まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

”高速“マラソンを目指すための3種類の変化走〜走りながら回復する〜

マラソンのスピードアップのために欠かせない練習法、変化走について解説していきます。

 

 

変化走の効果 

前回紹介したファルトレクトレーニングと狙いは似ていますが、正確にタイムや距離を決める事によってよりレースに近い負荷をかけやすいです。

しかしメニュー通りこなさなければいけないという、精神的なプレッシャーは増してしまうかもしれません。

特に落とす部分のペースを維持するのは気を抜くとすぐジョグのペースに落ちがちで、通常のインターバルより難易度が高いメニューと言えます。

中長距離の世界のトップランナーを数多く指導しているレナート・カノーバコーチは特にマラソン選手にとって変化走の重要性を説いていおり、速いペースで走った後つなぎをそこそこのペースで回復させる練習法は、乳酸を出し、またそれを再利用する乳酸サイクルのシステムを強化させると言われています。


自分で行った実感としては、マラソンで細かいペースの上げ下げ、また集団から離れてしまった時に自分のリズムに戻して回復させる“レーススキルの向上”に凄く効果を感じています。

一定のペースで走る速いテンポ走、駅伝レースの単独走のリズムでは力を抜く場面が少なく、その走り方ばかり定着すると、ハーフやマラソンレースでは後半のペース変化に対応できなかったり、ペースが落ちた時に脆くズルズル失速してしまう事がしばしばあります。

 変化走で”走りながら回復する“という長い距離のレースで大切なスキルを会得しましょう。

 

 

・変化走を行うコースについて

変化走の難点が、完全な休息が無く、常にリズムを保ってないといけないので良い周回コースが無いと行いにくい事です。

ぼくは近くの走りやすい河川敷でGPS時計を使って行なっていますが、やはり距離の精度は正確なコースよりは劣ります。

都会だと1km表示やもっと細かい距離がマーキングされた便利な公園もよくあります。

またトラックも行いやすいですが、総距離が長くなりがちなので、飽きやすいのと左回りで偏った負荷がかかってしまうかもしれません。

 

 

1km-1km変化走

マラソンポーランド記録保持者のヘンリク・ゾスト選手(2:07:39びわ湖)の1km変化走X7(3:00&3:30)


Henryk Szost za Zakrętem Śmierci

 

1km速く走り、次の1kmをそこそこのペースで繰り返すという練習で、世界中のマラソンランナーに取り入れられている練習法です。

この動画ではあまり無理をせず、マラソンの良いフォームで走り切ることを重視している印象を受けます。

ぼくが行う時もつなぎもスムーズに走れるようなるべく力まないように、少なくともハーフマラソンより速いペース、調子が良い時は3:05・3:40切り繰り返しで行います。

繋ぎの部分が気を抜くとすぐペースが落ちてしまうので集中力を保つのが難しいですが、ハマってくるとリズム良くドンドン距離を消化していく感じが気持ち良くなってきます。

 

スピードとスタミナの両方が鍛えられ、タイム設定によってはマラソン用にもトラック用にも使い勝手の良い練習メニューと言えそうです。

昔実業団チームで練習させてもらった時はトラック選手用のメニューで1km変化走5セットを2分50秒-3分45秒の繰り返しで行うというメニューもやった事があります(全くついていけませんでしたが…)。

 

一般的なアドバイスとしては、マラソンに向けた練習ではきつい部分と緩める部分の差を少なく、トラック練習の場合は総距離を少なめにし緩める部分をやや遅く、きつい部分より激しく行って負荷をかけるのが適していると思います。

 

・練習メニュー

1km-1kmX5〜8(10km〜ハーフマラソンペース・次の1kmは+20〜30秒の繰り返し)

800m、1マイル(1.6km)、2km繰り返しにし、総距離やペースを微調整するのも有効。

総距離が長く繋ぎをしっかり維持する難易度の高いメニュー。マラソン3時間台のランナーは4〜5本で十分。

マラソン用メニューとしてロング走の後半に数セット取り入れるのも有効。

 

 

テンポインターバル

 

マラソンやハーフマラソンレースペースを意識した3kmを超えるインターバルを、1kmを"フロート"(心地良い速さ)で繋ぎます。

 

LT(乳酸閾値)を高めるテンポ走のバリエーションの一つでもあり、ほどほどのペースで繋ぐ事でよりマラソンをシュミレートした走り方になり、走行距離も稼げます。

またそのまま持続走で10km以上走る時より、強度も高めやすいです。

 

ぼくはフロートの部分は先に紹介した”1km変化走“よりは僅かに遅いペースで行なっており、調子が良い時はハーフマラソンペース(3:10/km程度)、それほどでもない時もマラソンペースは超えない事を意識して走ります。

 

・練習メニュー

(全てハーフ〜マラソンペース・rest1kmを+30〜40秒で)

3kmX3~4

4-5kmX3

6-7kmX2

鍛えられたエリートランナーでトータル12〜15km。3時間台のランナーは少しペースが速くなってもいいので、きつい部分がトータル30〜40分程度に抑えるの意識したいです。

 

 

1.5km(つなぎ500m)インターバル

 


Bieg Zmienny 5x1500 m

 

1.5km・リカバリージョグ500mは"フロート"で繋ぎ、トータル10km程度走ります。

 

これもヘンリク・ゾスト選手等ポーランドの選手が行っていたのを参考に、ぼくも取り入れてみた所、とても感触が良かったのでお気に入りの練習になりました。マラソンが近い時期の練習でよく行なっています。

 

フロートによるリカバリーは、短めで1km変化走よりはやや遅いペースで行い、通常のインターバルに近いやり方なので、変化走の中では難易度は低く感じます。

1kmリカバリーの変化走練習がうまくできない人はこれも試してみてください。

 

・練習メニュー

1.5kmX4~6(r500m)

10km~ハーフマラソンペースで1.5km、リカバリー500mはプラス40〜50秒(1kmあたり)。総距離8〜12km程度。フルマラソン3時間台のランナーなら3〜4本程度を目安に。

トラックで1200m疾走・400mリカバリー繰り返しといったやり方でも代用可。

 

 

www.takemarun.com