ミュンヘン五輪1500m銅メダリストで、ニューヨークシティマラソン優勝経験もあるロッド・ディクソンが、特にパンデミック状態の世界で家からそれほど離れず行えるトレーニングメニューとして、”アウト&バックラン“というシンプルな30分走を勧めているので、紹介していきたいと思います。
ディクソン氏は伝説的なコーチであるアーサー・リディアードの影響を強く受けており、「リディアードのランニングバイブル」でも無酸素的な負荷がかからずずっと走り続けられる”最高安定状態“をテストする方法としてアウト&バックランを勧めてます。
(※最高安定状態のランニングは現在では乳酸性作業閾値=LTのテンポ走と言われ、30分前後のテンポ走は今も多くのランナーが取り入れている定番メニューです)
方法は、まず往復できそうなコースを設定し、自分が30分走れそうだと思うペースで走り出し、15分たった所で折り返し、なるべくそのペースを維持して(ただしあまり無理をしてはいけない)、スタート地点に戻る、これだけです。
気持ち良く走るためにもある程度ウォーミングアップをして動きやすい状態にしておくのオススメします。
できるだけ30分に近いタイムでゴールするのが理想で、帰りに20分かかるなら前半が速すぎたという事だし、特に頑張ってもないのに帰りの方が速く走っていたら、体力の割に前半を抑えすぎたという事になります。
風の影響を受けてしまう事もありますが、できるだけフラットで行きと帰りで難易度に差が出にくいコースにしたいです。
この練習を3週間に一度の間隔で行う事で体力テストになり、順調に進歩していれば30分で走れる距離が伸びていくはずです。
特にレースが無い時期は、自分自身に挑戦するゲーム性もあって面白いのではないでしょうか(これは全力で走るタイムトライアルではない事は注意しなければいけません)
この練習では自分の身体の声をよく聞きながら、ペースを抑えて呼吸を整えたり、走りのセルフコントロールを磨くスキル練習にもなります。ディクソン氏は時計にもあまり固執しない(例えばGPSのkmペースを細かくチェックしない)事をアドバイスしています。
広い河川敷だとこの練習がやりやすそうですが、既に体力をつけた競技者ランナーは15分テンポ走を続けれる片道コースを見つけるのは難しいかもしれません。その場合は走りやすい周回コースを利用し、通過タイムをメモするという方法でもいいと思います。
・ステップアップ
一方で、ディクソン氏は「同じ事しかしないランナーは、同じままでいる傾向にある」と練習をステップアップさせる事の重要性も説いています。
バリエーションとしては
①ネガティブスプリットセッション…15分で折り返し、後半はペースアップして30分より少し短い時間でゴールする
②ビルドアップ形式…徐々にペースアップして、ラスト約800mは全力に近いペースで走る
といった感じです。これらの練習では乳酸閾値も超えるため、高強度の刺激を身体に与え、”乳酸システム“の強化に繋がります。
一定のペースで走るだけでは、成長は止まってしまうので、時にはこのような刺激を入れていく事も大切です。
さらにトラックが使えない期間が長く続く場合の手軽にできるスピード練習として、”40mをダッシュして折り返しを繰り返す“というショートアウト&バック、“1〜3分走って折り返しを繰り返す”ハードアウトバックといったより乳酸を多く活用するスピード練習も提案しています。
これだけバリエーションがあれば、近所でも変化をつけた練習で楽しみながら上達していけそうですね。