今回はある程度距離を踏み始めたランナーや骨が発達段階の中高生に多い、シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)について書いていきます。
シンスプリントにはスネの内側に痛みが出るものと、外側に痛みが出るものがあります。
今回は内側の「後内側シンスプリント」をメインに解説していきます。
徐々に蓄積されていく疲労
ここからはぼくの体験を中心に。
下腿部の故障は、ぼくにとっては弱点とも言える部分です。
ぼくがシンスプリントを発症したのは2010年の丸亀ハーフマラソンの前、2011年と2012年の高島平ロードレースの後で、全て左脚でした。
振り返ってみると、意外にも練習をストップするような痛みはここ数年は出てなかったのですが、"違和感"程度の痛みだともっと回数が多く、右足にもそのような予兆が出ていたように思います。
直前の練習メニューを見ると、細かいカーブの多い周回コースやきついアップダウンでスピード練習や走り込みをした後に痛みが出ていました。
高島平ロードレース(20km)はフラットで走りやすいコースですが、5kmの周回コースで直角カーブがいくつかあります。
また痛みは徐々に蓄積されていくため、初期のそれほど酷くない段階では、つい我慢して走り続けてしまいました。
この後、トドメをさしてしまったトレーニングはしっかり覚えています。アップダウンの多いコースでの30km走でした。
下り坂を走るたびに、足首にピリッという不快感が襲いましたが、マラソントレーニングをやり始めたばかりのぼくはブレーキのかけどころがわかりませんでした。
こうなってくると日常生活のちょっとした場面で痛みが出てきます。
階段を歩いて降りる時に、足首の中をナイフで切られているような鋭い痛みを感じるようになりました。
この時は初めての福岡国際マラソンの前で、プールでリハビリしてなんとか間に合わせましたが、タイムは2時間28分台と初マラソンのびわ湖より悪いタイムに終わってしまいます。
シンスプリントの予防と対策について
リディアードのランニング・バイブルの「ランナーの障害予防と対策(第11章)」に載っていたシンスプリントの対処法が最もぼくに当てはまる部分が多かったので紹介します。
リディアードはつま先でパタパタと叩くような走りがスネにかかる衝撃が大きくなることに注意を呼び掛けており、特に下り坂でストライドを広げようとするとこういう走りになりやすいです。
リディアードは対策として、つま先が厚め(高低差の少ない)シューズを勧めており、またプールでのクロストレーニングがシンスプリントに治療にはとても良いということが書かれています。
水中では着地の衝撃が無いというだけではなく、水圧の効果で血流が悪くなりがちな末端の筋肉をほぐしてくれます。
自転車も膝から下にはほとんど負荷がかからないのでオススメです。
また偏平足気味のランナーは、走り込みの疲労で足裏の衝撃吸収能力がさらに落ちているということも。
ぼくの故障部位のほとんどが膝下に集中しているのは、偏平足とオーバーストライド気味の走法が起因しているのがわかります。
色々な場所を痛めているというランナーも、いくつかの故障には関連性があるかもしれません。
自分のランナーとしての特性・弱点が見えてくると対処や必要なトレーニングも見えてきやすくなってきますね。
ぼくにとっては泣き所である有痛性外脛骨もシンスプリントと非常に関連する部分があります。
後脛骨筋のケアや強化は下腿の内側を痛めやすいランナーにとっては特に注意しなければいけない所です。
足裏を使ったエクササイズ(タオルギャザー、足指ジャンケン、つま先歩行、芝生での裸足ジョグ)や、ストレッチは1年を通して行いましょう。
結局はやり過ぎないことが一番大切
ただ、結局一番の対策は"練習をやり過ぎないこと、疲労を溜めこまないこと、量より質を重視したトレーニングを行うこと"でした。
マラソン選手といっても、ロードでの走りこみばかり重視した練習法は疲労を溜めるだけでなくフォームを荒削りにしてしまいます。
思うようにスピードが出ないと、ぼくの場合はどうしても力任せにストライドを広げるような走りになってしまうのです。
ピッチ(回転数)を上げるのが上手なランナーはこの問題は起こりにくいのかもしれません。
2012年以降は痛みが出たら早めに練習をストップし、ほとんど1週間以内に元通りに走れるようになっています。
ぼくの中では、違和感は出やすいけど、治るのも早い箇所のようです。
ランナーにとって、違和感程度でサっと走るのを止めるのは難しい所もあります。
こういう時、過去の経験・失敗が活きてくるはずです。
今までのパターンと重ね合わせながら慎重に選択していきましょう。
・ある程度走り込めるようになったランナーに多い、定番のランニング障害
・直角カーブでのスピード練習、走り込み後はアイシングを
・疲労が蓄積されると強い痛みに変わる。早めに引くことが大切
・酷くなると階段を降りる時も鋭い痛みが出る
・下り坂では回転を意識する
・つま先が厚め(高低差が少ない)のシューズを履く
・痛い時はインソールも使う
・後脛骨筋を強化するエクササイズやストレッチが大事
・走行距離に固執しない。アスファルトの走り過ぎにも注意。
・プールでのクロストレーニングは体力維持だけでなく、治療にも役立つ
・違和感の出やすい箇所。過去の経験も頼りに判断する