まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

ゴールドコーストマラソン2017レース振り返り【ありがとう、GC】

起床は3時50分。眠いけど、昨年6時スタートのハーフも経験したのでそこまで早いとも思わなくなった。

 

一旦HISのテントへ移動した後、エリートアスリート用のウォーミングアップエリアへ。

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来年の英連邦大会でも使われる水泳会場がエリートアスリート用のエリア

 

急遽現地でエリートアスリート的な待遇を受けられる事がわかり、記者会見やルールミーティングに出席させていただいたりととても良い経験になったが、少しメンタル面のバランスが崩れてしまった部分はあった。

 

ツアープロデューサー兼選手としてどちらも全力で頑張る覚悟を決めて行ったけど、いざウォームアップからエリートランナーに混ざるとなると話は変わってくる。ここに勝負のみに来ている人達と同じ空気感で走らなければいけない。

ツアーモードから気持ちを切り替えるのに少し時間がかかってしまった。

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ぼくにはチームメイトも監督もスタッフもいない。ここからは、またいつもの遠征と同じように1人の戦いだ。

怖い。できれば、ずっとみんなと楽しく笑っていたかった。

 

 大丈夫、調子はいいはずだ。

 

 

 

 

[Start-5km]

スタートもギリギリで並べたり、トイレも近くにあるし、とても快適にレースを迎える事ができた。整列もベストポジション。近くにいた川内選手と健闘を誓い合ってテンションを高め、レーススタート。


ペースメーカーを務めるのは昨年まで青山学院大学エースだったGMOの一色恭志選手。
マラソンのペースメーカーには慣れてなかったためか、始めはちょっとスローの入りだったのでついていく事ができた。


今のうちにちょっと中継に移っちゃえ、という邪な事を考えていたら、目の前になぜかスマホで自撮りしながらダッシュしてるアジア系のランナーがいる。
どうしてこんな人が前にいるんだ?これじゃあ、ぼくが映らないじゃないか。
なんとか自撮りランナーを潜り抜けてより先頭集団に紛れ込む。

 

もちろんぼくはただのお調子者がやりたいわけではない。ペースが丁度良いのなら、グループについていった方がラク。ここで名前負けして後ろに下がり遅いペースにハマってしまうのは勿体ないと考えた。


身体は軽い。このまま普通に先頭集団についていけたらどんなに幸せだろう。川内選手やマスターズ記録保持者のムンガラ選手をはじめとするアフリカ勢に混ざって、ぼくはしばらく至福の時間を味わう事ができた。

 

1km通過は3分10秒あたりだっただろうか。一色選手が後ろに少し申し訳なさそうなポーズをし、クッとペースアップ。集団がバラけ、現実に引き戻された。

 

ここからが、本当の勝負…!!

 

ただ比較的前のポジションに位置していたので、ぼくは4人の第2集団の先頭を引っ張るペースメーカー的な立場になってしまった。


ちょっとしまったな、と思いつつも、ぼくはゴールドコーストの経験も豊富だし、ここは妙な駆け引きをせず引っ張る事に決める。

 

5kmの通過は16分10秒。愛媛の時は15分台で通過したが、今回もかなり速いタイムだ。この貯金をうまく活かし、目標の2時間20分切りを狙いたい。

 

[5-10km/10-15km]

 思ったより冷たい向かい風を感じて、序盤は身体が暖まらず、移動の疲れもあるのか上半身の動き・感覚があまり良くなく無駄な力を使っているように感じていた。

 

それでもペースは落ちずこの区間の5kmは16分24秒で通過。なかなか良いじゃないの。

ただここらへんから少しイヤな予感は感じていた。大失速したおかやまマラソンと同じパターン。

 

一度誰かの後ろにつき、走りに"タメ"を作りたい。と考えていたが、後ろの選手達は明らかに出る気ナッシング。

30kmまでに1人で勝手に出し尽くして失速する未来が容易に予測されてしまった。

 

これはマズいぞ、と思いつつあった12kmを過ぎたあたりの所で、スッと後ろのランナーが出てきた。

 

中東系の顔立ちのランナー、なぜかやたらペッペッペッ言ったり、観客の声援に口笛で応えたりしながら余裕を持って走っている。

 

全く知らない選手だったので、後でウィキペディアで調べてみたけど、彼の名前はモハメド・ジャファー・モラディ。イラン代表で一昨年の北京世界陸上にも出場、ベストは2時間17分台の実力者だった。

 

なぜエリートランナーとしてエントリーしていなかったのか?どうやってイランから来たのか、そもそもどこに住んでいるのか、なぜいちいち口笛を吹きながら走っているのか、謎は深まるばかりだが、とにかくガンガン前を引っ張りはじめた。

 

この5km区間は16分31秒。貯金はドンドン溜まっていたが、少しきつさも。

 

[15-20km/HALF/25-30km]

モラディさんの勢いが凄く、後ろにつくのもラクではない事に気づいた。マラソンって難しい。

 

愛媛の時のような集団で良いリズムの波に乗っているような感じが全く無く、ただただエネルギーを消耗しつつあるように感じていた。15km過ぎるとすぐ折り返し地点、すれ違いで知ってる人を探したり、ちょっと集中力が切れかかってたような気がする。

 

この5km区間はなんと16分15秒。貯金を活かしてタメを作るはずが、キロ3分15秒ペースに引き上げてしまった。どうりできついはずだ。なんてこったい。

 ハーフの通過は1時間8分58秒。ワオ、初の68分台の通過だ。


一昨年は1時間10分台通過で精いっぱいだった事を考えると、序盤はカーブや道が狭く走りにくいという印象もそれほどは感じなくなっていて、今までの経験が活きていたような気がした。

 

ただやはりきつい。ここらへんでモラディさんと少し距離を空ける。

このままじゃ絶対保たないという気持ちと、ここまできたのだから落としたら勿体ないという気持ちがせめぎ合っていた。

 

少し前を走っていたプロランナーの八木勇樹選手に追いつく。こぼれてきた前の選手を拾うのはモチベーションを保つにはありがたい所。

 

ただ八木選手も脚どりは重たくきつそう。ペースが全く上がらず少人数グループの泥試合の様相を呈してきた。

 

ここでついに出てきたのは、愛媛でも激しく競り合った行場さん。ずっと集団に潜んでいた。

今回も色々アクシデントがあり万全で無いと聞いていたが、やはりここからは逆境ランナーの本領発揮。

 

25km通過は16分42秒。まだ3分20秒ペースだ。25kmの通過(1時間22分05秒・3:17km)も過去最速。

 

 ここでぼくはスペシャルドリンクのキャッチに失敗。「クソッ!」と思わず声が出る。

すると行場さんがスッと自分のドリンクをくれた。う、うまい。 

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標準記録を突破しているランナーはスペシャルドリンクを前日受付で預ける事ができる。その場で名前を書き、目立つヒモももらえた。

 

しかし身体が思うように前に進まずイラだっていたぼくと行場さんの余裕の差は明らか。ここからジワジワ離され、前にいたモラディさんもあっという間にとらえる。強い。

 

通過は17分38秒。この地点としては絶対に落ちてはいけない幅のペースダウンをしてしまった。もう気持ちは完全に切れかかっていた。動きもバラッバラ。

 

[30-35km、そして最大のピンチ…]

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後ろのランナーにも少しづつ抜かれて行く。女子の先頭に追い付かれるのも時間の問題かもしれない。それでもひょっとしたらまた”戻る”のではないかという淡い期待を抱きながら動かない身体をなんとか前に進めていた。

 この区間の5kmは20分27秒。もう完全にGAME OVERのペース。

 

ここでなんとかジェルの入ったスペシャルドリンクを一気に飲み干した所で異変が起こった。

 

目まいが起き、全身の力が抜けて、アスファルトに膝をつく。始めての現象だった。

これが低血糖症状かはわからないけど、おそらく疲労しきった所に高濃度の補給を一気にしてしまった事で、身体が受け付けず異変を起こしてしまったのだと思う。

 

まさか…棄権してしまうのか…?


ボロボロ後ろから抜かれて行く。

 

そんな時、すぐにスタッフらしき人が駆けつけてくれて自分が持っていた水を飲ましてくれた。近くにいた子どもがグミもくれた。

グミは一口だけにしておいたけど、飲み物はガブ飲みした。水分はしっかり摂っておいた方がいいだろう。

 

「アイム・オーケー。」とぼくは周りの人に言って歩き始めた。

止める事も一瞬頭をよぎったけど、ここでぼくが運ばれて途中棄権なんかしたらツアーの打ち上げがお通夜になってしまうかもしれない。

 

レースのプレッシャーから解放され、市民ランナーのみんなと同じように、完走を目指したらいいだけじゃないか。

 

少し歩いた後、ぼくはゆっくりジョギングを再開した。まだ身体は動く。


そして最後の折り返し地点を過ぎると、不思議と力が戻って来た。

 

ぼくは自然にペースアップしていき、再び4分ペースくらいには戻す事ができた。
奇跡の復活?というのは少し大げさかもしれないけど、さっきまで止めそうだったのがウソのように、ちょっと気持ちよくなってきた。

 

残り5kmを切ると昨年ハーフの部でも走った、大好きな美しい風景が見えてくる。

コースで一番好きな所。元気が出てきた。あと、もう少し。

 

なんて思ってたら見覚えのあるランニングフォームが。あ、モラディさんじゃないか。

ぼく以上にハデな自滅をしていた。一体この人は何がしたかったんだ。

 

まぁいいや、お互いお疲れさま。ぼくはモラディさんサッとかわした。

最後は、心配して待って応援してくれる人達に楽しく笑顔でゴールしよう。

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PHOTO by Yuko-san



結果は2時間33分42秒。昨年大失速したおかやまマラソンより少し遅いくらいだったけど、普通にゴールできてよかった。

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レースを終えて

 レース後は、相変わらず右のお尻は痛かったけど脚のダメージはそれほど感じず、エリートアスリートエリアでクールダウンしてからマフィンとコーヒーをもらい、ゴールに帰ってくるメンバーや知り合った仲間を応援しに行った。

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その後も行場さんと一緒に川内さんをポケモンGOのように探しまわったり、ここ数年でお世話になった人達に会いに行ったり、最後に完走したまるRCメンバーみんなで海に入ったり、どれも最高に良い思い出になった。

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 初海外デビューから、4年目のゴールドコースト。今までの出会い、点と点が線になり、念願の高知発ゴールドコーストツアーは本当に楽しく大成功で幕を閉じた。

 

自分の夢で、沢山の人が幸せになってくれる。こんなに嬉しい事が、人生で他にあるのだろうか。

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仲間達とどこまでも一緒に楽しく笑っていたい。

 

でも本当はそれだけではダメなのはわかっている。

 

ぼくがここで夢を叶える事が出来たのは、ひたすら自分だけの道を信じて走り続けてきたからだ。

 

10年前、ぼくの言う事に耳を貸す人なんてほとんどいなかったし、ぼくもどうすれば夢を叶えられるのか何も知らなかった。

 

これからも高知で、新しい事に挑戦していく上で、自分の中の孤独とは常に向き合っていかなければならない。

こんなに弱く未熟なぼくが、川内さんのように力強く堂々と我が道を行くができるのだろうか。



一つだけ自信があるのは、ぼくは決してやめないという事だけ。

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ありがとうゴールドコースト。また来年。 


Gold Coast Airport Marathon 2017結果

 

2時間33分42秒(32位)

Split Point Split Time S/Rank Race Time R/Rank Activity Dist. Pace Speed
5KM 00:16:10 22 00:16:10 22 RUN 5.00 03:14 18.55
10KM 00:16:24 22 00:32:35 22 RUN 5.00 03:16 18.28
15KM 00:16:31 26 00:49:07 22 RUN 5.00 03:18 18.15
20KM 00:16:16 45 01:05:23 34 RUN 5.00 03:15 18.43
25KM 00:16:42 21 01:22:05 21 RUN 5.00 03:20 17.96
30KM 00:17:38 44 01:39:44 22 RUN 5.00 03:31 17.00
35KM 00:20:27 107 02:00:11 23 RUN 5.00 04:05 14.67
40KM 00:25:09 513 02:25:21 39 RUN 5.00 05:01 11.92
Finish 00:08:20 44 02:33:42 37 RUN 2.20 03:47 15.83
Half Way   25 01:08:58 26 RUN 21.10   -14.94
Finish 01:24:43 44 02:33:42 37 RUN 21.10 04:00 14.94

 ・2017 Gold Coast Airport Marathon // Gold Coast Airport Marathon // TAKEMARU YAMASAKI : tiktok results

 

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・ぼくの一部レースビデオ

https://www.marathon-photos.com/scripts/event.py?event=Sports/2017/Gold Coast Airport Marathon&match=24

 

・フルレース動画


2017 Gold Coast Airport Marathon Webcast

 

次回、観光・旅日記編に続きます!