まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

コロナ禍のランニング〜10mルールとマスクは必要なのか〜

今回は世間をざわつかせているランニングのソーシャルディスタンス10mルールとマスクの着用について書いていきます。

 

 

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 家の周りは走りやすい河川敷。混雑する事はまずありませんが、ランナーが増えてきたように感じます。

 

 

インパクト絶大のシミュレーションは空気力学の研究であり、感染リスクには言及されていない。

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https://medium.com/@jurgenthoelen/belgian-dutch-study-why-in-times-of-covid-19-you-can-not-walk-run-bike-close-to-each-other-a5df19c77d08

 

今もよくテレビで取り上げられるインパクトのあるランニング中の飛沫シミュレーション画像。

ランニングでの”社会的距離“は1.5mでは足らず、このシミュレーションだとなんと10mは飛沫が飛ぶ可能性を示唆しています。

 

しかしこれは空気力学の研究であり、感染リスクには全く言及してない事、研究を発表したブロッケン氏も屋外のランニングやサイクリングを推奨している事は無視され、雑な情報だけ拡散される事態になってしまいました。

 

ちなみにシミュレーションの走速度は14km/hでほぼサブ3ペース。マラソン2時間20分を切るぼくでもこのペースでジョギングではこれよりだいぶ遅いペースで走ります。しかも真後ろが想定ですが、歩行者が真後ろにいる状況はそうそうあるでしょうか?(あったとして一瞬のすれ違いが感染リスク?)

 

酷い場合は、この画像だけの印象で、歩行者やサイクリストも呼吸をしている事は忘れ、まるで「なんとなくハァハァ言ってるランナーだけがウイルスを撒き散らしている」ような解釈がされています。

 

大原則として、屋外の運動は低リスクであり、ランニングでの感染の報告は現在ありません。

 

「コロナウイルスを広めるランナーについてのウイルスの「研究」は実際には研究ではありません」“ Jason Koebler

https://www.vice.com/en_us/article/v74az9/the-viral-study-about-runners-spreading-coronavirus-is-not-actually-a-study

ハーバード大学の伝染病動態学センターの疫学者であるWiliam Hanage氏「疫学の側面では、液滴がこの経路を介して発生する感染の量よりもはるかに重要ではない。物理的な距離に関するアドバイスは、リスクを完全になくすのではなく、”減らす“ことである

「このような研究は本当に有用ではない。少なくとも疫学者にとっては」


現在は屋外での運動がいかに危険についてのコンセンサス(意見の一致)はありませんが、多くの研究が屋外でのメンタルヘルス上の利点が重要であるのを示唆している事を、真剣に受け止めるべきです。


Hanage氏は「常識を働かせている限り、屋外で運動しても大丈夫」だと言っている。「コミュニティ伝染率が本当に高い状況以外では、バランスの問題だろう」

 

 

生物学者のレベッカ・レヴァンドフスキ博士

https://www.runnersworld.com/news/a32099136/coronavirus-viral-simulation/

「私はコンピューターが生物学で発生する無数の変​​数を模倣する事ができるのを見たことがありません。私は査読されていないことはもちろんのこと、シミュレートされたものに懐疑的です。」

シミュレーションについて検討する価値のある何かを見つけたかどうかを尋ねたところ、彼女の答えは単に「ゼロ」でした。

中国での75,000件を超えるCOVID-19症例の分析では、そのような空中伝染は発見されていません。

 

 

Are Running or Cycling Actually Risks for Spreading Covid-19?

https://www.wired.com/story/are-running-or-cycling-actually-risks-for-spreading-covid-19/

 

ウイルス学者はウイルス量(密集した屋内環境は、屋外のオープンスペースよりも大きなウイルス負荷をもたらす)と、暴露時間が重要である事を指摘しています。

“歩道の隣人に挨拶しても、ビールを飲みながら屋外のカフェで友人の隣に座っているよりもリスクは少なくなります。しかしこれまでの所屋外での人から別の人への新しいコロナ拡散に関する発表された研究はありません”

 

 

 

マスクの着用「必ずしも着ける必要はない。」

 

これに加え、今議論になっているのがマスクの着用の是非です。

結論から言うと、「必ずしも着ける必要はない。

 

https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=635932&comment_sub_id=0&category_id=256

広島国際大の佐和章弘教授(感染制御学)、専門家の方が明確にコメントしています。

 

 ―散歩時、マスクを着ける必要はありますか。

他人への思いやりとして着用するのは歓迎したいが、必ずしも着ける必要はない。感染するケースは主に、くしゃみやせきのしぶきを直接浴びる「飛沫(ひまつ)感染」と、ウイルスが付いた物を触った手で目や口、鼻を触る「接触感染」の二つ。公園や河川敷などの屋外を1人や少人数で散歩する場合、感染を過度に心配することはない。

 ―ジョギング中はどうでしょう。

 散歩と同じく、必ずしも着ける必要はない。しかし、大きく息をするため、しぶきが周囲に飛ぶ危険性が散歩時より一段階上がるイメージは持ってほしい。単独で走るのが原則。複数人で同じコースを一緒に走るのはやめよう。

 

 もう一つ参考までにシンガポールのルールですが、“外出時には,全員がマスクを着用しなければなりません。屋外での強い運動(例:ランニングやジョギング)中はマスクを外すことができますが、運動終了後は必ずマスクを着用しなければなりません”となっています。

https://www.tokutenryoko.com/news/passage/8112

 

マスクを着けて走った場合のどのように呼吸して飛沫が変化するのかのシミュレーションはありませんし、話題のバフの効果についても全くわかりません。

湿気が篭る事により、かえって衛生面の不安や顔や鼻を触ってしまう危険を指摘する意見もあります。

今回は間違いなく長期戦です。真夏も、大会が再開しても同じような事が続けれますか?

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ゴールドコーストマラソンでもらったバフ。ぼくは風が寒い時はバフを使ってます。しかし気温が高くなると首に巻いているとかなり熱がこもります。

 

 

リスクの少ない行動に対して、行き過ぎた不安や対立を煽る情報、伝言ゲームの怖さ

 

ぼくも“ランナーのスマートなコロナ禍ランニングエチケット”的に提唱した意見は間違ってはいないし、特に都市部の街中の公園に大勢の人が集まる風景に全く不安を感じないと言えば嘘になります。周りの人への気持ちへの配慮は必要だと思っていました。
どの場面でも必要だと考える人は続ければいいと思いますし、その思いやりの気持ちには敬意を表します。

 

今回の記事を書くに至ったのに、未だランニングが感染を拡げているという根拠は無いのに、コロナ禍で恐れるべき不安や対立を煽るような不確かな情報の拡散が行き過ぎたと考えたからです。

 

ランナーの中には、周囲の目や怒りをコントロールできない人から被害を加えられるかもしれないという恐怖から、マスクやバフを着用している人もいます。

これでは、もはや有害とさえ感じます。

 

罵倒、伝言ゲーム的に誤った情報を拡散する著名人、自転車でマスクしていないランナーに注意しにいく本末転倒な事例も聞きます。

 

たむけん マスクなしランナーに「ええ加減にせぇよ」山中教授もジョギングエチケット提唱

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200420-00000066-dal-ent

 

マナー・エチケットを越えて、著しく情報のバランスが崩れ、ランナーにも歩行者にも両方不安が広がっている現状を危惧しています。 

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感染者がほとんどいなくなり、小さいランニングイベントを再開している台湾。

マスクは着けてる人も、着けてない人もいます。

 


2020停一下往山林跑 系列六【賽事報導】

走り始めてすぐ外した人も多かったのか、大会後半の模様ではあまりマスク姿は見られませんでした。

走る前後でマスクを着用する事にしていた人もいるかもしれません。

 

もちろん台湾とはまだ状況が違いますが、だからこそ過度に不安を煽る不確かな情報には注意が必要だと思います。

自分で判断し、状況に応じて着用する。

屋外のランニングの感染リスクを考えると、この辺りのバランス感覚がちょうど良いと思っています。

 

 

まとめ

・屋外の運動は基本低リスクで、感染を繋げていないというのが大前提

・低リスクな行動を、誇張された情報で不安を煽るのは有害

・さらに運動は現在のパンデミックの世界でとても重要。

・大事なのは適切な距離をとり、人の多くなりそうな道、時間帯は避ける事。それはランナーだけでなく歩行者もサイクリストも同じ。マスクはその解決法ではない

 

▷コロナ対策ランニング術 |八田益之|note

 

この記事は2020年4月に書いたものです。

2023年春より、ほぼ全ての基本的感染症対策は屋外・室内関わらず個人の判断に任されています。皆さんも自由に大会や仲間とのランニングを楽しんでください。