まるランニングマガジン

まるランニングマガジン

Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

ウォーミングアップについて徹底解説していく

今回はレースや強度の高いトレーニングを行う前に不可欠なウォーミングアップについて解説していきます。 


ゆっくりしたランニングや流し(軽いダッシュ)を行って、事前に心拍数を上げておくと、レース走り始めの呼吸が楽になり、安静時は硬まっていた筋肉が滑らかに動きやすくなります。

f:id:takemaru-yamasaki:20191120204020j:plain

 

 

 

適切なウォーミングアップジョグ

 

ウォーミングアップを始めるのは大体レースの1時間前。あまりに間が空きすぎると効果がほとんど消えてしまいます。

 

色々なトレーニング情報を調べたり試していく中で、自分には「20分」程度走るのが丁度良い事がわかりました。

ゆっくりペースから初め、最後の5分は少しだけペースを上げて終わります。

これはレースの時で、トレーニング時は、もう少し距離を稼ぐために5km程度走る事が多いです(大体時間は23〜24分になる)

 

プラス、ダイナミック(動的)ストレッチ、動き作りドリル、最後に100mの流しを4本程度行う事でウォーミングアップは全て完了。
これでスタートして急に筋肉を大きく動かして故障したり、呼吸を乱す事を防げます。

 
ランニング経験が浅い人は、よくアップだけで疲れそうと言いますが、かなり訓練を積んだ競技者だとスタミナがあるゆえに、ある程度走らないとエンジンがかからないように感じてしまうのです。
多くのランナーはスピード練習を行う場合でも10〜15分程度ジョギングすれば十分かとは思います。

また、レースの距離が長い場合や、気温が非常に高い場合はウォーミングアップジョグは短く調整しなければなりません。

ぼくの場合はラソンレース前か、気温が25℃以上(+湿度によって多少異なる)の場合は15分のウォーミングジョグを行います(マラソン+高温多湿の場合は10分ジョグ)。


ぼくはいつものルーティーンの方がが心身共に気持ち良く走れるので少しジョグの時間を減らす程度ですが、マラソンや高温レースでは最低限、場合によっては全く行わなくても構いません。

 

普段のジョグよりはだいぶ速いステディペースのロング走(十分に鍛えられたアスリートの場合マラソンペース+30秒/km前後)では、ぼくは身体の目覚ましも兼ねて1km程度ジョギングする事が好んでいますが、もししなくてもそれほど問題はありません。

 

ラソンペースとロング走のペースが変わらない人は、どちらもウォーミングアップジョグは必ずしも必要ありません。
個人的には多少は動いて身体を起こしておいた方が気分良く臨めると思うので、軽いジャンプや体操を行うのもオススメです。
 

 

ストレッチ、セルフマッサージ

 

ランニング以外ではウォーミングアップとしてよく行われるのはストレッチですが、筋肉をゆっくり伸ばすスタッティック(静的)ストレッチは“運動前に行っても”故障の予防に効果が無い所か、筋肉のスピードやパワーが低下し、ランニングパフォーマンスを低下させるというのはほぼ定説になっています。

ラソンのトップ選手の中にも全く前屈ができないという人も珍しくありません。

 

現在、運動前に広く推奨されているのはダイナミックストレッチと呼ばれる、リズム良く実際のスポーツに近い動きを再現したもので、ぼくも必ずこちらを中心に行っています。


Dathan Ritzenhein - dynamic flexibility

 

またウォーミングアップのジョギングを始める前に、フォームローラーやテニスボールを使って、寝起きやディスクワークで固まった筋肉をほぐすのも非常にオススメで、ストレッチより効果的だったという研究もあるそうです。これにかける時間は5分程度で十分。

グリッドフォームローラー

   

 

自分なりのルーティーンを確立すると本来のパフォーマンスを発揮しやすい

人間はいつものルーティーンを繰り返す事で精神的に安心し集中力が高まるため、自分なりのウォーミングアップを定着させる事はレースでもパフォーマンスが発揮しやすくなるとも言われています。(有名なのが野球のイチロー選手がバッターボックスに立つまでの動作を同じにしている事ですね)

 

距離や気象条件、体調によって多少変化させる事は必要ですが、重要なレース当日に新しいウォーミングアップを試すのはやめておきましょう。

逆に、走る前はあまり効果が無さそうな静的ストレッチも、自分が気に入っていて気分良く走れるなら、適度に取り入れる分には全く問題はありません。

 

事前ウォームアップ〜夕方にレースがある場合〜


夕方にレースが行われる場合(トラックに多い)は、午前中に10〜20分程度軽いジョグを入れておくと良い身体ほぐしになります。

レースまでかなり時間がある時は何もせずにジッとしているだけだと、午後には身体が重たく感じやすく、また精神的にもソワソワしてしまう事もあります。

 

どんなに朝早いレースの場合でも絶対朝練をする選手も少なくないですが、ぼくは朝練の準備でバタバタするのはあまり好きではありません。
大規模マラソンで整列が心配な時は、朝起きてすぐしっかり動いておく時もあります。

 

レース前のもたつき、アクシデント


ここまでウォーミングアップの重要性について説明してきましたが、自分の思うようなアップができないまま、スタートラインについてしまった事は誰しもあるのではないでしょうか?

特にレース前のアクシデントはつきもので、大規模マラソンでは荷物預かりやトイレの整列で問題発生する事は珍しくありません。

 

ぼくは2017年の湘南国際マラソンのハーフの部に参加した時には、会場の混雑に戸惑い、ほとんど動けず整列後の軽い足踏み程度でレーススタートした事があります。

結果は優勝でしたが、最初からリズムに乗れず今ひとつな走り、モモ裏に軽い痛みが出たり、レース後はいつもより疲労も強く感じました。普段とあまりにルーティーンが変わった事による身体の不調かもしれません。

自分としては良い走りとは言えませんでしたが、時にはこのような経験もその後のレースには活きてくるのかなとは思います。

競技者向けレースや、招待選手として出られるレースでは、それほど準備に神経質になる事なく、気持ちを競技のみに集中する事ができます。

 

 

 

長くなったのでもう一つ大切な「クールダウン」についての解説は次回とします。