンで苦しめられてきたような”特大ハンマー“が落ちてきた。

 

制御不能なガス欠状態。こうなってしまうともうどうしようもなく、後ろの集団に追いつかれるのも時間の問題。

 

40km通過、この5kmは17:25。遂に32kmまで一緒に走っていた行場さん達の集団に追いつかれる(だいぶ絞られていて4人程度にはなっていたが)

 

なんとかついてみたが、200mくらいは持っただろうか。やはりそこから一気に離されてしまう。

ここまでよく頑張ったという後ろ向きな気持ちも出てきてしまった。

 

41kmで最後のスペシャルドリンクをとって、この糖質で脳を刺激し、なんとか少しでも”戻ってくる“のを期待する。

 

最後の平和台に上るちょっとした坂がきつい!ここで少し遅れてきた久本さんにも抜かれ、せっかく上げた順位がズルズル落ちていく。

 

トラックに入り、僅かに闘志が戻ってくるのを感じたが、ペースは上がらなかった。残り400mの時点のタイムを見てしまったからかもしれない。2時間17分50秒ほどで、ギリギリ自己ベスト更新は難しいというのが理解できた。

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結果は2時間19分18秒、47位。

 

思ったより落ちてしまい、17分台は狙えると思ったがだいぶ届かず、自己ベスト更新もできなかったので会心の結果とは言えない。走り終えてスッキリしない悔しさはあった。

2年前までは喉から手が出るほど欲しかった2時間20分切りだが、今や全く状況が変わっている。

 

ただ、この2年は気持ちが焦り失速を繰り返していたぼくは、今回やっと終盤まで勝負できて安堵の気持ちがあった。

昨年の福岡よりはタイムや順位もだいぶ上がっており、びわ湖で2時間16〜17分台を出したメンバーとも互角に戦えるのは証明できたはずだ。

 

暑さ、風、路面、集団…今回も福岡の全体のタイムが伸びなかった原因がどこにあるのかはハッキリはわからないが、そもそも完璧な条件が揃うレースというのは滅多に無い。

 

あとは、より自分の脚を磨きながら、その時を待ち、何度も挑み続けるしかないだろう。

 

最後の福岡国際は、ぼくにとってはマラソンランナーとして自信を取り戻すレースになった。

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レース結果

2時間19分18秒(47位)

(5km)15:48/16:09/16:27/16:17/16:26/16:26/16:23/17:25/8:01

👟▷METASPEED EDGE

 

第75回福岡国際マラソン選手権大会結果

 

○2nd ベスト、2度目のサブ20。

☆最後の福岡でコース自己記録を4分更新

☆40km通過ベスト

さようならフクオカ…

 

次回は最後の福岡国際マラソンレース前後の模様や観光編。