いわて盛岡シティマラソン振り返り。
岩手県初レース、県庁所在地の盛岡で行われる大規模フルマラソンだ。
今回は大阪以来8ヶ月振りのマラソン、まだマラソン的な走り込みを開始したばかりで30km走は一本のみ。新作のメタスピードエッジ+でのフルデビュー戦でもある。
トレーニングや経験を積むレースという位置付けでのエントリーだったので、なるべく前半は抑えてハーフは1時間11分前後でエネルギーをセーブし、5位以内に入るのが今回の目標だった。
ただ、この大会はMCC(マラソンチャレンジカップ)にも加盟しており、第一回大会の2時間23分を更新して優勝すれば10万円の賞金ゲットというおまけもある。
ビッグタイトルと賞金という報酬を前に欲をコントロールして冷静に走ることができるか。
起床は5時半、コンビニで買った小さいロールパン4個と、ヨーグルト&りんご(バナナがなかった)、コーヒー。
宿泊したR&Bホテルから約1km少し歩いて、会場の盛岡城跡公園にレースの約1時間半前に到着。
川沿いで短めのウォーミングアップを済まし、準備完了。荷物預かりもわかりやすく、ストレス少なく準備できた。
整列はAブロックがさほど混雑しておらず、直前でも余裕そうだったが、トイレが一箇所しか見当たらず少し離れていたので、覚悟を決めてそのままレース開始を待つ事にした。
今回はエネルギー補給にもあまり神経を使わなかったため、直前に摂るジェルも忘れてしまった。
あまり気合いは入ってないが、久々の大規模マラソンが楽しみの気持ちが大きく、リラックスして走れるのは良い事だと思おう。
ハイスピードで優勝争いはスタート
☆終盤まで同じ集団でレースを進めたランマックスチャンネルさんの動画と合わせて読むとより深くレースが楽しめます。メガネに赤い汗止めバンダナと紫ユニフォームがぼく。
レーススタート。
先頭集団はいきなり勢いよく飛び出し、周りもそれにつきあっている。いきなりプランと違うぞ。
まともにはついていかなったが、それでも最初の1kmは3分09秒付近。やはり速い。
ぼくは集団のペースが落ち着くまで若干離れながら様子を見て、3km付近で集団に加わった。
積極的に前に出ていた優勝候補の阿部選手が完全に飛び出し単独走になり、ぼくは7〜8名ほどの第2位集団を形成した。
5km通過は16分19秒となかなかのペース(このままいけば2時間17分台)。
先頭争いだし、やはりこんな展開になるか。牛山さんが序盤から逃げた昨年の金沢マラソンに近い展開で、後半逆転を狙いたい2位集団も気が抜けない。
それなりにきついし、後半を考えるともう少しゆっくりでもいいというのが正直な所。
2時間19分台の記録を持つますを選手が積極的に引っ張り、リズムはそのまま10kmを通過。5-10kmは16分35秒とここも良いペース。
10-15kmは17分02秒と少し落ちた。理由はわからないが、小刻みなカーブの影響だろうか。今回そこまでタイムは狙ってないし、むしろこれくらいで行きたかったので、一喜一憂はせず平常心で走れた。
15-20kmは17分05秒で、ハーフを1時間10分47秒で通過。想定より若干速いものの、オーバーペースというほどではない。
そんなに余裕があるわけではないが、ここまで順調と言っていい。
ますをさん、前回大会優勝者の強豪ランチューバー・ランマックスさん、ライバルの行場さんと事前の予想通りの順当なメンバーが集団に残っていた。
街中を離れ、派手な見所は無いが、のどかな自然の感じられる心地よい道が続く。
いよいよレースは勝負の終盤へ。
コース最大の“山場”、20-30kmの強烈なアップダウンへ突入。
実はぼくは20kmを敢えて少し集団から遅れて通過している。
盛岡マラソンには20km〜30kmのタイムを最速で通過した者に与えられる「山の神賞」というものがあるのを前日に発見。
トップを逃げる阿部選手のペースはわからないが、少なくともこの集団で30kmをトップで通過すれば大きく「山の神賞」に近づくわけだ。
昔のミニ四駆アニメ「レッツ&ゴー」の第一話※にインスピレーションを受けて実行した、実に姑息な作戦である。
※兄弟の合体技でアクシデントを切り抜けるのだが、頭脳派である兄の烈が微妙に車体を前にズラしていて優勝した。ぼくは密かに他のメンバーより20kmスタートの通過をズラしていたのだ。
調べていたコース情報通り、20km過ぎからは上り基調。そして25kmの上りは予想以上に強烈だった。
“ここを乗り越えれば、後は下りばかりになるはず”。ぼくはそう思って気合いを入れた所、思ったよりペースが上がっていたようだ。
まずランマックスさんが脱落、その後下りに入ってますをさんも離すことができた。遂に集団崩れは行場さんと一騎討ちに。
ここからは全体的に下り基調となり、しばらく気持ちの良い景色の「御所湖」を眺めながら走る。
勢いに乗り、意気揚々と30kmを通過。この5kmは16分51秒と山区間でペースアップに成功。これは山の神賞GET、それにうまくいけば優勝も狙えるかもしれないぞ!?
マラソンは、小さいロスの積み重ね。
しかし32km付近で、「あっ…」という嫌な予感が身体を駆け巡った。エネルギー切れの予兆である。
当初のプランを忘れ、すっかり調子に乗ってしまったようだ。
気づいた時には遅く、ここにきて疲労感とほぼ同時に左の足裏(真ん中寄りの母子球あたり)に強い痛みがきてしまった。
まだ慣れてないメタスピードエッジプラスで、接地の感覚が掴めなかったのか、下り坂で無理に地面を叩いてしまったような気がする。
身体はきつくなってきたのに、足裏の痛みで踏ん張ることができない。ぼくは少しづつ行場さんから離れていった。
行場さんも今回に向けては故障で練習が遅れていたようで25km過ぎからはぼくについていくのが精一杯に思えたが、とにかく脅威的なスタミナを持っているのは何度もこれまでの競り合いで体験している。これから急激なペースダウンをする可能性は低い。
ここからはぼく自身との戦いで、なるべく失速を抑えて3位の表彰台を獲得するのが重要だ。
35km手前で最後の折り返し、後ろを確認するとかなりの距離が開いていた。これは3位はいけるぞ。
30-35kmは17分13秒で通過。まだそれほど悪くはなく、行場さんとの差も大きくは開いてない。足裏の痛みが体力の温存になっていればかえっていいかもしれない。
だがフィニッシュを楽観視していたのも束の間、遂に38km付近で特大の爆弾がぼくの身体に落ちてくる。
完全なエネルギーの枯渇。
今までも極端な疲労は体験したことはあったが、今まででも1、2を争う酷さだった。
全身の力が抜け、顔しか自分の意志で動かせないような感覚になった。
こうなると、貯金も簡単に底を尽きてしまう。39km手前でランマックスさんに捕獲されてしまった。
4位にダウン。こうなるとモチベーションも一気に落ちてしまうが、とにかく早く完走したいという気持ちで走った。
止まってもおかしくないスピードになったが、止まりたくないのでどうにかアゴを上げて走る。
もはや効率の良さなど全くないが、手足が言うことを聞かないので、こうでもしないと身体が前に進めないのだ。
なんと長いラスト2km。41kmまでくれば…。盛岡マラソンは競技場フィニッシュではない。42kmの看板が見えた。
いよいよ、ようやく…。
なんとかこれ以上は順位を落とさず走り切れた。
コースの最大の難所は多くのランナーを苦しめ、ぼく程ではないにしても、他の上位選手もペースダウンを余儀なくされたようだ。
タイムは2時間28分05秒。行場さんはかなり迫ったものの阿部選手が逃げ切り、2人共大会記録を更新。
”マラソンは30kmから“とはよく言ったものだが、本当に終盤の数kmの大失速だけで競り合っていた選手と3〜5分もの差をつけらてしまったのはなんとも悔しい。
結局山の神賞も優勝の阿部選手が20km→30kmを33分37秒でカバーし1番(2位のぼくは34分01秒)と、ぼくの密かな努力は全くの徒労に終わってしまった。
ぼく的には30kmまでは想定以上に良い内容でレースを進めれたとは思うが、走り込み不足だった事、エネルギー補給にもあまり気を使ってなかった事、優勝や山の神賞がチラつき、つい悪魔の誘惑に負け無駄なパワーを使ってしまった事等、小さな積み重ねがラスト5kmでガツンとツケになって返ってきた。
もう何度も走ってわかっているつもりでも、マラソンの厳しさを身体で再認識できたのはよかったとは思う。
大きなマラソン大会は8位入賞までステージ表彰となる事が多いが、盛岡は3位まで。
今回も辛酸を舐める事になった。
とは言え当初の目標は達成でき、まずまず成功したレースだったと思う。
大規模マラソンでのトップ5に入りは、高知龍馬、愛媛、おかやまに続いて、今回が4度目。
過酷だけど、マラソンはやっぱり楽しい。街中で先頭集団を走って優勝の夢を見られるというのはなかなか無い機会だ。
まだシーズンは始まったばかり。自分を見失わず、じっくり冬に向けて調子を上げていきたい。
レース結果
2時間28分05秒(4位)
(5km)…16:19/16:35/17:02/17:05/17:10/16:51/17:13/20:07(2.195km)9:41(4:25/kmペース…)
HALF70:47-77:18
○25kmからの激坂コース
☆大規模マラソン4大会回目のTOP5
△山の神賞獲得ならず…
↓昨年秋の金沢マラソン振り返り