今回は10kmレースの有効性について解説していきます。
海外では10kmをメインとする大会は各地に沢山ありますが、日本ではハーフマラソン以上の長い距離が圧倒的に人気で、10kmレースはまだそれほどメジャーではありません。
10kmレースはマラソン・ロードレースを目指す全てのランナーにとって欠かせない基礎となる種目です。
12月に出場した川内杯栗橋関所マラソン大会。
- マラソン選手のスピード強化に〜連戦しやすく、調整としても使いやすい〜
- 質の高い”テンポラン“に
- 中距離選手(800~1500m)のスタミナの土台作りにも
- 初心者、経験が浅いランナーも10kmから取り組もう。※ジュニアランナーは注意
- 10kmに向けた準備、レースの走り方
- ぼくが今まで参加した10kmがメインのレース
マラソン選手のスピード強化に〜連戦しやすく、調整としても使いやすい〜
エリート競技者ランナーは、一般的には10km〜ハーフマラソン程度の距離のレースは頻繁に走りますが、フルマラソンは1年で間隔を空けながら2〜3回しか走らないというパターンが多いです。
これはハーフマラソンを超える距離をハードに走ることによる身体にかかる負担が大きいからで、25km以上のレースでは血中のたんぱく濃度が高まったというデータもあるようです。
トレーニングの第7法則:
トレーニング中はレースをしてはいけない、タイムトライアルや16km以上のレースはしばしばするな
大雑把にいってレースの距離が短くなればそれだけ多くのレースに出場できるし、25km以上になるとレースでの筋肉のダメージが生じるために、25km以上は慎重に走ることが大切である。
一般的な法則としては、32km以上のレースは年に2,3回とすべきである。
ランニング事典第6章より
これは多くのランナーの経験則とも一致しており、英国では“レースの距離1マイル(1.6km)につき1日休め”という格言もあります。
70分〜100分程度かかるレースで頻繁にベストに近いパフォーマンスを出すのは肉体の限界に加え、心理的にも集中力が保たなくなってしまいます。
ハーフマラソンはまだフルマラソンよりは負担はかなり少ないですが、頻繁に走ってもマラソンペース走程度になりがちで、これではスピード強化としては不十分です。
マラソンランナーにとってベースとなるスピード強化は10kmレースが使いやすく、また本番の2〜3週間前の調整レース(状態を確認しながら調子を引き上げていく)としても有効です。
2004アテネ五輪マラソン王者、ステファノ・バルディーニのレーススケジュール例。10km前後が中心で、ハーフマラソンも必ずしも全力を出し切るレースでは無い(PB1:00:50)というのがわかります。
質の高い”テンポラン“に
定番の練習であるテンポラン=LT(乳酸閾値)走は、少しきつい感じる程度のペース(15km〜ハーフマラソンレースペース)で20〜30分走ると巡航速度を高めるのに効果的と言われています。
しかし1人で行うと最初からうまくペースが乗らないこともよくあり、練習で無理に力んでペースを合わせてもしょうがないので、やや抑えめのペースでこなすことが多いです。
これがレースになり、周りの選手の力を借りると、とても楽に速いペースで走ることができます。
レースが無い場合は、丁度良い周回や折り返しコースを見つけて仲間と一緒に行うのもいいと思います。
もちろん最初で飛ばしすぎて失速してしまったり、知らないうちに頑張りすぎるといったデメリットもあるので、テンポランを全てをレースで代替すればいいわけではありません。
マラソン練習の一貫で10kmレースを何本か走りたいという場合は、毎回ベストを狙わず肩の力を抜いて走りましょう。
中距離選手(800~1500m)のスタミナの土台作りにも
10kmレース(質の高いテンポラン)は、800〜1500mを専門とする中距離ランナーにも有酸素能力の土台作りに役立ちます。
オフシーズンの走り込みの成果をチェックしたり、心理的にも練習に飽きがこないようにするためにもロードレースは有効です。
中距離選手は長い距離を走るのが苦手という選手も多く、だからこそ必要なのですが、まだ十分な身体作りができていないという場合は、もう少し短い5km前後のレースから参加してみましょう。
60〜70年代の中距離トップ選手は、オフシーズンには週100マイル(160km)走り込みながら、積極的に地元のロードレースやクロカンレースにも出場していました。
現在は種目の専門化、レベルアップ、メジャーな大会の増加により、選手の年間を通しての心身の負担が増加し、気軽に専門外のレースに挑みにくくなってしまったのかもしれません。
目先の結果に拘らず、トレーニングを兼ねたレースとして楽しみながらチャレンジしてみることが大切です。
初心者、経験が浅いランナーも10kmから取り組もう。※ジュニアランナーは注意
初めてマラソン完走を目指すランナー、経験の浅いランナーにも、10kmレースはとてもオススメ。
1年でマラソン完走を目指したい人は、大会は10kmレースを中心に基礎体力を作っていき、本番の2〜3ヶ月前に1本ハーフマラソンを完走して、マラソンに挑むのが理想的です。
ローカルなハーフマラソン大会にはよく10kmレースも併設されていることが多いので探してみてください。
これはマラソンを目指す成人ランナー向けのアドバイスで、まだ十分に身体ができてなく、かつ短い距離のスピードがある10代半ば頃のジュニアランナーには10kmを全力で走るのは負担が大きいので、レースには3〜5km程度が適しています。
ぼくの場合は20歳くらいまではトラックの5000mがメインの種目でした。今思うと、そこからすぐにマラソンを目指さず、10km(10000m)の強化をしっかりしていればよかったとも思っています。
10kmに向けた準備、レースの走り方
駅伝でも10km前後の距離を走ることが多いです。機会があれがぜひ駅伝も活用してみてください。
マラソンための10kmレースでは大きく練習内容を変える必要はありませんが、インターバルトレーニング(例:レースより少し速いペースで400mX10、1kmX5)は定期的に入れておくと、スタートしてすぐに呼吸がいっぱいいっぱいという状況は防ぐことができます。
大会2〜3日前からは練習量を落として脚をフレッシュな状態にしておきましょう。
レースでは、適切なペースで走っていると、7km程度で山場となるきつさがくるとよく言われており、ここを乗り越えるとゴールまで勢いで駆け抜けることができます。
また良い記録が出るレースでは、前半と後半の5kmがイーブンペースくらいで走るパターンが多いように感じます。
ぼくも10km(10000m)でベストを出した時は最初の入りとラストスパートが速かったりはするものの、5kmで区切って見るとイーブンくらいのレースがほとんどでした。
最初の勢いはうまく借りつつも、7kmまでは力を出し尽くさないように注意し、後半力強くフィニッシュできるくらいのペース配分が理想と言えそうです。
ぼくが今まで参加した10kmがメインのレース
ブリスベンレース後の風景。朝にサクッと走って、ブランチを食べながらゆとりのある時間を過ごす…。そんな手軽な楽しみも10kmレースの魅力です。
ゴールドコースト合宿行く直前に見つけて、急遽出場を決めたレース。
オーストラリアは短い距離のレースが人気で、前日までエントリーできたりと気軽に出れるレースが多いのが特徴です。日本でもこういうレースが増えてほしいですね。
大阪マラソンの関連イベントですが、長居公園周回コースで公認コースになっています。
途中で周回遅れの人混みに追いついてしまうため、競技に集中したいランナーにとっては集中しづらい部分もありましたが、アクセスも便利でこれも気軽に出れるのは良い部分かなと思いました。
まだできたばかりの川内杯。オールフラットで走りやすく、公認コースにして競技面の充実も進めているので今後大いに盛り上がりそうです。日本記録誕生が間近で見られるかも?