まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

人生最大のリベンジマッチ、10回記念高知龍馬マラソン振り返り。

いよいよ龍馬マラソン当日。

 

5:30前頃に、割とパチっと目が覚めた。

今年も、特に緊張やプレッシャーはさほど無く、地元を走れる楽しみの気持ちの方が大きい。

調子も万全、あとはスタートラインに立って走るだけだ。

 

今回の最大のテーマは、宿敵・行場さんを倒して10年ぶりの地元優勝を掴み取ることである。

 

ランナーズ編集長も務める行場さんは自己ベスト2時間16分台で、ウルトラマラソン100km世界2位の実績も持つ非常に後半が強いランナー。

直接対決ではいつも良い勝負はしているが、2017年の愛媛マラソンから始まりぼくの6戦全敗。

 

リベンジの場としては今回以上のシチュエーションは無いだろう。

 

 

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ウォームアップ前に恒例のまるRC集合撮影。みんなからパワーももらい、さらに気分が高まってくる。

 

今回は招待なので整列は昨年より余裕がある…と思いきや、どちらにせよ手荷物預けを45分前までに終えないといけないので、アップを軽く済ませてユニフォーム姿でその辺をウロチョロ。

 

招待待機場所は特に無く、そういえば男子の招待選手はぼくしかいないんだった(昨年の上位選手ほぼ欠場&青学が大半だったため)。

 

入るタイミングもよくわからず、みんなは並んでいてなんか凄い気まずいんですけど…。

結局青学に混ざってスタート直前にひっそりイン。

 

序盤は予想外のハイペース

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そんなこんなでレーススタート!

青学の選手は最初ゆっくりなので、入りで集団の前に出るのにもたついてしまう。

 

気がつくと、青学の選手で1人だけ飛び出している。

 

結構なスピードで、一瞬着くべきか躊躇してると、棚橋くんが前に行こうとジェスチャー。

 

そうだ、ここは行くしかないよな。ありがとう!

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後は大体予想していたメンバーで、7名ほどの集団を形成。

しかしこの青学の選手が一体どのような目的で走るのか。集団に予想外の緊張がはしる。

 

すると、行場さんが前に出て「今日どれくらいで行くんですか?」

と普通に話しかけてしまう。

 

「今日は監督に最後まで行けって言われたので」。

周りも一気に雰囲気が和み、笑みが溢れる。

これがいつもの行場さんの作戦だ(?)

 

どうやら前を引っ張る青学の白石選手は元々別府大分マラソンを走る予定が、風邪の影響でこちらにスライドしたとの事で、それなりのタイムで完走させるプランだったのだろう。

ハーフの自己ベストはなんと62分台との事で、ぼくより約4分近く速い。

 

策士で知られる原監督が、実は密かに優勝を狙っていたと考えても不思議ではない。

 

大声援の中、快調に飛ばしていく白石選手。

今年はコロナ禍の制限も全て無くなり、また青学箱根優勝の勢いもあってか、沿道は賑やかな観客でいっぱい。大変嬉しいことだ。

 

5km通過を16分10秒。思わぬハイペースでレースは始まった。

 

この後も白石選手は小刻みな下りを長身を活かした広いストライドで飛ばしていく。

 

勢いはさらに増していき、5-10kmは16分03秒。1kmあたり3:10-15で、このままいけば2時間15-16分台となる。明らかに速すぎるペースだ。

 

今までも序盤にこれくらいのペースでマラソンを走った事はあるが、龍馬マラソンのコースはアップダウンがあり、さらに心配なのは早くも日差しが出て暑さを感じ始めてきた事。今日は最高気温19℃予報と季節外れの暖かさ。

 

白石選手も「速すぎですかね?」とたまに話しかけてきたりして少し不安を感じて来たのだろうか。

 

最初のわかりやすい上りである"蛸の森トンネル"で「上り凄いですね」と言ってきたので「これからが本番ですよ」と言っておいた。

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10-15kmを16:03で通過。このままいけばハーフ通過は67分台、ほぼ川内優輝選手の大会記録と変わらないペースになってくる。

 

最後まで持つかという不安な気持ちと、高速ペースの高揚感が半々。

 

すると行場さんと目が合って、「速いですねー」とまた会話が始まる。

白石選手「速過ぎますかねー。3:20/kmくらいでいきましょうか」

行場さん「高知県記録(2時間16分台)狙えますよ」

まる「うーん…(暑いしなぁ。でもこのままハイペースの方がぼくには有利だろうか)」

行場&まる「(白石選手に)お任せします」

 

白石選手はストンとペースを落として3:20/kmくらいの走りやすいリズムになってくる。

 

覚悟を決めようとした所でもあったが、テレビ放送が始まる10時くらいまでは一旦休戦状態になってひと安心。

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ここまでのハイペースで集団は4人に絞られた。やはり棚橋くんは今年はしっかりついてきている。

きついきつい浦戸大橋をよっこらせと上り切ってクリア。15-20kmは16分38秒と落ち、ハーフ通過は68分30秒と昨年より1分近く速いハイペースながら許容範囲のタイムに落ち着いた。

 

ここで白石選手が一旦下がりたそうにすると、行場さんが「お願いします」と結局ペーサーの役割を続行する事に。

 

ちょっと悪い気もしたが、順当に力がある人が引っ張った方が集団にはいいですよね。

 

すっかりいつもの行場さんワールドで学生をコントロール。行場さんにはいつもペースを乱されてしまうが、今回ほど頼もしいと思った事はなかった。

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そして25km手前で棚橋くんが脱落。優勝争いは3人に絞られた。20-25kmは16分40秒と安定した3:20/kmペースのまま。

 

白石選手は足元を気にしたりするしぐさが増え、後ろから見てなんとなく汗のかき方も良くない。初マラソンで少しずつ異変を感じ始めたのではないだろうか。

徐々にぼくも前に出て、ペースを落とさないようにリズムを作り始める。

 

すると白石選手は靴ひもを結びに道路の脇に離脱。

ぼくは確信したわけではないが、これでもう彼は戻ってこれないのではないかと思った。

 

待望の一騎打ち

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25-30kmは16分55秒と、白石選手の離脱もありややスローダウン。しかし今ペースは大した問題ではない。

遂に行場さんとの一騎打ちが始まる。

 

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待っていたぜ、この瞬間(とき)を。

 

スローからのスパート勝負という想定していた展開とは違ったものの、結果的には思い描いていた30km以降の1vs1の競り合い。

舞台は整った。

 

32kmの折り返し地点で後ろを確認。ペース走をしているはずの青学集団が思ったより近くて何やら嫌な予感が

 

しかしどちらにせよ、勝利に近づくためにはペースを維持する事だ。今は行場さんとの戦いに集中しよう。

 

さすがに少しずつ足が重くなってくる。

ここまでハイペースでいき、浦戸大橋も走り、さらに仁淀川河口大橋の細かいアップダウンでジワジワ体力が削られてきた。

 

このままなるだけペースを維持し、40km付近で勝負する準備をしたい。

 

30-35kmもまずまずの16分47秒で通過。

間違いなく、ぼくは昨年を上回る最高のレースができている。このまま行くしかない。

 

だが、ここからは1km進むたびに全身の疲労感が"終わり"に近づいてきたのを感じていた。

 

懸命にペースを落とさないよう粘る。

頑張っていたら行場さんだって痙攣を起こしたり、何か身体に異変が起きるかもしれない。

しかし行場さんの走りは全く崩れる気配はない。

 

クソ、なぜなんだ!

思うようにレースがいかない苛立ちを感じていたら、ふと気づいた。

 

マラソンで35km以降、キツくなってペース維持が困難になるなんて、よく考えたら当たり前の事じゃないか。

 

隣の選手がおかしいだけで、決してぼくの調子が悪いわけではない。

 

だんだん力が抜けてきて、38km手前、花海道に別れを告げて春野競技場に向かう下りの直線でぼくは後方に下り、行場さんとの差は段々と開いていった。

 

勝負アリ、である。

 

ラスト2km、まさかのドラマ

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だが、レースはこれで終わらなかった。

なんと、後ろから青学の塩出選手(箱根駅伝8区区間賞)が集団走から抜け出し40km手前、次元の違う華麗な走りでぼくをかわしていった。

これは完全に行場さんを捕える勢いだ。

 

ぼくはさらに青学集団が後ろから追ってくると思うと、最後まで気が抜けない。

しかし、消耗と立て続けに順位を落とした事から上体は固まり、とても思うように身体が動かなってくる。

35-40kmは17分20秒と、かなり苦しいペースダウン。

 

ラスト1kmを切り、春野の長い急坂ではもうグチャグチャ。

マラソンでスタミナ切れを起こすと頭以外の感覚が無くなってきたりするが、この坂では頭にまで酸素が行き渡らなくなって爆発しそうになった。

改めて、最後でこのコース設定は鬼の所業である。

 

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結果は2時間20分52秒

40km通過の時点ではギリギリ昨年の記録は超えれるかと思ったが、最終的には8秒オーバー。

悔しいけど、それだけラスト5kmの消耗は激しかったという事だろう。

 

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優勝はやはり青学の塩出選手。ぼくは3人の青学集団からは何とか逃げ切る事ができた。

 

まさかまさかの大逆転で、優勝目前だった行場さんは余計気の毒には感じたが、テレビで観ている人にとっては最後まで飽きさせないスリリングな展開だったのではないだろうか。

(行場さんはSNSで話題になってて喜んでました)


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行場さんとの対決は今回もぼくの敗北に終わった。

調子万全かつ地元のアドバンテージもあるという絶好の機会で、レース内容としても今出せるベストは尽くせたと思うので、素直に完敗を認めるしかない。

やはり行場さんは強かったし、改めて自分のマラソン選手としての課題もハッキリわかったように思う。

 

テレビや新聞でも報道されたように昨年優勝の小田くんと行場さんとぼくは全国各地のマラソン大会でよく会うランナー仲間。お互い次も一緒のレースを走ろうと声をかけあったりしている。

 

地元でそんな県外の友達に負けて2年連続で優勝を逃すとは、なんとも間抜けな感じもするが、ぼくは10年前に優勝した時以上の充実感に満ちていた。

 

本当に全力をぶつけられるやりがいのある舞台になった高知龍馬マラソン。簡単には勝てないからこそ面白い。

 

もっと練習して強くなって、来年はもっと良いレースをしたい。

 

それが今のぼくにとっては、龍馬マラソンを走る最大のモチベーションになっている。

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レース結果

2時間20分52秒(3位)

👟▷METASPEED EDGE+

 

(5km)16:10/16:03/16:03/16:38/16:40/16:55/16:49/17:20/8:14  HALF68:31-72:21

気温12℃→18℃

 

・10年振り2度目の優勝ならず…

・コースベストにあと8秒届かず

・vs行場さんの連敗記録更新(7敗)

☆11回目のサブ2:21:00

☆龍馬マラソン1〜4位までコンプリート。

 


www.youtube.com

 

↓昨年のレース振り返り

www.takemarun.com

 

 

おまけ、楽しい龍馬マラソンの夜。

 

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終わった後のフォトサービスで11位のハマジュン氏と撮影。2:30:00という順位も記録も絶妙に惜しい結果ながら、序盤から先頭集団で健闘していました。


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高知農業のテントで牛乳やミルクスープを提供していました。暑かったので冷たい牛乳は身体に染み渡りますね。


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なんと今回は初の試みでレース後カツオのタタキが提供!走った後のタタキってこんなに美味しいのか〜と感動しました。

まぁ、高知県人なのでいつも食べているのですが。

 

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夜はまるRCの龍馬マラソン打ち上げで締め。

せっかくなので行場さんにも来ていただき、走り終えた仲間とワイワイガヤガヤ、本当に最高の1日でした。

 

龍馬マラソンに参加された関係者の皆さん、本当におつかれさまでした。沢山の応援もありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。