まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

ロング走〜あらゆるランナーにとっての基礎作り〜

今回はあらゆるランナーにとって欠かせない基礎練習・ロング走の具体的なメニュー内容や効果について説明していきます。

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呼び名については他にも距離走、ロングラン、ロングジョグ、LSD…と色々ありますが人によって使い方は様々ですので統一されなくてもあまり気にしないでください。

時間や距離は90分以上走ればロング走と言えますが、定義についても厳密には決まりはありません。

 

ぼくが20km程度の走り込みを行うようになったのは高校生の頃で、22歳で初マラソンを走ってからは30km以上のロング走は当たり前になりました。練習を継続していけば、誰もが快調なペースで2時間程度のランニングを続けて行う事ができるはずです。

 

ここで紹介するのは、SUB-2:20マラソンランナーとしての自分の経験や勉強してきたトレーニング情報が元となりますが、基本的な考え方は様々なタイプ・走力のランナーにとって参考になるはずです。

 

 

 

・ロングジョグ(難易度☆)

自分の快適なペースで2時間+α走 最高心拍数60-70%

 

ゆっくりペースより時間を重視したロングジョグでも、毛細血管の発達による血液循環機能の向上、脂肪の酸化能力の向上、身体を支える筋力の強化といった、走りを磨いていくために大切な基礎作りに役立ちます。

 

いわゆる有名な「LSD」とも呼ばれる練習ですが、ぼくは普段のジョギングより遅くしたり、必要以上に低速で行う事はしません。走行距離が落ち、身体への刺激が減るばかりか、フォームも崩れてしまうと考えるからです。

 

モデラートロングラン(難易度☆☆)

20〜35km走(マラソンペース+45~60”/km)最大心拍数70-75%

主に基礎作りやレース用練習の移行期行う

 

イージーロングランで肉体の基礎を固めたら、より有酸素的な刺激を強くするためにロング走のペースを上げていきます。(モデラートとはイタリア語で中くらいの速さでという意味です)

この段階でもペースより時間の方が大切なのは忘れないようにしなければいけません。速すぎるゆえに疲れて距離が短くなってしまうようでは十分な効果が得られません。

 

 

・ロングランwithファルトレク(難易度☆☆+α)

90分走+1分X10(その他30秒×15、90秒×10、2分×8…等時間を変えても良い)

主に基礎作り期かレース用練習の移行期に行う

 

バリエーションの一つとして、後半に時計のタイマーを使ってファルトレク(自由なスピード走)を入れる事もあります。

ゆっくりで走った後に、スピード走を入れる事で筋肉や心肺に程よく刺激を追加しつつ、フォームを整える事にも繋がります。

ぼくはこの練習を行う場合はファルトレクまでの持久走は主にイージーモデラート強度で行います。さらに速いペースで行えばエネルギーは枯渇し、かなりしっかりしたマラソン練習になりますが、追い込み過ぎに注意してください。

 

200〜300mのショートインターバルを入れるのもピリッと気分転換になって楽しいです。

【週刊ランナーズ】大阪マラソン日本人トップは城西大学コーチ「200m×25~30本がマラソンに活きました」 - RUNNET - 日本最大級!走る仲間のランニングポータル

 

冬場のロードシーズン等、レースが続く週の真ん中に、距離を若干抑えてファルトレクロングランを入れる事もあります。これでロング走が不足しがちな時期に走り込みとレース前のスピード刺激両方入れる事ができます。

 

 

・ステディエアロビックロングラン(難易度☆☆☆)

20〜35km走(マラソンペース+20〜40秒/km)最大心拍数75-80%

目標のマラソンレース2〜3ヶ月前から始める

 

モデラートもしっかりこなせるようになったら、いよいよマラソンレースを想定した速いロング走に移行していきます。

ぼくはラソンでタイムを伸ばすためには速いペースのロング走は不可欠と考えており、このステディエアロビック(定常状態)強度でのロング走が最も行う頻度の多いメインの練習となります。

 ペースを上げる事でより多くの糖質を消費し、グリコーゲンが枯渇した状態でも、効率良く脂肪を燃焼してペースを保つ事を身体に覚えこませます。

また自分が”少し速いけど快調“と感じるペースで長い時間走り続ける事によって、自然にランニングフォームも洗練されていくような感覚になります。

 

慣れないうちはすぐペースが落ちてしまい、ペースを維持する事が心身共ににハードに感じるので、練習会等で集団で行うとリラックスして走りやすくなります。

しかしこの練習もやはりロング走で大切なのは距離(時間)なので、飛ばし過ぎは身体の負荷を高める割に練習効果はそれほど高まらないので注意したいです。

しばしば仲間と競り合いになりレースになってしまうランナーを見かけます。

 

松本翔さんの主催するチームMK他多くのクラブチームの練習で行われる30km走イベントは、マラソンのタイム向上のためこの付近の負荷をターゲットにしていると思われます。

 ▷「走り」の偏差値を上げる マラソン上達ノート

 

 

・ビルドアップロングラン(難易度☆☆☆+α)

20〜35km走(少しづつペースを上げ、後半の3〜5kmをマラソンレースペースで走る)

目標のマラソンレース2ヶ月〜1ヶ月半前に数回行う

 

きつさは後半のスピードアップ具合によって異なりますが、エリート競技者にとってはマラソンレースペースで後半5km走ればかなり強度の高い練習になります。

ステディエアロビックペースかつ、後半もかなりペースを上げるなら難易度は星4つとなり、熟練したマラソンランナー向けの練習となります。

追い込み過ぎには注意ですが、手軽にマラソン後半のきつさをシミュレーションしやすい練習です。

 

 

・ロングランwith変化走(難易度☆☆☆☆)

20km+1kmマラソンペースか少し速く→1km元のペースに戻る・3〜5セット

目標のマラソンレース2ヶ月から1ヶ月前に数回行う

 

ステディエアロビック強度で20km程度走った後、1kmの変化走を数本入れます。

ラソンの後半を想定した練習でかなり強度は高くなりますが、ビルドアップ形式と比べると1kmで一旦スピードを緩めれるので、慣れれば力まずリズム良く行う事ができます。

速い部分の距離を長くしてさらに負荷を増す事もできますが、トップエリート競技者向けのマラソンロングランになります。

 

 

・インターバルフィニッシュ(難易度☆☆☆☆☆)

30〜35km+1kmX2~3

選手権レースの準備のための特別な練習

 

ハードなロングランの後、さらに1kmインターバルを行う事で、マラソンの”ラスト2.195km“の切り替えの勝負強さを極めます。

大阪世界選手権銅メダリストのビクトル・ロスリン選手が考案した夏の選手権マラソン用のメニューで、35km走(3:20/km)+1kmX3(3:00/km切り)で行いました。終わった後は5〜10分ほどクールダウンジョグも行います。


身体のエネルギーを芯から振り絞る相当にタフなメニューです。一度試す価値はあると思いますが、鍛え込んだエリートランナーであっても万人にはオススメできません。

 

 

・オーバーディスタンスロングラン(難易度☆☆☆☆+α)

40〜45km走(モデラート〜ステディペース)

十分に鍛えられたランナーが目標のマラソン前に1〜2回行う

 

実際にマラソンの距離を走る事でレースに近い負荷を身体に覚えこます練習です。

これをステディペースで行えば相当な負荷がかかるため、次の“ポイント練習”を行うためには5〜7日程度の期間が必要と考えます。

日本の実業団選手はステディペースの40km走を何本行ったかを一つの指標として使う事が多いようです。

 

ぼくは練習のスピードと継続性を重視するため、ダメージの残りやすい40km以上のロング走はあまり行いませんが、実際のマラソンレースをかなり強度高めのオーバーディスタンスランと位置づける事もあります。

 

補足

 ロング走に関する補足が増えたので記事を分けました↓

www.takemarun.com

 

  

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まるRCでは冬場にマラソンに向けたロング走イベント「まる30」を開催しています。長い距離を集団で走ると少しづつリズムが良くなっていき、頑張らなくても一定のペースを刻みやすくなるのに気づきます。

 

↓ロング走についての基本となる知識はこの記事で紹介している数冊でほぼ全てを学ぶことができます。 

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ロング走といえばやはり▷リディアードのランニング・バイブル