まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

「10キロの日本記録が出るレースに!」川内杯栗橋関所マラソン大会ディレクター・川内鴻輝インタビュー

今回はスペシャルインタビュー企画、川内杯栗橋関所マラソン大会ディレクター・川内鴻輝(かわうちこうき)さんにお話を伺いました。


鴻輝さんはお馴染みマラソンファミリー川内家の三男で、現役マラソンランナーでありながら、久喜市議会議員、陸上・ランニングイベントの大会ディレクターとしても幅広い分野で活躍をしています。

 

新型コロナウイルスの影響によるマラソン大会中止が続く中、見事栗橋関所マラソンを開催できた理由、今後の大会の展望等々、大いに語っていただきます。

 

 

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好記録続出、スペシャルゲストの招待

 

まる:栗橋関所マラソンおつかれさまでした!まず最初に、大会プロデューサーの役割について簡単に教えてください。


川内鴻輝大会ディレクター(以下鴻輝):主に大会に関係する団体との連絡調整です。具体的には、行政、運営スタッフ、地元の区長会、計測会社、公共交通機関、大会コースを貸して下さる国交省、スポンサー、ゲストなどです。それぞれの団体と何度も打ち合わせを重ねました。



まる
:大会プロデューサーとして振り返ってどのような手応えを感じましたか?

 
鴻輝:男子の部では上位2名が29分台でゴールした他、東京五輪2020日本代表の田中希実選手が初めての10キロながら32分07秒で走り、女子60歳以上の部では弓削田選手が37分24秒(公認であればマスターズ世界新記録)で走破するなど好記録が誕生しました。

一般のランナーの方でも自己ベスト更新者が続出したので、改めて“高速コース”であることが証明できたと思います。
このような結果が出た要因はランナーの努力が一番ですが、昨年同様ほぼ無風のコンディションもプラスに働きました。

コロナ禍ということもあり、運営の方では特別な方法での開催となりましたが、それぞれのチームが知恵を出し合い、参加者の皆様に安全に気持ちよくレースを走って頂ける方法を一生懸命考えてくれたお陰で、参加者から大変高評価を頂いております。

今回このような厳しい状況の中で開催できたことはチームの結束力強化に繋がり、今後の開催に向けても大きな自信となりました。 


まる:田中希実選手の直前の出場発表はビッグサプライズでした。開催を発表した当初からラブコールを送っていましたが、どのような経緯で参加が決まったのでしょうか?

 
鴻輝:当初から高速コースであることを証明するために実力のある選手に走って欲しいと思っていました。

箱根駅伝やニューイヤー駅伝の直前という時期なので、男子の選手に出場していただくことは難しいと考えていましたが、もしかしたら田中希実選手なら参加して頂けるのではないかと勝手に妄想していました。

そんなことを考えていた矢先、2020年8月に御嶽合宿に行ったところ、偶然にも田中親子と同じ宿で、しかも隣の部屋でした。

この時が初対面でしたが、これには運命的なものを強烈に感じ、大会に出場していただくことをお願いしました。
田中選手からは“12月の日本選手権にて優勝したら参加できるかもしれない”という返答をいただきました。

ご存知の通り、12月の日本選手権5000mでは見事に優勝を果たし、東京五輪2020の日本代表を勝ち取ってくれました。そして優勝した当日に出場できる旨の連絡をいただき、今回のゲスト参加が決まりました。

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東京五輪代表で1500・3000mの現日本記録保持者である田中希実選手は母・田中千洋選手(北海道マラソン2回優勝)と親子で招待選手として出場(田中希実選手はオープンの部で男子と同時スタート)。

 

 まる:栗橋関所マラソンは今回で2回目とまだ始まったばかりの大会で、久喜市では他にも3月に「久喜マラソン」も開催されています。年末の時期に栗橋関所マラソンの企画が立ち上がったキッカケはなんだったのでしょうか?

 
鴻輝:現在の久喜市は10年前に一市三町が合併して久喜市となりました。久喜市最大のスポーツイベントである久喜マラソンでは旧久喜と鷲宮がコースとなっていますが、菖蒲と栗橋はコースになっていないため、スポーツを身近に感じていただき、久喜市全体をスポーツで活性化させるためにはそれぞれの地区でもマラソン大会を開催したいという構想がありました。


そこで栗橋地区にて着眼したのが国土交通省管轄の管理用道路でした。平日は堤防工事の関係車両が通行しているのみで、一般の方は立ち入り禁止エリアとなっています。

この道路は道幅も広く、路面は綺麗に整備されており、しかも完全フラットコースなので、まさにマラソンコースにピッタリだと感じました。

栗橋でマラソン大会を開催するならこのコースが最も最適な場所だと考え、栗橋関所マラソンが誕生しました。 

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完全に平坦で、広い道幅、綺麗な路面と走るための好条件が三拍子揃った高速コース。

 

コロナ禍での開催、川内家、地域との結びつき

 

まる:昨年から新型コロナウイルスの影響で、様々な感染症対策を講じる事が必要不可欠となりました。特に開催のため工夫した部分、苦労した点について教えてください。


鴻輝
:今年の大会は金銭面の工面が一番苦労しました。
行政からの補助金も一切なく、サーモカメラの設置やコロナ対策グッズの購入など通常では発生しない経費が多かったからです。


また人と人との接触を極力減らすために受付を廃止してゼッケンを事前郵送したり、密を少しでも減らすために仮設トイレの数も昨年より2倍に増やしたことも財政的な負担になりました。

スポンサー企業様からのご支援がなければ、間違いなく大赤字の大会でした。 

”三密回避”に重点が置かれた主な内容は次の通り。

(1)開会式、閉会式、受付業務は廃止
(2)参加者には出場2週間前から体温測定を義務化
(3)大会当日は入口でサーモグラフティで測定
(4)37.5度以上は出場停止
(5)男女とも450人の一斉スタート中止。
一団を30人前後とし、15人のペースメーカーが各グループの選手を先導する方式でタイムを競う。

「第2回川内杯栗橋関所マラソン大会」は主催・川内杯栗橋関所マラソン大会実行委員会、後援・久喜市、テレビ埼玉、特別協賛・(株)フジハウジング、協賛・(株)大利根造園、イトウ製菓など18団体、協力・久喜商工会など3団体が構成メンバー。

【久喜市】くらしる久喜|暮らしと住まいの知恵袋

 

まる:感染症対策等の影響で、本来やる予定だったのにできなかった事はありますか?


鴻輝:陸連公認大会として開催することです。

高速コースであることをアピールするなら、(記録が公式に認められる)陸連公認大会として開催することは必要だと思います。

しかしコロナ禍において、陸連のガイドラインに記載してある「開催の前提条件」として求められるハードルが高く、企画の時点で今後の社会情勢がどうなるのか読めない状況でした。

 

また、スタート時の選手の誘導方法をはじめ、細かいウエーブスタートの導入など特別な形式で開催する予定でしたので、状況に応じて開催方法が流動的になることも予想されたので、今回は断念する形となりました。


まる:ぼくもこんなに走りやすいコースだから、ぜひ公認大会になればいいなと思っていたのですが、そのような事情があったんですね。

今回も”川内杯“の名の通り、招待選手として出場した川内優輝選手をはじめ、川内家全体で盛り上げる大会になっていたと感じましたが、川内家の皆さんも当初から開催を後押ししてくれたのでしょうか?

 
鴻輝:はじめからマラソン大会を開催することは賛成してくれました。

特に今年は兄から「河川敷の大会すら開催できないようでは都市型マラソンの復活はあり得ないから是非やろう」と力強く背中を押してくれました。


三兄弟全員が結婚して活動がバラバラになってしまったので、今回も久し振りに家族全員が揃いました。今後も川内家の恒例行事にしていきたいと思います。

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招待選手として優輝&侑子さんご夫妻、鮮輝選手が出場。大会中の鴻輝さんは彩さんとご夫婦でMCとして大会の盛り上げ役として活躍。

 
まる:周囲でも開催にネガティブな意見、どうせ中止になるのではといった声もあったのではないでしょうか…?


鴻輝:
もちろんネガティブな意見も頂きましたが、それらも含めて大会の知名度を上げる絶好のチャンスだと思いました。

中止になる大会が続出する状況での開催だったので、メディアに取り上げて頂ける機会も多く、第一回大会よりも注目度は高かったように感じます。


コロナ禍での開催は苦労することも多々ありましたが、このような状況だからこそ地域の結び付きは強くなり、栗橋の名前を全国に発信することができたと感じています。

 

まる:困難な状況は、チャンスでもあったわけですね。栗橋の魅力はどういった所にあるのでしょうか。

 
鴻輝:久喜市には圏央道と東北道の二つの高速道路が交わり、鉄道では久喜駅と栗橋駅の両方の駅でJRと東武の二路線が交差しており、県内でも交通の利便性が抜群に高い地域です。


また栗橋は歴史の街として有名で、江戸時代には五街道の一つである日光道中の宿場町として栄え、マラソン大会の由来でもある「関所」が道中で唯一設置されていました。まさに大会のスタートとゴールは日光街道栗橋宿の関所跡付近になっています。


また源義経の恋人でもあった静御前が亡くなった地としても有名で、栗橋駅近くには「静御前の墓所」が建造されています。毎年7月~12月は様々なお祭りが開催されており、多くの観客で賑わいます。

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走ることへの想い、今後の展望 

 

まる:鴻輝さんは現在、議員や大会ディレクターとしても幅広い活動をされていますが、改めてランニング、走ることに懸ける想い聞かせていただけますか。


鴻輝:
走ることは私の活動の全ての軸になっています。現在は色々な活動をしていますが、全てはランニングが原点になっており、私が生きていく上で欠かせないものです。きっと死ぬまでこの軸はブレないと思います。

新型コロナウイルスによる混乱が収まった時、バラバラになった社会を結び付け、経済的にも精神的にも元気な日本を取り戻すためにスポーツの力が必要になることを確信しています。

健康で幸せな生活を送れる人が一人でも増えるよう今後も様々な方面から働きかけ、我武者羅に走り続けたいと思います。

 

まる
:スポーツの力が必要というのは、ランナーにとっても勇気がもらえる言葉ですね。
では栗橋関所マラソンの話に戻りますが、今後の大会の展望を教えてください。

 
鴻輝:まずは陸連公認大会として開催すること、そして10キロの日本記録を更新することが今後の大会としての目標です。

大会の知名度と人気を高めるためには、高速コースとしてアピールすることが一番だと考えています。

なによりも私自身、今年はどんなランナーが出場して、どんなタイムが出るのか、そういうワクワク感を持って大会の準備に臨みたいです。

 

その意味では今回ゲストランナーの田中親子が参加してくださったお陰で、コロナ対策ばかりに気を取られることなく、運営スタッフの皆様にも明るい話題を提供することができたので、田中親子には本当に感謝しています。


距離についてはもっと伸ばして欲しいという意見も頂くのですが、河川敷コースということもあり、ランナーにとって10キロという距離がギリギリ集中できる環境だと感じています。
また久喜マラソンのメイン種目がハーフマラソンであるため、差別化する意味でも当面の間はこの距離に拘り、「記録が狙える大会」として今後も発展させていきたいと思っています。

 

まる:ぼくもあまり走る機会の無い10キロレースでスピード強化したいというのも出場を決めた理由の一つでしたし、これから栗橋関所マラソンで日本記録が目撃できると思うと楽しみですね。

今回は沢山お話を聞かせていただきありがとうございました!
最後に、大会に興味を持ったランナーやマラソンファンの皆さんにメッセージをお願いします。


鴻輝
:スタッフや地域の方々が一丸となり、おもてなしの心を持って、まさにオール久喜でランナーの皆様をお迎えするマラソン大会です。

今後も大会に関わる全ての方がワクワクするような大会にしていきますので、ぜひともご参加をお待ちしております!

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5年前、 徳島で合同練習をした時の写真。今も変わらない走ることへの情熱に胸が熱くなりました。これからも一緒にランニング業界を盛り上げていきましょう!

 

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川内 鴻輝(かわうち こうき、1992年9月8日 - )
川内三兄弟の三男で、長兄・川内優輝と、次兄・川内鮮輝の実弟。実兄二人の影響で2歳から走り始め、花咲徳栄高等学校を経
て、高崎経済大学へ進学。大学卒業後はモンテローザに就職。陸上部に所属していたが、2017年3月限りで廃部。

2018年、新人・無所属で久喜市議会議員一般選挙に出馬。4月22日に投開票され、6,309票を獲得し初当選。

男子マラソン種目の主な実績に、2018年石垣島マラソン優勝、2017年サイパンマラソン準優勝、2016年福知山マラソン優勝、2015年壱岐の島ウルトラマラソン優勝、アンコールエンパイアマラソン優勝、2014年グアムインターナショナルマラソン優勝など。

川内鴻輝 - Wikipedia

 

 

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