まるランニングマガジン

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Takemaru Yamasaki マラソンランナー&プロランニングコーチ

渾身のラスト2.195km、高知龍馬マラソン2025振り返り。

高知龍馬マラソン2025レース振り返り。

一昨年は2位、昨年は3位とあと一歩の成績が続き、そろそろ優勝したいなといった所。

 

当日は5:20頃に起きて、朝食はベーグルとバナナ&ヨーグルト、コーヒー。レース直前最後の補給にジェルを摂る事が多かったが今回は2時間前にエネモチ(餅のスポーツバー)を食べる形に少し変えてみた。

 

丸亀に続き、今回も雨予報から変わって曇りで10℃付近、風も弱い絶好のコンディションに。

最近すっかり"晴れ男"と周りからも言われるようになり、当然ぼくにそんな特殊能力は無いはずなのであまり期待されても困るのだが、せっかくなので良い方向に考えよう。

ひょっとしたらつい先日101歳で亡くなった祖母が天国から最高の天気をプレゼントしてくれたのかもしれない。

 

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恒例のまるRCでの記念撮影をした後、ウォーミングアップは招待選手の手荷物荷物を預ける場所がよくわからなくなって県庁と城西公園を行ったり来たりで少し慌てた。

そもそも荷物を預けるタイミングが早過ぎて上着も着れないので、あまり招待選手の優位性が無いのはどうにかならないのかなぁ。

招待は昨年の上位5名で、男子は前回も青学が殆ど独占していたのでぼくくらいしかいなかった。

昨年女子4位の森野夏歩選手と談笑しながら、スタートライン付近で待機。入るタイミングがわからないのも妙に気まずい。

 

スペシャルゲストの広末涼子さんが目の前を通過。さすがに何かスター特有のオーラを放っており、まるでエリートレースでキプチョゲやキプサングを間近で見た時のような気持ちになった

 

肩が凝る駆け引き

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さてさて、レーススタート。

おそらく上位を狙う選手は自分も含めて前に出たがらない事を予想し、どうせなら最初に引っ張っておこうと前に出る事にした。

ただやはり力は貯めておきたいというのもあって慎重に走っていくと、1km3:20くらいのペースでリズムに乗りたい最初としてはちょい遅め。

どうせなら最初くらいピリッと良いペースで引っ張っておけばよかったか。

途中タイツの後ろのポケットに入れていたジェルが落ちそうになっていた気がして、ヒヤッとなり確認できる前に入れ直す。

 

5kmを16分37秒で通過して、小森選手が遅いと感じたのか前に出てなかなか良い感じのペースで引っ張ってくれた。

 

5-10kmを16分20秒と非常にナイス。しかし徐々にライバルの動きに違和感を覚え始める。

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優勝候補の"JP"ことウルトラマラソン世界王者の山口純平選手や、東北の強豪ランナー大橋真弥選手が全く前に出ようとする気配が無い。


最初に予想したように、スローから後半勝負の展開というのはある程度想定していたが、持ちタイムトップの大橋選手や本来"フロントランニング"を得意とするJP選手がいれば、自然と循環するように入れ替わってレースが流れていくと考えていた。

少し虚を突かれたような形になった事と、強豪の2人が勝ちに徹してくるというプレッシャーから、徐々に肩が凝ってくるようなレース展開になっていく。

10-15kmはぼくも引っ張ったりしながら16分37秒とまた戻ってしまう。

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それでも小森選手が前に出てくれるうちは良かったが、難所の浦戸大橋(全長約1.5km、高低差50m)辺りで脱落。

まだ中盤なのでそれほど無理はしないとはいえ、やはりここの上りは苦労してやっとこさ登り切った。15-20kmは16分42秒。想定よりややスローくらいの展開が続く。

先頭集団は3人の優勝候補に、高知県勢の棚橋選手、濱口選手を加えた5人に絞られる。

 

そしてぼくがレースの大半を引っ張る事に。ある意味コースもよく知ってて気持ちに余裕があった事で、丁度良いリズムや位置どりで走っていたら気づくと先頭に立っている。

 

うーん、勝負所までペースメーカーになるのはちょっと御免被りたいし、でもあんまりアレコレ考えてウロチョロするとかえって体力を消耗してしまう。

非常に難しい展開になってきた。

 

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(今年は高知放送でテレビの先頭集団の中継が無くなった代わりに実況&解説つきのLIVE配信を実施)

 

下り終えて、やっとジェルを補給すると、一旦うまく後ろに下がる事に成功。

さらにここで棚橋くんが良い感じに前に出てくれたので非常に助かった。今のうちに、少し動きに"溜め"を作っておきたい。

 

この時、棚橋くんに「2人ともなかなか前に出てくれないね」と話しかけて周りの選手に心理戦を仕掛けようかと思ったが、なんとなく真剣勝負に水を差してしまう感じがしたのでやめておいた。

 

20-25kmは16分42秒、このあたりのペースにリズムがはまってきただろうか。

 

もつれる優勝争い、勝機は一瞬。

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さらにその後初めてJP選手が引っ張り、折り返し付近では大橋選手が前に出るが、やはり大きな動きにはならず、再びぼくが前の展開に戻る。

 

今回、ぼくが特に警戒していたのは大橋選手で、これまでもふくしまシティハーフマラソン等で同じレースを走った事はあるが序盤からついていけず、大橋選手がどのようなレース展開を好んでいるのか、どういうリズムで走るのか、未知数の部分が多かったためだ。

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↑ふくしまシティハーフマラソン2023の結果。スタートしてすぐ離されたため殆ど一緒には走っていない。W大橋はゲストの川内優輝選手にも先着した実力者。

 

そんな選手が、後ろで殆ど無駄な動きをせず待機しているのだから、かなり不気味。

 

25-30kmは16分56秒と1番のペースダウン。少し海沿いの風が身体を冷やすように感じられた。

 

集団はまだ5人。これまでは30km以降は失速していた棚橋くんや濱口くんも非常に良くついてきており、このままでは誰かが終盤スパートをかけたら、1人だけ硬くなっておいていかれやしないかという懸念も生まれてきた。

 

35km手前で、ややJP選手がプッシュしたのもあってか、棚橋くんや濱口くんも遂に脱落。この30-35kmは16:41と元のペースに戻った。

 

この抑えめのペースならおそらく完全なスタミナ切れを起こす事はないだろう。というか、そうなったら優勝争いでは話にならないのでそう信じ込む。

 

中間地点から延々と"花海道"の直線を走り続けるこのコース、特に折り返してから37km付近でカーブして春野競技場に向かうまでが本当に長く感じた。

昨年はこの後でバテて行場さんに突き離されてしまったので、絶対にここでは落ちたくない。

 

ペースは上がってきたものの、まだ余力がありそうなライバルが2人もいる状態で、こちらの手札を全て見せることはできない。切れるカードを全て出し切った者から遅れていくのだ。

 

このまま40kmに突入し、いよいよこの日最大の勝負ポイントが訪れる。

 

大橋選手が、僅かに集団から遅れはじめているのがわかった。

ここまで優勝できそうな手応えらしいものは全く無かったが、ようやくレースが大きく動く。

横に並んで走るJP選手の息遣いもやや荒くなったように思えた。

ぼくの長年のレース経験で培われた勘が、ここが勝負所だと脳に語りかけてくる。この時、少し時間の流れがスローモーになったように感じられた。


”やるんだな!? 今、ここで!”

”やれんのか!?”

”よし、行くしかない!”

 

ぼくはここまでの鬱憤を晴らすかのようにスパートを敢行。

 

今日のレースで唯一、勝利への手応えを感じられた場面で、そしてそれは僅か1km程度の間だった。f:id:takemaru-yamasaki:20250217232623j:image

ぼくのスパートを耐え切ったJP選手は、まだまだ余力を残している表情。

どうも、ぼくの歴戦の勘は外れていたようだ。そして相手の強烈なカウンタースパートが炸裂。

ぼくの表情はあっという間に般若の形相になり、みるみるJPとの差は広がっていく。

 

そしてラスト1km、龍馬マラソン名物・春野の激坂がやってきた。

こんな苦しい展開で、この難所。申し訳ないが、もうぼくは対戦相手の事を考える脳みそのスペースは無くなっていた。とにかくこの地獄の約600mを耐えて耐え凌ぐだけ。

 

ただ、この時沿道から「20分切れるぞ!」という声援が聞こえてきて、大変励みになった。

35kmからは時計を見てなくて、本当かなぁ?とは思いつつも、後半を力強く走れた事でかなり近いタイムになっているのは十分にあり得る。

 

競技場に入り、時計を確認。よし、これはコースベストいけるぞ!!

 

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タイムは2時間20分33秒。一昨年出したコースベストを約11秒更新。

結局JPには23秒程差をつけられてしまったのは悔しいが、ここのラスト2.195kmを7分03秒で走られたら白旗をあげるしかない。(ぼくの7分26秒も今までより30秒以上速いタイムだった)

 

2年前のJP選手はアキレス腱の故障の影響で3位、今回はそう簡単にいかないのはわかっていたが、やはり本調子のJPは強かった。完敗である。

東北の強豪ランナー・大橋選手にはなんとか勝利する事ができたが、ほんの僅かな差で、ここはコースをよく知っているぼくに分があったものと思われる。

今回は高知県勢も自己記録更新が続出する大健闘。これからが楽しみだ。

 

 

こんな事を言うと甘いと思われてしまうかもしれないが、本当は全国のライバルとの競り合いをここ地元高知でできる、みんなに見てもらえるだけで、勝敗関係無くぼくはとても満足している。

 

一昨年は小田くん、昨年は宿命のライバル行場さんと競り合い(青学の塩出選手にも抜かれてしまったが)、そして今年は三つ巴の決戦。

 

みんな全国色んな大会で顔を合わせて競ってきた、時には仲間になる事もあったメンバーばかりである。

そんな人達と、今度は高知の道で先頭争いができる。まさにランナー冥利に尽きるというもの。

 

でも、このまま地元で勝てない2番目の男のままで終わるのも悔しいかな。

 

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夜はまるRC打ち上げ。スペシャルゲストで招待選手の松本稜くんと、今年は女子2位にランクアップした森野さんが来てくれました。長いようであっという間の楽しい1日。

 

今年も沢山の応援ありがとうございました!

 

 

レース結果

 

2時間20分33秒(2位)

(5km)16:37/16:20/16:37/16:42/16:42/16:56/16:41/16:30/7:26

HALF69:56-70:37

 

⭐︎コースベスト11秒更新

⭐︎春野の激坂があるラスト2.195kmをこれまでより30秒以上速くカバー

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↓激闘から最後はサプライズもあった昨年のレース振り返り。

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