2020年は多くの大会が予定外の中止に追い込まれ、多くのランナーが先の予定が不確実な中で、練習を継続していく事になりました。
確実に力をつけていきながら、心身をフレッシュな状態に保ち続けるのはなかなか難しいものです。
例えば速いペースで400mや1000mを数本行うようなハードなインターバルトレーニングも、継続して行う事でレベルアップに繋がりますが、タイムに縛られやすく、つい毎回”トレーニングベスト“を更新しようとして、追い込み過ぎてしまいがち。
それをオフの期間も無く長期間続けていると、オーバーワークで故障したり、心身共に燃え尽きてしまう事もあります。
オーストラリアでは、伝統的に一年を通して同じパターンの練習メニューを継続して行うのが好まれており、しばらく試合が無い場合のパターンとしても非常に参考になります。
(Australia Marathon Starより。名ランナースティーブ・モネゲッティ選手のメニュー)
時間で行うファルトレク走、ヒルトレーニング、量を抑えたトラックインターバル、そして基礎作りとしてのロング走が好まれており、タイムに縛られ過ぎず、自然を活用した練習法がストレスを溜めず継続する秘訣のように思います。
5000mの元米国記録保持者で現在コーチのデーサン・リッツェンハインは、現役時代の経験から年間を通して有効なメニューとして、1〜3分で時間を変えて行うラダーファルトレク、200mの平地と坂道インターバルの組み合わせ、1kmインターバル+1分坂道ダッシュを勧めています。
Ritz on Running: 3 Staple Workouts You Can Do Anytime – PodiumRunner
ここからはぼく自身の経験も踏まえたオススメの年間を通して継続できるスピードトレーニングを紹介していきます。
平地と上り坂の組み合わせインターバル
①200m×5〜10・2セット(1セット目は平地・2セット目はUp-hill=上り坂、つなぎは疾走区間と同じ距離をジョグ)
②800mUp-hillX3〜4+1km×2〜3(1kmのつなぎは90秒〜2分、坂道は5〜10kmRP=レースペース程度の努力感で)
③3〜5kmテンポ走+1分up-hill×6(テンポ走はハーフマラソンペース前後、ややきついと感じるくらい。坂は3〜5kmRPの努力感で)
上り坂を使ったインターバルでは、努力感に従って走るだけで、心肺、脚力を鍛え、よく腕を振り、全身を効率良く使って走る技術も自然に会得する事ができます。
タイムに縛られなくても、一生懸命坂を走れば精神的な達成感も得られるはずです。
また、上り坂では平地でのインターバルより着地衝撃が軽減され、故障のリスクも抑える事ができます(ただし、下りをつなぎのジョグで走る場合、大腿四頭筋でブレーキをかけるので前モモが筋肉痛にはなります)
一方、平地のインターバルのメリットは、脚のスピード感覚や一定のペースで走るリズム感を養いやすい事です。
坂と平地インターバルを混ぜる事で、お互いの利点を得つつ、欠点を軽減させる事ができます。
例に挙げたメニューでは上りインターバルを先にやるのと、平地を先にやるパターン両方ありますが、上りを先にやった方が平地でもお尻の筋肉や肩甲骨周りを良く使え、地面を必要以上に強く蹴らず少ない力で楽に走れるように感じます。
上りが後の場合は後半疲労した状態でスパートする感覚をより磨く事ができます。
近くの練習場所に、平地と丁度良い坂道が両方あるコースが無い場合もあるかもしれません。
ぼくはシンプルに800m上り坂×6という練習もよく行います。上り坂に集中して、違う日に平地でのスピード練習を行う方法でも問題はありません。
↓ヒルトレーニングについてもう少し詳しく解説した記事はこちら
▷世界のランナーから学ぶ7種類のヒルトレーニング[坂道] - まるランニングマガジン
時間で行うファルトレク
①30秒速く・30秒遅く×20〜30
②1分速く・1分遅く×10〜20
③2分速く・1分遅く×10〜15
④3分速く・2分遅く×6〜10
ストップウォッチでアラームが鳴るようにして時間で行うファルトレクは、タイムのプレッシャーから解き放たれて走るスピード練習としては最適なメニューです。
ぼくは学生時代から大事なトラックや駅伝レースが終わって自主練習が中心になった期間にはよく1人で本で読んだファルトレク走を、近くの狭い芝生のグラウンドで行っていました。
スピード重視の短いファルトレク、より長い時間を走る持久力をつけるためのファルトレクと、バランス良く行いましょう。
ファルトレクには他にも様々なバリエーションがあり、3分と1分を交互に行うのもペースを切り替えるのには良いメニューですが、ぼくは細かい設定をできる時計が無いので、組み合わせ練習としては速い1km×2本を最初に行う場合もあります。
できれば自然に近い芝や土道のクロスカントリーコースがベストですが、手軽に近くのロードや、安全で集中しやすい周回グラウンドで走るのもいいでしょう。
↓ファルトレクについてもう少し詳しく解説した記事はこちら
▷6種類のファルトレクトレーニングを紹介〜どこでもできる自由なスピード練習〜 -
一定期間練習を継続できたら、タイムトライアルも活用する
①ほぼ全力のスピード能力をチェックする場合は1000m
②全力に近いスピードを持続する能力のテストとして2000m
③乳酸閾値テストとしての30分アウトバック走
時間や努力感で行う練習ばかりだと、今度は張り合いが無くなり、飽きが生じてくる事もあります。
月に一度程度、タイムトライアルを入れるのも効果的です。
タイムトライアル自体が新しい刺激になり、良いトレーニングになります。
もし1人でやって、レースと同じように、うまく走れなくてもそこまで気にする必要はありません。
過度にタイムのプレッシャーを与えない方法として、あまりレースで走らない距離を走ってみるのもいいでしょう。
全力に近いスピードをチェックするなら1000〜2000m。少し緊張するとは思いますが、手軽にできてオススメです。
また、厳密にはタイムトライアルとは違いますが、良い持久力テストとして定期的にLT(乳酸閾値)で行うテンポ走も行っておくと良いです。
良いコースがあればアウト&バック30分走はぜひ試してみてください。
▷近くのロードでできる、リディアード式”アウト&バック“30分走 -
もちろん仲間と行う3000mや5000m、10000mといった正規種目の力試しも楽しいです。
勝負や一度の結果には一喜一憂せず、来たる本当のレースに向けて心身共に程よくポシティブで健康な状態を維持していきましょう。
↓もう一つ、基礎作りに大切な、レースが無い時期のロング走はこちらにまとめています。