まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

メイクドラマ、高知龍馬マラソン2026振り返り【12年振りの優勝!】

6回目の高知龍馬マラソンレース振り返り。

 

 

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2014年に初出場初優勝、翌年川内優輝選手にコテンパンにやられ、長い修行期間とコロナ禍を経て2023年に復帰。以降2位、3位、2位とあと一歩のレースが続いていた。

 

練習はしっかりできているし、地元という事で調整も万全、いつも以上に緊張無くレース当日を迎えられた。

 

ただ座って脚を触るとブルブル震えが起きる。調子が良過ぎて気持ちが昂っているのか、やはり怖いのか、よくわからない。

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恒例の決起記念撮影(武道館が工事中でした)をして、ウォームアップを開始。

今日は暖かいし、招待選手という事で直前で並べるので準備はしやすかった。

 

今年はハイペースでのスタート

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レーススタート。

優勝候補の一人、高山(こうやま)選手が勢い良く前に飛び出る。冷静に少しづつ距離を縮めていった。

 

まず気になっていたのは、昨年のように集団が牽制状態となってしまう事

スローペースになると思わぬ伏兵にやられる事があるかもしれない。かといって自分で前を行きすぎるのもリスクはある。

 

高山選手はここまでのマラソンも単独走で走っていた事が多かったという。ハイペースはぼくにとっては有難い展開だった。

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5km通過は16:06昨年より約30秒速い入り。いいね。

集団は宮城からきた強豪公務員ランナー大橋選手(昨年3位)、同じ高知勢の濱口純平選手(昨年5位)。あと少し距離が空いて数人ついてきているようだ。

序盤の時点で、ほぼ事前の予想通りの優勝候補メンバーに絞られた。

 

高山選手の勢いは続き、5-10kmも16:13。暑さもあるし少し速いとは感じるが、ダメージがくるのはみんな同じ条件。

嬉しい事に、この数年ずっと地元の有力選手であるぼくへの沿道からの声援はとても多く、そこは優位性を感じた。

 

"隠れ難所その1"、蛸の森トンネルのアップダウンを越えて10-15kmは16:30

それほどペースが落ちたようには感じなかったが、やはり他のフラットなコースの大会のように龍馬マラソンでペースを維持させるのは難しい。

 

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20kmが近づいてきた所で、全くノーマークだった赤いウェアの原田選手が前に出てくる。

あれ、いつのまに集団が5人?走っている時は彼の事を知らなかったので、後ろのゼッケンに書かれた名前を確認しようと試みたが、ランニングの上下動でブレてなかなか見えず、目が酔ってきたため諦めた。

 

どうやら箱根駅伝出場経験があってトラックやハーフのベストタイムもめちゃくちゃ速い人だったようだが、走りの動きを見ても明らかに実力者であるのはすぐわかった。

 

ぼくの長年のマラソン経験から何か嫌な予感がしてきたものの、高山選手と二人で引っ張ってくれてさらに集団が走りやすくなったのでまぁいいかと思うようにする。

 

レースが大きく動いた22km

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RKC高知放送

そしてコース最大の難所・高低差40m以上の浦戸大橋に突入。

ここを速いペースで走るのは相当にきついが、ここでライバルに弱い所は見せたくないので、なるべく上を見ないようにしながら淡々と上っていく。坂の途中で20kmを通過し、この5kmは16:34

気がついたらぼくが先頭に立っていた。頂上に到達し、下りは気軽な気持ちで駆け降りていく。

浦戸大橋を完全に渡り終え平地になったら、タイツからジェルをとって補給し、また一旦呼吸を整えよう。

 

そんな事を考えていた22km付近、大きくレースが動く

 

原田選手が一気の切り替えであっという間に遥か前に行ってしまったのだ

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これはマズイ。ぼくも前を追ってペースを上げていく。数kmで前のペースが落ち着いて追いつけるのでは、と考えたが原田選手との距離はどんどん開いていく。

 

レース中は原田選手の事は一切知らないぼくだが、おそらく短い距離は速いがマラソン経験は浅い若手のランナーではないかと思った。

暑さや後半の坂の事を考えると、ここで無理をしてはいけない。かといって、あまり差がつきすぎると勢いでもっていかれてしまう可能性も。

 

また、すぐ後ろには優勝候補の高山選手、大橋選手がついてきている。

中盤で前の選手を追うのはマラソンでは余分な力を使い、上体が硬くなったりスタミナを消費しやすい。

原田選手に追いつく事に全てのエネルギーを使って、最後力を残していた二人にスパートでやられてしまうわけにもいかない。

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まさに前門の虎、後門の狼といった状況である。

一つの判断ミスが勝負を分けてしまうかもしれない、精神的にも非常にきつい場面だった

 

20-25kmは16:20。ペースは上がったが、それほどではない。

原田選手との距離は開いていき、ペースを落としてこの集団での勝負に集中した方がいいのか迷いが生じてくる。

 

小雨が降ってきて、この日は最高気温20℃になっていたが予想外に涼しい好条件になってきた。嬉しい反面、前の選手も元気になってくるのではという懸念も。

 

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25-30kmは16:50とここで一気にペースダウン。少し上りと向かい風の影響もあっただろうが、予想以上にぼくの引っ張るリズムが悪くなってきたように感じる。

沿道から時折聞こえてくるトップとの差が、遂に1分まで開いてしまった

 

30km過ぎからは高山選手が再び前に出てペースを戻してくれた。

まだ余力がありそうなので怖いと思った一方、高山選手の作るリズムは走りやすく、ぼくも調子を再び取り戻していく。

 

33km付近で大橋選手が少し離れていくのがわかった。"隠れ難所その2"、仁淀川河口大橋は確実に疲れたランナーの脚を削っていく。

これで第二集団はぼくと高山選手の二人のみに。まだかろうじで先頭の中継車と原田選手の姿は小さく見える。

 

走りが良くなった所で、迷いが少しづつとれてきた。

"今、目標である2時間20分を切るペースで確実にレースは進んでいる。このままでは優勝は難しいかもしれないが、それは相手が強かっただけの事だ。自分にとってのベストのレースをする事をまず第一に考えよう。"

 

奇跡の大逆転

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30-35kmは16:32と良い感じのペースアップ。

終盤になって過去の大会の記憶がふと蘇ってくる。

2023年大会では22km付近で抜け出した小田くんに結局最後まで追いつく事ができなかった。

2024年大会ではこのあたりで行場さんと並んで競り合っていたが完全にスタミナが切れて振り落とされた。

 

今日のぼくには、スタミナ切れの予兆はない。確信は無いが、高山選手の呼吸が初めて苦しそうになったようにも感じた。

 

36km過ぎ、左折して春野の競技場に向かう最終局面の手前で、ぼくはペースを上げて高山選手を振り落とす事に成功した

 

よし!これでもう恐れるものは何もない。最終的に勝とうが負けようが、あとは自分の力を出し尽くして先頭の選手を追いかけるだけだ。

 

沿道から聞こえてくる先頭との差も40秒、30秒と少しづつ縮まってきた。

 

これは、ひょっとして....間に合うのか?

 

全身に血が駆け巡っていくような感覚、脚が、そして心が熱く燃え上がってくる。

苦しいマラソンの35km過ぎでこういうゾーンに入れる事はなかなか無い。

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RKC高知放送

行ける!そう思ってからは短く感じた。

38km付近で確実に視界に入り、抜けるのがわかってからは、昂った気持ちもだいぶ冷静になっていた。

もし抜いてから後ろにピタッと引っつかれても、この勢いの差では相手が春野の坂を耐え抜くのは難しい

 

そして40km付近でぼくは遂に、原田選手をとられて先頭に立った

既に疲労困憊状態となった原田選手はついてくる事はできない。

 

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RKC高知放送

なんというドラマティックなレース展開だろう。自分でもちょっと信じられないような逆転劇。これが、マラソン。

 

40kmの通過タイムを見て、2時間20分を切る事はほぼ確実であるのがわかった。

 

昨年は春野の坂の手前でスパートを仕掛けてバテてしまったので、今回は坂も含めてじっくり丁寧に走る事にした。

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誰がこんなコース設定にしたのかという鬼の上り坂は約600m。10日前に最後のシミュレーション練習で軽くダッシュしてみると大体2分弱で走れた。

きついけど、ここまで来てたったのあと2分。あともう少し、もう少し。

 

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競技場に入り、さすがに勝利を確信したぼく。

最後の直線ではゆっくり、勝利を噛み締めるようにまるポーズをして優勝のテープを切った。

 

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RKC高知放送


タイムは2時間19分12秒。龍馬マラソンコースベストを1分21秒も更新する自分でも驚きのタイムだった。

 

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RKC高知放送

そして、まもなく終盤まで競り合っていた高山選手が2位でフィニッシュ。

その差8秒。ええっ、近くない?

後半も粘りまくっていたようで、まるポーズしている時に抜かれたら笑い話になっていたと、少しヒヤッとした。

ただ高山選手と走りがうまく噛み合った事も今回の快走に繋がったのだと思うし、お互い高め合って良い記録が出せた事を感謝したい。

 

原田選手は最後でだいぶ遅れて2時間20分46秒で3位。しかしこの基礎走力の高さで、来年経験を積んで戻ってきたらと考えると恐ろしい。

 

レース前、"今回は有力選手が少なく勝てるのでは"と何人かから言われたが、とんでもない。

過去3大会と比較してもレベルが高く非常にタフなレースだった

 

マラソンの魅力を存分に伝えるレースができたと思うが、今年から先頭集団のレース中継が完全に無くなってしまった事が残念でならない...。

 

今回6位の濱口選手も小学生の頃にぼくの走りをテレビで見て興味をもってくれたそうで、高知でマラソンを走らない人にもレースを身近に感じてもらえる貴重な機会としてなんとかならないものか。

 

マラソン大会史上に残る珍記録?

この数年で全国各地のマラソン大会のレベルは大きく上がった。

龍馬マラソンも毎年箱根の強豪校出身のフレッシュな若い選手が参戦してくると思うと、今回ぼくなんかが勝てた事は奇跡みたいなものかもしれない。

 

初めて優勝してから、今回までなんと12年もの月日が流れてしまった。ひょっとしたら全国の大会で見ても結構な珍記録(?)なのだろうか。

 

一つだけ確かに言えるのは、ぼくが12年間心の炎を決して消さずに燃やし続けてきたという事だ。

 

何度負けても、勝つまでやればいいじゃない。

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今年も沿道での途切れない応援、大変ありがとうございました!

 

レース結果

2時間19分12秒(1位)

👟METASPEED EDGE TOKYO

🕰️POLAR PACER

(5km)16:06/16:13/16:30/16:35/16:21/16:50/16:32/16:30/7:35

HALF68:59-70:13

⭐︎12年振り2度目の優勝

⭐︎初の龍馬マラソンサブ20、コースベスト1分21秒更新、川内選手、板垣選手に次ぐ歴代3番目

 

NEXT RACE...3/15かがわマラソン

 

-1分以上の差を大逆転!37歳・山崎竹丸(高知市)劇的V 挑戦と成長支えた努力―高知龍馬マラソン2026

https://www.kochinews.co.jp/article/detail/971985

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↓昨年のレース振り返り

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