今回はレースが無い時期にこそ取り組みたい練習を紹介していきます。
マラソン・ロードランナーは年中休み無くレースに追われている選手も多いですが、練習に集中する期間もとても大切です。
レースをトレーニングの一環として活用することもできますが、どうしてもレースが増えると入れにくい練習もあります。
ダメージ、疲労が残りやすいトレーニング
・ウエイトトレーニング(その他補強)
高強度のウエイトトレーニングは筋肉に大きな負荷がかかるので、場合によって数日間脚の疲労が残ることもあります。
試合や強度の高いインターバルトレーニングを疲労が残った状態で行うと、内容が悪くなって十分な負荷を与えられなかったり、動きが崩れて故障の原因になってしまうこともあります。
マラソンランナーのピーキングでも大事なレースの2週間ほど前から強度の高い筋トレは中止にする事が多いようです(ちなみにぼくは前の週の火曜で終了)。
そしてマラソン後もハードな筋トレはしばらく休むので、だいぶ間が空いてしまうことになります。
他にもランニングエコノミーを高める効果があるプライオメトリクストレーニング(主にジャンプ系)、筋持久力を高めるサーキットトレーニング(複数の補強運動を組み合わせたもの)も試合前は疲れが残りやすいので、あまり積極的に取り入れにくいです。
レースが無い時期の筋トレは継続して行いやすく、思い切って頻度を増やしてみるのもいいのではないでしょうか。強度の高い筋トレは中2〜3日ほどで筋肉が元の力を発揮する状態に戻るので週2回ほど入れると最も効果的という研究があります。
・坂道トレーニング
上り坂は筋力や心肺機能強化の効果は高いですが、レースのスピードやリズムからは離れた動きになってしまうので、レースが近い時期は平地でタイムを意識した練習をすることが多いと思います(アップダウンが多いコースでレースが行われる場合はまた別)
一方、下り坂ではレースより速いスピードを出したり、脚を鍛えるのには有効な反面、着地の衝撃が強くなり、かなり筋肉が損傷してしまいます。
ウエイトトレーニングと同じく、強い筋肉痛になったり疲れが残ると、その後の練習にも影響してしまうので、レースが続くような時期は入れづらいです。
レースの無いオフシーズンは坂道のアップダウン練習を入れるには最適な時期です。
↓ヒルトレーニングのバリエーションはこちらを参考に。
・走り込み(走行距離を増やす)
レースが続く時は、①調整、②試合会場までの移動、③レースや移動の疲れをしっかり回復させる
といった理由で、練習量を落とす必要性がでてきます。
これはとても重要で、ぼくもマラソントレーニング中はなるべく量を落とさないようにしていましたが、レースは普段の練習以上の力を出していることも多く、疲れた状態で無理して量を追って故障してしまっては本末転倒です。
しばらくレース予定が無ければ、継続して距離を踏むのがよりやりやすくなりますし、疲れが残るのを恐れて普段はできなかった超長距離走を試すのもいいと思います。
距離を踏むことで自分の身体がどんな反応を起こすか、新たな自分を発見する良い機会になるかもしれません。
目標とするマラソンレースが近くなってきたら、量よりペースを重視した30km前後のロング走を行いましょう。
☆〜ブレーキで鍛える〜
下り坂や、ジャンプ、強度の高い筋トレといった筋肉のダメージが大きくなる練習は、主に筋肉が伸張されながら力を発揮する“伸張性収縮(エキセントリック収縮)”が中心となるもので、筋肉をブレーキとして使う時に発揮されます。
”ブレーキをかけない走り“といったように、ブレーキには悪いイメージもあるかもしれませんが、速く強く、そして健康のためにもエキセントリック収縮をうまく使うのは非常に有効です。
エキセントリック収縮が強くなる運動では、速筋繊維が優先的に使われ、それによって筋力が向上すれば筋肉が血糖をとりこむ能力が向上することがわかっています(肥満防止、糖尿病の予防)
しかし何度も述べたように疲労が残りやすいので、やり過ぎるとかえって筋力が低下したり、故障の原因になってしまうことがあります。
下りやジャンプトレーニングも頻度を決めてやり過ぎないこと、芝生や柔らかい路面で行うとより安全で、伸びやかな動きを意識しやすいです。
練習後はたんぱく質を多めに摂取してリカバリーにも気をつけましょう。ちなみに個人的には筋トレを強めにやった日はぐっすり眠れることが多いので気持ちいいです。
(筋トレ、下り坂の効果の勉強にオススメの本)
▷究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり | 石井 直方
普段なかなか時間が割けないトレーニング
・スプリントトレーニング(完全休息を伴う、リラックスして行う全力走)
本当は神経系の刺激、フォーム改善に役立つスプリントトレーニングは年間を通して入れたい所ですが、忙しいマラソンランナーは普段はレース特有の練習と走行距離を稼ぐので精一杯かもしれません。
実際スプリント練習は呼吸を追い込むインターバルとは違い、しっかり間に休息時間をとって完全に回復した状態で行わないと効果が薄いので、それなりに時間をかけることが大切です。
ぼくも昨年の夏はオフの期間に集中してスプリント(例100mX8+200m)や坂道を使ったヒルスプリントを沢山行いました。
速いスピードを出すと筋肉を痛めないか心配な人はしっかりウォーミングアップして行いましょう。ダッシュで故障を恐れていては永遠に筋肉の不安を抱えたままです。少しずつ量を増やしていく事や、できるだけ暖かい時期に行うとより安全です。
スプリント練習は短い時間で集中力を高めるメンタルトレーニングにもなります。力を抑えて長時間動き続けるのは苦にならない人も、時には短期集中する瞬発的なエクササイズを入れてみるとプラスの効果があるはずです。
シンプルに50〜100mを6〜10本ほど、リラックスを忘れないように全力で走り、2〜3分程度の休憩を挟んで行うだけでとても良いトレーニングになります。
初めの1〜3本はストライドを伸ばす、後半は回転数を上げる、腕振りや姿勢を意識して走るといったようにテーマを決めて走り方を変えてみるのも有効です。
慣れてきたらたまに200〜300mも混ぜ、タイムを測って自分のスプリント能力の向上を確認してみましょう。以前より楽に速いスピードを出せるようになると楽しくなってきます。
☆スプリントはレースが無い時期に関わらず年間を通して有効なトレーニングです。マラソン練習中も適度に混ぜるとインターバルやロング走の動きも良くなってくるはずです。
・クロストレーニング(ランニングに近い持久系スポーツ)
海外ではジュニアの選手に色々なスポーツを行わせるのを推奨しており、特にランニングに近いタイプの持久力を必要とするスポーツを同時に行っていた選手は将来的な伸びが大きいという研究もあるようです。
近年、海外では現役トライアスロンのプロ選手が本職ランナー顔負け、世界レベルの記録を出していることも話題になっています。
水泳や自転車トレーニングを混ぜると、ランニングによる着地衝撃を減らすことができるので故障予防に有効で、練習の継続性を高めるのに効果的です。
しかしこれらのトレーニングに取り組むと結構な時間がかかります。実際トライアスロンの選手の練習時間はとても長いそうです。
大会が無い時期に、同じような内容のランニングに少し飽きを感じてきた、何か違うことを取り入れたいという場合は水泳や自転車の練習を混ぜてみてはどうでしょうか。
どうしても他のスポーツが馴染まない人は、山登りや階段走も負荷を変えながらの有酸素運動ができます(しかし降りる時には筋肉には大きな負担がかかるので注意です)
成長期の選手は、サッカーやバスケといった心肺機能と同時に敏捷性も鍛えられるスポーツもやるとより良いと思います。
ぼくも中学時代は顧問の先生が、よく冬季トレーニングの時期に球技練習を入れてくれて楽しかったのを覚えています。
・1500〜5000mの強化トレーニング(マラソンランナーの場合)
ロードがメインのランナーは、どうしても短い距離のレースは出場しても刺激入れ程度、それらを集中して強化するトレーニングの期間がほとんど無いというパターンが見受けられました。
マラソンランナーも記録を狙うランナーはインターバルトレーニングを週1回程度行なっている人も多いかと思いますが、この期間にステップアップした練習を試してみてはどうでしょうか。
具体的には組み合わせインターバルはとても効果的です。
▷スピードを高める3種のショート+ロング組み合わせインターバル -
▷スピードの切り替えを磨く、5種類の組み合わせインターバル【Break-down】 -
これらの練習に集中すると、スピードは向上する一方で、一時的には長い距離を一定のペースで走る能力は低下してしまうかもしれません。
マラソンの結果にすぐ直結するものではなく、より将来の到達点を高めるためのトレーニング、しっかり時間をとって取り組んでみましょう。
↓レースが無い時期のトレーニングはこちらの記事も併せて参考にしてみてください。