まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

変化走Part2〜短時間で高負荷をかける3種類のショートインターバル〜

今回はかなり短くて速いインターバル形式の変化走について紹介していきます。

 

ポイントとしては、より細かく急なペース変化に対応する走り方を学びつつ、短時間でレースに近い負荷がかけられるため、非常に時間効率の良い練習と言えます。

一方で、慣れてないとすぐきつくなって序盤で練習を失敗してしまう事もあるため、集中して行う事が必要です。

 

どちらかというと、トラック選手(特に3000〜5000m)に適したメニューが多いですが、長い距離を走り込むほど短い距離で集中して力を出す事を忘れがちなので、マラソン選手にとっても有効です。

ぼくもこの短いつなぎで速く走るショートインターバルは苦手なメニューの一つです。短時間で集中力を高めるトレーニングとしても活用してみてください。

 

 

豪州式400mX8(“DeeK Quarters”)

 

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ゴールドコーストラソンに出場した時、キャステラさんと記念撮影。

 

元オーストラリア記録保持者のロバート・デ・キャステラが毎週木曜日に行なっていた練習で、今も豪州の選手の定番となっているトラック練習です。ポイントはリカバリーの200mも勢いを残したままの速いペースでつなぐ事でキャステラ選手は400mを62〜68秒、つなぎ200m45秒ほどで走ります。

 

メニューだけ見るとトップ選手としてはかなり少なめのボリュームに感じるのですが、実際当時(1980年代)のマラソン選手も400m12本〜多い選手は20本ほどの量をこなしていました。Vo2max(最大酸素摂取量)を高めるにはこれくらいの量の刺激が必要とされていたからです。

キャステラ選手は“継続性”を最も重んじ、決して自分の限界を超えるような追い込みのインターバルはしませんでした。

しかし、このつなぎを速くするインターバルは時間としてはすぐ終わるものの、実際やってみるとあっという間に乳酸が溜まるような感覚になり、相当にきついです。

 

この練習を終えると合計で4.8kmになるのですが、この合計タイムが5000mのタイムを占う指標にもなるようです。ぜひレース前の調整練習でも試してみてください。

 

またキャステラ選手はバリエーションとして200m(つなぎ100m)X16というやり方でもたまに行なっていたそうです。トータル走行距離は同じになります。

 

・練習メニュー

400mX8(5000mレースペースより速く、rest200mフロート=完全に落とさず、その勢いを残したまま流すように速いペースでつなぐ)

200mX16(rest100m)

 

 

シャープナー、200m“イン・アウト”

 

”リディアードのランニングバイブル“で出てくるシャープナーというトレーニングがあります。

50m、もしくは100mをダッシュ→ジョグというのを何回も繰り返しトータル3〜5km走るメニューです。

これはトラックトレーニング期最終段階に行う練習で、速い部分の距離が短いため、過度な負荷をかけずに、心身共にフレッシュな状態な仕上げるためのメニューです。

 

ケニアの選手も”ディアゴナルス“(サッカーの練習でも行われる)という芝生で短いダッシュを何本も繰り返すメニューを行なっているようです。

 

またトラックの名門・オレゴン大学では、200m30秒・つなぎ200m40秒という繰り返しを一体何本続けてできるかという伝統的な練習メニューがありました。

偉大なランナーであるスティーブ・プレフォンテイン選手は20セット、2大会連続五輪メダリストのゲーレン・ラップ選手はなんとこれを24セットまで続けたそうです。

これはシャープナーと比べるとかなり負荷は高くなりますが、もう少し設定を緩くすると1周400mのトラックではとても行いやすい練習です。

 

これらの練習は世界大会で見られるようなレース中盤の爆発的な切り替えの予行練習に最適で、もちろんそのレベルでない選手にとってもペースを細かく変えられる能力はレース展開の幅を広げるためとても重要です。

 

・練習メニュー

100mダッシュ・100mジョグX12~25

200m(rest200m速いつなぎ)X10~20

 

トラックに行かず、家の近くの直線で行う時は、例えば100mのシャープナーなら50m・150m・200mの所に目印を置いて、①50mまで軽く流す、②150m地点までダッシュ、③200m地点で折り返す、といった感じのやり方でも行えます。

 リディアードのランニング・バイブル

 

 

短い休憩の300mインターバル

 
300mを速く走り、100mのかなり短いレストでつなぐ練習で、これも1周400mのトラックで行いやすい練習と言えます。

このメニューは日本でもよく行われており、やった事がある人も多いかもしれません。

短いつなぎで呼吸を整えリズム良く走るのがポイントと言えますが、ここをそれほどペースを落とさず走ると休憩時間は20秒程度になってしまい、地獄のようにきつい練習になります。

 

個人的にはここまでやるとレースのようになってしまい、適切な負荷をかける前に身体が限界に達し、精神的にも消耗が激しくなってしまうと思います。

つなぎはなるべくゆっくり、あるいはセット方式にして分けるといったやり方にすると、ただきついだけではなくやりがいのある練習の一つになります。

 

・練習メニュー

300m×10〜15(5000mレースペースかより速く、rest100m30-40”、もしくはウォークでつなぐ)

300mX5・3セット(セット間は3分休憩、もしくは400mジョグ)

300mX8・2セット

 

 

☆アレンジ〜テンポ走を追加〜

どのメニューもトータルのボリュームが少なくなりがちなので、もう少し量を稼ぎたい時は、休憩をとって15〜20分程度のテンポ走(ハーフマラソン〜マラソンペース)を入れるのもオススメです。

 

有酸素的な刺激が増すだけでなく、短く強い刺激を入れた後にテンポ走を入れるのは”乳酸サイクル“を強化し、レース序盤のオーバーペース対策にも効果的です。

 

ここで書いているレースペースはあくまで目安です。当然走力によっても変わってきますし、自分の体感に従って無理せず負荷をかけましょう。

 

www.takemarun.com