甲佐10マイルロードレース振り返り。
100人規模の競技特化大会

10マイル(=16.093km)というのはマイナーな種目と言える距離だが、ニューイヤー駅伝や箱根駅伝の距離に近く、最終準備やメンバー選考のためのレースとして強豪チームのトップ選手がこの熊本県・甲佐町に集結する。
今回が50回記念という日本長距離界の歴史の一部とも言える伝統と格式のある大会だ。

スタート時間は11時と少し遅め。最高気温予報は18℃で、朝は寒かったが、アップを始める頃には徐々に暑さを感じるようになってきた。
レース前の受付や招集はあるものの、当然整列の待ち時間は殆ど無し。着替えやトイレ、水分補給の心配は殆ど無いのでストレスフリー。

召集の時間になると、東京世界選手権5000m代表の森凪也選手、佐藤悠基選手や井上大仁選手等々有名選手がズラリ。(ぼくも左端に少し映ってます)
参加者数は例年よりさらに少ない100名弱。今までもエリートレースに出た事があるけど、ここまでレベルの高い選手が凝縮された大会は初めて。
ピリピリとした空気に、本当に自分がこのレースに参加できるのか、緊張感が高まってくる。
※ちなみに参加標準記録は5000m17分00秒で、ぼくのベストより2分以上遅く、シリアスな競技者向けではあるものの限られたトップ選手しか出場できないというわけではない
レーススタート。
予習で昨年のレース中継を見たが、かなり大きな集団で走っていていた印象だった。
走力が劣る選手や調子が悪い選手も最初は我慢してハイペースについていく展開だろうか。
やや向かい風も感じており、序盤からこぼれて一人になるのはまずい。
だが、正面から見た映像と実際のレースはだいぶ違うもの。前は想像以上の凄いスピードで、あっという間に集団は縦長になり、ぼくは近くのペースを合う集団を探す事にした。

1kmの通過は2分53秒。速いが、感覚としては悪くない。
近くに長身の坂東選手(東京五輪5000m代表)を発見。ここにいるという事はまだ本調子でなく練習の一環でペース走的に引っ張ってくれるかもしれない。
また、もう一人戸上電機製作所の選手は割と余裕がありそうに走っているように見えた。
突っ込んで落ちたり、調子が悪くて失速する選手よりは最初からマイペースで行くと決めている選手の方が一緒の集団でも走りやすい。
前の方に数人の集団、またもう少しペースを抑えたら後ろにも集団はありそうだったが、早い段階でこの2人をマークしていこうと決めることができた。
集団がすぐバラけたのはぼくにとってはプラスに働いたように思う。
他にも何人かついてきて、5~6人程度の集団になり、必死でついていく。前半はやや向かい風に感じるので完全な単独走は避けたい。
先頭から離れたといっても、自分にとっては未体験のペース。周りの選手が余裕があって少しペースを上げれば振り落とされて大失速してしまうかもしれない。
だがコマネチGTRリーダーの小田くんからもらった「5km14分台の入りを恐れない事も大切」というアドバイスを頭に叩き込み、突き進んでいった。
5km通過は14分52秒!当然楽ではないが、まだ自分にとって適正の範囲内のペースに感じた。
"少なくとも10kmまでは今のままで大丈夫、これは48分台もいけるぞ!"とテンションが上がってくる。
坂東選手は少しペースが落ちるのを確認するとペースを上げている感じで、なんとなくトラックが得意なスピードランナーらしい帳尻の合わせ方。無理に反応せず見送っていたら自然に追いつけるようになっていた。
もう一人の戸上電機製作所の選手の方が安定したペースで走っており、ロードレースでの走りが熟練している。どちらかというとこちらの選手によりリズムを合わせて走る事にした。

(甲佐10マイルロードレース公式動画より) 左にぼくの背中が見えます。
他にいた数名の選手も少しずつ離れていき、ぼくとしてはとにかくこの2人とのレースを意識。
8kmで折り返し、まだ十分に余力はアリ。
10km通過の看板は見逃してしまい、5-11kmは18分32秒。10km通過は30分16秒付近で通過したと思われ、その時は特に考えなかったがじわじわペースが落ち始めていたようだった。
甲佐10マイルのコースはさすがエリート選手が記録を狙うために考えられたコースという感じで、ほぼカーブの無い真っ直ぐな道を走って折り返すだけのほぼフラットなコースなのだが、かなりペースが速いため、ちょっとした坂でもきつく感じてしまう。
耐えれなくはないが、なんとか必死でついてきたぼくとしては、なるべく無駄な消耗がなくレースが流れてくれると有り難い。

坂のアップダウンに加え、坂東選手のペース変化も加わり、少し離れては粘って追いつくという展開が増えてきたためか、集団のリズムが安定せずペースが落ちたの感じてきた。
ぼくが少し前に出る場面もあったが、またペースアップで置いていかれ、13km付近からは単独走が中心になっていく。
まだ目標の二人がそれほど離れてない事や、前からこぼれてくる選手を拾っていく事で、このレベルのレースでも戦えているという確かな手応えを感じながらレースのモチベーションをキープしていった。
14km過ぎで、ふっと脚が軽くなったような気がした。まだ自分は限界ではない。
走りを切り替え、前にいた坂東選手をとらえる。
おそらく復帰途中で練習の一環であろう五輪代表選手にたまたま勝った所で凄い事だとは思わないが、レース中は何か勝ちたい理由を思い浮かべる事が最後のひと押しに繋がる事もある。
15kmの看板で時計を見ると、46分が見えた。ここで思ったより10km以降はペースが落ちていたのを理解する。ラスト1.093kmを3分切って走るのはまず不可能。
目の前にはずっと一緒に走っていた戸上電機製作所の選手含む5人ほどの集団が見える。
もうここまで来たら、何のリスクも無い。ここからは残っている力を全て使い全力で走る事に決めた。48分台は届かなくても、とにかく少しでもタイムを稼ぐんだ。

最後のフィニッシュ地点に向かうカーブを曲がって、もがいて少し大回りしてしまったが、最後まで上げ切って飛び込んだ。
結果は49分20秒、68位。
1km平均3分03~04秒のかなり良いタイムで、今回のテーマだったハーフ65分切りペースも無事クリアする事ができた。
ただ、序盤の手応えを考えると48分台行きたかった、途中で満足してしまい後半ももっと攻めれたのではないかという悔しさも残った。
5000mの自己記録更新から2週間、早くもぼくが自分自身に求める基準が上がってきたのを感じた。
今年もスケジュールの兼ね合いで10000mの記録狙いの大会に出る事は出来なかったが、正直申請タイムで組やスタート時間が変わる記録会はモヤっとする事が多く、自分の性に合ってないと感じる事がある。
今回のような強い選手と一緒によーいドンするロードレースでは、もし狙ったような結果が出なくても全て自分の実力不足だと思えるのでスッキリする。
絶好調の状態で、今の自分の100%をぶつけられるこの大会に出れて本当に良かった。

これからも自分の限界に挑戦できる舞台を探していきたい。
レース結果
10マイル(16.093km)・49分20秒
ave.3:03.9/km
〜移動編(甲佐町までの道のり)に続く〜