まるランニングマガジン

まるランニングマガジン

Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

今までで最も過酷なレース、NAHAマラソン振り返り【先頭独走からの…】

NAHAマラソン振り返り。

 

 

f:id:takemaru-yamasaki:20221206232024j:image

元々、年内はタイのハーフマラソンをメインに考えていたのだが、この遠征予定が消えてしまったため、NAHAマラソンは今の全力を出して優勝を狙いにいくことを決めた。

シューズはメタスピードエッジ+でのフルマラソン2戦目。5時20分に起きて、朝食は小さいレーズンロールパン4個、バナナ、ヨーグルト、コーヒー。

 

f:id:takemaru-yamasaki:20221206120649j:image

予定の時間に会場に向かう電車に乗り遅れそうになり少し走って駅に行くともう滝汗。

数万人規模のレース会場の雰囲気はやはり一味違う。

 

f:id:takemaru-yamasaki:20221206152407j:image

なんとこの大会、大規模レースにも関わらず当日7:00~&7:20受付で誰でもスペシャルドリンクが置けると発覚。直前で知ったが、せっかくなので話のネタに置いてみる事に。
思ったより沢山の人がスペシャルドリンク置いてたので、多分わからないだろうな。

まるRCメンバーの方と記念撮影とエール交換をして本格的なレースの準備にとりかかった。

 


f:id:takemaru-yamasaki:20221206120652j:image

スタート時の気温は23.5℃、湿度88%。ここから上昇するのを考えるとほぼ真夏並みの条件下だ。

曇りで気温より走りやすいのかと思いきや、予想以上の湿度で、しかも日差しも強くなってきた。これはヤバいぞ。

 

どれくらいいつものペースより調整すればいいのかわからないが、ザックリと3:30/km(このままいけば2時間27分40秒ペース)で押していければ良い結果に結びつくのではないかと考えた。


アップは既に移動で少し走ったのと暑さも考えて、7〜8分ほどジョグと流し3本で終了。

整列は30分前に完了するようにと書いてあったので早めに。曇りの高温多湿予報だったので帽子は持ってこなかったが、待っている間もガンガン日差しが照りつけてくる。

沖縄出身の黒島結菜さんのかわいらしい挨拶を聞きながら、号砲の時間が刻一刻と近づいてきた。

 

 

いきなり独走でスタート。過酷な条件

 

レーススタート。

 

ランチューバーくれいじーかろさんが前に飛び出る。かろさんは連戦が続くので、ペース走で抑えて走ると言っていたので、最初だけ出たのだろう。

ゆるゆる追いつき、先頭に立ったぼくは、そのままマイペースで走った。

1km通過は3分30秒程度。この前の盛岡マラソンの入りよりずっと遅い。

 

観光場所で賑やかな国際通りに入る。沿道には沢山人がいて大声援。アレ、誰もついてきてない?

f:id:takemaru-yamasaki:20221206122751j:image

予想外の展開。今回はそれほど速い人が出てないのだろうか?

自分では程よいリズムで走っているつもりだ。もうこのまま行ってしまおう。


www.youtube.com

 

前は先導車と地元テレビ中継のカメラ。やはりこんな街中の大規模マラソンで先頭を走るのは楽しいものだ。

評判は聞いていたが、沖縄の人みんなが楽しむお祭りマラソン。ちびっこの元気な応援もとても多い。

 

5km通過は16分57秒。3:30/kmペースくらいで行っていると思ったがだいぶ速かった。冷静に走っているつもりでも、今思うと浮き足だっていただろうか。(第二位集団はこの時点で1分近く離れていた模様)

 

天気が変わりやすく、途中小雨が降ってきたのはありがたかったが、再び晴れて気温と湿度のダブルパンチが襲いかかる。

5-10km通過は17分15秒。よしよしこれくらいで押していきたい。

 

「先頭を走るジョガーは、高知の山﨑竹丸選手」と、なんとも独特なアナウンスが響き渡る。

 

f:id:takemaru-yamasaki:20221207001707j:image

前半が上りが多いコースだというのはわかっていたが、自分が考えていたよりきついアップダウンの連続だった。やはりこのあたりはどうしても実際走ってみないとわからない。

これに暑さが加わり、10km過ぎでかなりしんどさを感じる。でももしこの条件で普段の練習のロング走をしていたら、最初からきついのは当たり前。そのうちフッと身体が軽くなる場面がやってくるかもしれない。

 

10-15kmは17分46秒。だいぶ落ちたが上りを考えるとこのまま行ければ想定していた3:30/kmペースになるはずだ。

 

20kmに近づいたあたりから、さらに上りが急になっていく。序盤からこんなにきつい坂が続くコースが今まであっただろうか。

 

平和祈念公園入口を通って中間地点を通過し、給水は失敗。

15-20kmの通過は18分09秒、ハーフは73分50秒。良いペースとは言えないが、このタフさを考えるとこんなものだろう。

下りも続くし、このまま少しペースダウンで2時間30分前後で走れれば。

 

しかし、上りで脚を使ったためか、地面で濡れているのもあり、シューズと一緒に足元が沈んでいくような感覚になって思うように前に進まない。駅伝や5000mで良かった上体の動きもいまひとつハマらないまま。

 

そして、逆転は突然やってきた。

 

 

遂に首位陥落

 

f:id:takemaru-yamasaki:20221206122818j:image

(12月5日 琉球新報 スポーツ欄記事より https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1627056.html)


22kmで遂に後ろから上げてきた選手に捕らえられてしまう。足音もわからなかったので驚いた。

後半に勝負をかけるために溜めていたのか。すぐにぼくはNAHAマラソンの走り方がわかってなかったことを理解する。

 

当然テンションは落ちてしまったが、まだ焦るべき時ではないとも思った。

これほど厳しい条件だ。おそらく相手もまた終盤で蓄積されたダメージが爆発してしまう事もあるだろう。

 

ぼくは飛び出したわけではなく、自分のリズムで走った結果、たまたま独走になったのだ。このままの走りでいこう。

 

20-25kmは17分23秒と、今度は急な下りもあってだいぶペースアップ。やはり前がかなり上げているのだ。

 

自分さえしっかりペースを刻めていれば…という所だったが、走りの感覚は悪くなる一方で、もう1人抜かれてしまう。

27km頃にやっと気持ち良い海の景色。NAHAマラソンでは海を見る時間はそれほど長くない。

 

25-30kmは18分03秒。そこまで急落はしてないが、身体のきつさがいつものエネルギー切れ状態に近づいてきた。

ペースが一気に落ちてくる。

 

ここまでスペシャルドリンクは、予想はしていたが自分のがどこに置かれているか全くわからない。

こんなの取れるわけがない、むしろスペシャルに神経をつかう方がマイナスだと、さっさと紙コップのアクエリアスを取ることに集中しようと切り替える。

ただ周りの選手を見ると、私設エイドのドリンクをもらったり、スペシャルドリンクを知り合いに受け渡しでもらっているのも見受けられた。

 

ぼくはオフィシャルの給水所以外でのドリンクはとってはいけないという陸連競技者の助力ルールに抵触しないか気をつけていたのだが、詳細までルールや運営を理解しているわけではないし、この条件で選手が出来る限りの暑さ対策をするのは当然だとは思う。

 

あくまで自分自身のメンタルの問題ではあるが、徐々に勝負への集中力が切れ、自分にとって次に繋がる選択をした方がいいと考え始めた。

 

2位の選手も痙攣して足が止まっており、我慢したらまだ上位も狙えるかもしれない。

だが、経験したことの無い暑さのフルマラソンで、これ以上身体を冷却する策も無く走り続けるのは、今後に大きなダメージを残してしまうのではないか。

 

30-35kmは20分24秒と、ジョグに近いペースまでダウン。

ぼくはここでストップし、歩いてフィニッシュ地点を目指すことを決めた。せっかく沖縄まできたので、やはり完走したという証はほしい。

 

 

諦めと復活と。

 

35km付近のエイドで、アクエリアスと黒糖、塩タブレットをガブガブ補給。

 

妙に小恥ずかしい感じもあり、エイドの方に「いやぁ今日は暑いですねぇ」と笑いかけて立ち去る。少し走り出そうとしたが、やはり一度止まってしまうと思うように動かないよね。

 

順位をいくつ落としたかは忘れてしまったが、思ったより抜かれない。やはり他の上位選手もストップしてしまうような相当過酷な条件なのだろう。歩いている間がとても長く感じた。

 

ぼくは歩くのは多分普通の人より遅い。36kmが見えてきたあたりだっただろうか、“いかん、このまま歩いて時間を全部潰すのはさすがにもったいないか”という気持ちになり、再びゆっくり走ることにした。疲れたらまた休めばいいし。

 

すると、アレレ?思いのほか、身体が前に進んでいく。

 

 

キロ4分くらいのペースを維持。気分良く行けるのなら、このまま最後まで行ってみるか。

抜かれることはなく、前で苦しみ立ち止まってる選手が見えてきた。

 

1人抜き、もう1人抜く直前で沿道から「9位!」という声が聞こえてきた。そんなに抜かれてたっけ。

 

妙にスッキリした身体。漫画「奈緒子」の転倒した後巻き返すような展開を思い出す。

 

競技場に近づくにつれて、街中の賑やかな応援もよりヒートアップ。

前を行く3人目の選手が見えてきて、再びスイッチが入ってしまった。

 

 

35-40kmは24分28秒。無論歩いた分大幅ペースダウン。40km通過は2時間30分を超えている。うおー…こんなに時間かかってたのか。

30km以降はほとんど平坦だったが、38kmから少し上って、40kmから最後の長い下り坂。

 

前の選手とはまだかなり差があるし、身体も固まってきたが、もうイケる所までいってみよう!

 

グッとギアが切り替わり、残り300mのグラウンドに入る直前で前の選手をかわして7位までランクアップしてフィニッシュ。

f:id:takemaru-yamasaki:20221207001932j:image

タイムは2時間38分00秒自己2番目に悪い記録だったが、なんとか新聞に掲載される10位入賞までには食い込むことができた(表彰ステージは5位までだったのでそこは残念だったが)。ほぼ全ての競技者が苦しみに耐えて走り抜いたことがわかる(完走率は67%)。

 

 

ラスト2.195kmは7分31秒で、なんと上位選手の中で最速。終わってみると、ぼくには余力が残っており、諦めるのが早過ぎたのだろうか?

やはり優勝した選手も最後は痙攣を起こして途中で止まることもあったそうだが、ぼくにはアクシデントらしい症状は何もなかった。

 

ここまで復活できたのは不思議ではあるが、割り切って立ち止まり、消耗した身体に給水と糖質を一気に補給したのが効果的だったのか(昔もゴールドコーストマラソン中も立ち止まってグミを食べてから、終わりの方で少し復活できた事はあった)。

 

ベストを尽くさず勝負から降りてしまったのかと考えると、少し後味が悪い所もある。

ただこの後の回復が速かったら、そこそこの結果を残しつつ、身体にもダメージを残さないバランスのとれた判断ができていたと言えるのかもしれない。

 

今までで最も1番過酷なレース

 

f:id:takemaru-yamasaki:20221206232001j:image

NAHAマラソンの感想としては、ぼくが今まで走ったマラソンの中で、最も過酷なレースだった

覚悟はしていたつもりだったが、あくまで全国各地を転戦するレースの一つということで、舐めていた部分もあったのだろう。気温だけでなくコースのきつさも想定より上を行っていた。明らかに準備不足だった

 

もう一度挑戦するならNAHAをメインとした準備をしなければいけないと思っている。

 

もちろん過酷さばかりではなく、街が一体となって盛り上げる本当に楽しいマラソン大会だった。沿道の応援の多さには感動したし、驚きの完走率の低さも、必ずしも完走することが美学ではなく、このお祭りに参加することに意義があるのだと思う。

 

あらゆる面で国内オンリーワンの魅力を持つジョガーの祭典・NAHAマラソン。ぼくにとっても忘れられない貴重な経験になったのは間違いない。

f:id:takemaru-yamasaki:20221206231917j:image

沖縄タイムス紙より。ちなみに最近レース中のメガネのグラつきが気になり始めため、今回はコンタクトデビュー戦でした。

 

レース結果

 

2時間38分00秒(7位)

👟▷METASPEED EDGE+

 

☆沖縄初レース

☆初の夏条件のマラソン(25℃、湿度85%前後)

☆さらに前半20kmは屈指のハードコース

◯NAHAに向けた特別な準備が必要

 

次回は初の沖縄レース、移動&観光編

 


www.youtube.com

 

↓今までで1番きつかったマラソンは冷たい雨の中を走った大田原マラソンでしたが、今回の方が倍きつかったです。

www.takemarun.com