今回はメタスピードLD LEレビュー。
初のピンレス長距離用スーパースパイクとして登場し、世界クラスの記録も生まれたメタスピードLD。これに通常のピンもつくメタスピードLD LEが発売されました。
ややこしい感じもしますが、実際どのように変わったのでしょうか。
ピンだけではなく、プレートも違う
メタスピードLD LE(以下LE)はピン以外にも大きな変更点があり、なんとスーパーシューズでお馴染みのカーボンプレートではなく樹脂プレートが使われています。(このためか値段が2500円安い)
履いて試しにジョグや流しをしてみると、思った以上にクッションが効いて柔らかい印象。
クッションたっぷり。そしてピンがあるので、地面を蹴って、ストライドがグングン伸びていくような感覚になります。
これがピン+プレートの違いか、比較するとメタスピードLD(以下LD)は硬めの接地感で、置いていくようにスッスッと足が前に出てきます。
まさにメタスピードスカイとエッジのような違いで、実際LEの方はスカイに走り心地が似ていると感じました。
LDのレビューでは“エッジと互換性”があるという感想を書いていましたが、それは厚さが近いだけではなく、踵〜中足部付近からついてスムーズに走りやすいのも共通している部分なのかと思いました。
重量はピンで重くなるかと思いきや、LD同サイズとほぼ同じでした。
レースで使ってみた
ぼくはピンレスのメタスピードLDが自己記録を連発しており、凄く気に入っていたのですが、このLD LEも購入したのは
①スピード強化のためには1500mにはピン有りが良いのでは、②クロカンでも使えそう、③ちょっと安くなったので違うスーパースパイクも比較してみたい
といった理由がありました。
練習で何度か使って、1500mレースに出場(県選手権)。予選で4分07秒、決勝で4分05秒と、過去の自分と比較してかなり好成績は残せたものの、クラシックな薄底スパイク(LDジャパン)で出した自己ベストにはあと1秒届かず。
ではそれほど恩恵が無いのかというと、レース後はほぼ全力のスピードを出してもダメージや疲労感が残らないのは驚きました。
厳密に全くダメージが無いという事はないと思いますが、次の日の5000mも脚の強張りは全く感じず普通に走れました。
普段はあまりスパイクを履かないので履いて歩くと違和感はあるのですが、走り出すと厚底シューズを少し薄くして軽快にしたような感触でとても走りやすい。
非常に脚に優しいスパイクだと言えそうです。
樹脂プレートの影響として、前に進む推進力より、柔らかなクッションの方が強調された感じはあるものの、カーボンプレートと比較してパフォーマンスが劣るかはわかりませんでした。
ただ一方で、“思ったより1500m向きではないのかな?”とも思いました。やはりレースシューズの厚底化が進んだと言えど、短い距離でのクッションはどうしても”トレードオフ“となる側面があると思います。
スーパースパイクとしてのパフォーマンス上の利点はすぐ結論を出すのは難しいですが、より薄いスパイクの方が地面をとらえやすく、中距離的なスピードを出すには適しているのではないでしょうか。
実際、アシックスの公式でも5000〜10000m用としており、別に中距離向けとは書いていません。
LD LEの有効な使い方。
おそらくですが、ピンレスは特殊なスパイクであり、路面状況によっては効果を発揮しない事があるため、ピン有りのLEの方は補助的な目的で作られたのではないかと思っています。
まずピンレスのLDは濡れた路面での使用は推奨しておらず、3000mSCでの使用を控えるように説明書に書いています。(3000mSCで使ってる選手もいましたし、個人的にも濡れた路面でも十分使えるとは思いましたが)
またいくつかのトラックではグリップに問題が発生したようで、ダイヤモンドリーグの一戦で契約選手が他社製のスパイクを使うというシーンも見られました。
つまり距離というよりは、メタスピードスカイ・エッジと同じように好みであったり、両方持ってるなら気分や路面状況で選ぶのが良いのかなと思いました。
LEはやや位置づけが分かりにくいシューズとなってしまいましたが、トップ選手だと欧州カップ10000mで銀メダルをとったイスラエルのゲタホン選手がLEを使用していました。
ラストスパートはしっかりピンでキックしたい、でも長い距離は余分にクッションが欲しい…。アフリカ勢や中距離が強いスピードタイプのランナーはそういう好みの選手が多いように感じます。
自分としては、記録を狙うレースでは1番自分に合ったピンレスのLDがいいですが、LEには安全にスパイクで使う筋肉を鍛え、ストライドを伸ばすトレーニングとしては非常に適しているのではないかと感じました。
芝生を薄いシューズを履いて大きな動きで思いっきり走るようなイメージで走れます。
海外のトップ選手も厚めのスパイクを練習用で使ったりするシーンも見られるので、メインスパイクがピン有の20mmスパイク(または今後そうなる予定)という場合にも準備段階でLEを活用するのはオススメです。
ちなみにどちらも2023年11月からのルール変更で使えなくなってしまう方向なのですが※、練習でうまく取り入れていけたらと思っています。
(※厚さ制限が25mm→20mmに。全ての競技会で使用不可になるのか詳細はまだ未定)
まとめ
評価…B +
◯…クッション、安定感、反発、重量
-…フィット感、価格
・ピンがついても長距離向けなのに変わりはない。
・ロードシューズ的な走り心地でとても脚に優しい
・ピンレスにも十分なグリップがあり、両方必要かというと微妙
・ダイナミックな走りを会得、トレーニングにも
・少し安いのも評価
・長距離レース活用で評価が変わる可能性もあり
△ルール問題もあり、類似シューズが販売されていく方向
アッパーが硬めで、サイズはワンサイズアップを推奨します。フィット感についてはLDの記事で追記しています。↓