今回はファルトレクトレーニングについて解説、具体的な6タイプのメニューを紹介していきます。
ファルトレクとはスウェーデン語で「スピードプレイ」を意味する言葉で、もう何十年も前からヨーロッパのランナーが行なってきた歴史のあるトレーニング方法です。
日本でも少しづつ認知されてきた練習法ですが、まだ積極的に取り入れるランナーは少ないのではないかと思います。
ぼくがファルトレクについて語る時、本格的に走り始めた頃に父に買ってもらった「ランニングタフ」を読んだ時の、ワクワクする気持ちが蘇ってきます。
学生時代は冬の自主練習の期間になったら、ストップウォッチのアラームを活用したファルトレクを行なっていました。社会人ランナーになった今でも大好きな練習メニューの一つです。
ファルトレクの効果
ファルトレク自体が自由にスピード練習を楽しむのが趣旨なので、明確に練習効果を決めなくても良いのですが、ぼくが考えるには、タイムや距離のプレッシャーから解放される(休養期明けや、レースが続く期間のポイント練習に有効)、ペースアップに対応したりペースを落とした時に呼吸を整えるといったレースで必要なスキルを向上させる効果があると思っています。
静かな森の公園や、広大な芝生のクロカンコースで行なうのが理想ですが、なかなかそういう環境は少なくなってきました。
「自由でどこでも行える」というのも利点の一つなので、家の近くや旅行や出張中でも気軽に行えるポイント練習としてファルトレクを取り入れてみましょう。
一方でチームで行う場合は、常にトレーニングではなく競争になってしまう恐れがあるので、グループ分け、力配分、ペースの目安をしっかり指示しておく必要があるので注意です。
ケニア式ファルトレク
・マラソンランナー向け ※fast=速く、mid=ほどほどのペースで
1分fast-1分mid X10〜20 or 2分fast-1分mid X8〜15
・スピード重視
30秒fast-30秒mid ×20〜30 or 45秒fast-1分mid ×15〜20
ストップウォッチを使った1分繰り返しファルトレクは、ケニアの選手だけでなく、世界中のランナーが取り入れているシンプルでとても実施しやすいメニューです。
ケニアで練習を行った選手によると、ポイントは“つなぎ”の部分もほどほどのペースで走る事で、トップランナーの場合は速い部分が1km3分を切るペース、つなぎの部分が3分30秒/km、といった感じになります。
ぼくもケニアの選手の走りをテレビで見たり、一緒に走った時に感じるのが、レース中に自由自在にペース変化させる強さです。起伏に富んだ山道でファルトレク走を繰り返している事がその強さの秘密なのは間違いないでしょう。
☆バリエーション
このファルトレクをロング走の最後に本数を減らして行なう事もあります。
マラソンの疲れた状態でペースアップする事をシミュレーションしたり、筋肉に異なる刺激を与える事を目的としています。
ただロング走の後行なう場合は、既に足が疲労している状態なので十分なスピードを出すのは難しい事に注意してください。
Fartlek Iten (Kenya) : 30 x 1' - 1'
モナ・ファルトレク(オーストラリア式)
90秒×2・60秒×4・30秒×4・15秒×4(つなぎのジョギングはハードな部分と同じ時間行い、トータル20分)
オーストラリアの偉大なランナー、スティーブ・モネゲッティが毎週火曜日に行なっていた事から名付けられたファルトレクです。
豪州では今も多くのランナーがこの練習を取り入れています。
時計によってはこのメニューをしっかり記憶させ、時間になったら音が鳴って知らせてくれるようですが、ぼくの時計ではこのような複雑なタイム設定はできません。30秒で音が鳴る設定にして、ラストの15秒の部分は省くか、時間に拘らないスプリント走4本にすれば同じようなメニューはできます(多少走りながら混乱するかもしれませんが)。
この練習も調子が良い時は、繋ぎの部分をほどほどのペースでリズム良く走る事で、高い心拍数を保ち、より質の高いスピードトレーニングになります。
ですが、5000m等短い距離のレースを目指す場合は、むしろ繋ぎの部分はペースを落とし、スピードの部分をかなり速いペースで行う方が効果的で、より多くの乳酸を発生させる事で速いスピードに身体を慣らしていきます。
オーストラリアの友達にもこのメニューについて聞いてみましたが、ラストの15秒はほぼ全力で走るのが重要だそうです。
▷憧れの本の世界へ。バララットの”スティーブ・モネゲッティトラック”を走ってきたよ -
☆バリエーション
ぼくはもう少しスピード刺激を追加したい場合は、先に1kmX2本(3000mレースペース程度、つなぎ3分jog)を行なってから、モナファルトレクや1分走×10本のような短いファルトレク走をする事があります。
このやり方だとまずはきちんと距離がわかる所でスピードのチェックをしつつ、後半はファルトレクのタイムに縛られないリラックス効果と、両方得る事ができます。
ロングインターバルをシミュレーションしたファルトレク
3分X8(rest90秒jog) or 5分X6(rest2分30秒jog)
普段行なうロングインターバルの内容に近づけたファルトレクです。
例えば3分走は800〜1000mインターバル、5分は1200m~1600mインターバル、といった感じです。
速さを求めたトラックのインターバルを行う前の準備段階、レースシーズン中に調子が落ちてしまった時、クロカンコースを使った練習等、やはりあまりタイムに拘らずにスピード練習を行いたい時に有効です。
2019 Last workout…3‘X8(r90“)Cross今年もありがとうございました🙇♂️ #春野クロカン #まるRC
ラダー式ファルトレク
1-2-3-4-5-4-3-2-1分(rest1分jog)
ヨーロッパの選手がよく行なっている複数の時間を組み合わせたファルトレク。
ストップウォッチの管理が複雑なためぼくはあまり行なっていませんが、短い時間の箇所は速く、長い時間の箇所はペースを落とさないよう維持、といったようにペースを変化させるファルトレクの効果をより高める事ができます。
ピュア・ファルトレク
60分ジョグの中で、目印を目指して気ままにスプリント走を入れる
・電柱から次の電柱まで
・坂の多いコースで上り坂をダッシュ
・芝生のコースで緩やかな下りをリラックスして速く走る
本来のファルトレク走。コーチによっては「ストップウォッチに縛られたファルトレク走など邪道」と言うかもしれません。
とにかく大事なのは“自由”な事で、気分の赴くままにスプリント走を入れます。
心身共にリカバリーしたい時は気持ち良いコースでジョグの途中に軽いダッシュを入れるだけ。少し追い込みたい時は、短いつなぎでダッシュを何本もしたり、上り坂をハードに300mほど走れば無酸素系の能力に刺激を与えることができます。
ゲーム形式ファルトレク
これは中学時代に遊びでやっていたファルトレクです。
①まずジョギング、またはペース走から始め
②コーチ、または前を引っ張るリーダーが笛を鳴らしたらペースアップ
③再度笛を鳴らしたら元のペースに戻す(ペースアップの時間は30秒〜最大2分程度までが望ましい)
という方法で、楽しみながら実際のレースを想定したスピード練習を行えます。
しかし多くの人数で行なう場合、狭い周回コースでないと脱落したランナーは笛が聞こえなくなってしまいます。
親子でトレーニングしている方や友達と少人数でトレーニングしているオススメのメニューです。中学生なら30分も走れば十分。
ファルトレクと同じく、レースに向けての準備期間に有効な坂道トレーニング