福岡国際マラソン振り返り 。
聖地・福岡に集まった、絞りに絞って、資格記録が2時間20分36秒までのマラソンランナー計86人。
2020年12月6日、いよいよ日本のフルマラソンが再開だ。
- [スタート-5km]〜様子見〜
- [5-10km]〜ハイペース〜
- [10-15km]〜不安〜
- [15-20km]〜冷静〜
- [20-25km]〜高揚〜
- [25-30km] 〜我慢〜
- [30-35km]〜勝負のゴング〜
- [35-40km、FINISH]
- 第74回福岡国際マラソン結果
なぜだかわからないけど、今回はいつもより緊張感が強く、レースが本当に不安で怖く感じて落ち着かなかった。
久々のマラソンだからか、よりレベルが高いランナーのみに絞られたエリートレースだからか、厳戒態勢ゆえの重苦しい雰囲気だからか。
とにかくスタートしたら一緒だ。マラソンはもう何回も走ってきたじゃないか。アップで身体を動かし、レース直前くらいには気持ちもある程度落ち着いていたと思う。
久々の正午(12:10)スタート、当日の気温は14℃前後、日差しが強いが、昨年の神戸もこれくらいだったはずだし、そんなに心配することはないはず。競技場に入ると風が強く感じた。
プランとしては、前回ハーフの自己ベスト以上のペースで行って失速してしまったので、できればイーブンに近い無理のないペースで走りたい、といった所。
[スタート-5km]〜様子見〜
レーススタート。
福岡ではまずトラックを3周以上も走る。全体的にやや突っ込んで入っている印象。
ぼくの1km通過は3分10秒切るくらいだった。少し距離を置き、様子を見る。
競技場を出て、少し離れた所に大きな集団が形成されていた。
ここで少人数のグループにハマってスローで牽制、という展開にはなりたくないという意思が働き、周りにも何人かいたが、ぼくが率先して前に出て、集団に追う。
追いつく、2km通過が6分15秒程度。結構ペースアップしたようだ。
もしオーバーペースでも、いつでも離れれる事を意識して、後ろの方に位置。
5km通過は15分54秒。うーん、速いね。
[5-10km]〜ハイペース〜
台湾の張さんが前に出て、引っ張り始める。張さんのベストは2時間14分台、また五輪出場を狙っていると思うので、一気にペースを上げてくるかもしれない。
他にも2時間15〜17分台ランナーが集団にはいるので、痺れを切らしてスパートをかけてくるという事は十分にあるはずだ。
周りには神戸で一緒に走ったおだ君やサカモトさん等顔見知りのライバルが沢山いて、久々に一緒に走れて、ここで勝負するぞと、嬉しくてテンションが上がってしまう。
かなり前の方のポジションまで上げていったが、集団のペースが上がると若干きつくなり、“いかん、いかん勝負はまだ先だ“と、また後方に下がっていった。
この日のぼくは、レース中のプランがブレ気味で、揺るがない意思力が欠けていたかもしれない。
10km通過、31分47秒、この5kmを15分53秒。速いぞ速いぞ。
[10-15km]〜不安〜
少しペースが上がるときついが、ペースアップがそれほど長続きするわけではなく、これくらいならなんとかいけるのではないかと感じていた。無理して玉砕というほどではないはず。ただ東京ではハーフ過ぎで離れてしまったので、急にきつくならないかは怖かった。
大集団の中間くらいのポジションで、ペースに不快感を感じた時は、後ろに下がって様子を見る感じでレースは進んだ。
10-15kmは15分56秒。ペースはほとんど変わってない。
[15-20km]〜冷静〜
16kmでは別府大橋の、このコース唯一と言ってもいい大きなアップダウン、給水があったのもあり、集団が大きく縦に広がる。
ぼくはここで自分のスペシャルドリンクをとれなかった。というか無かった。誰かが倒したっぽい。
まぁ、一回くらいなら。ゼネラルドリンクのアクエリアスをとったが、久々のペットボトルで飲むのは一気に水分が入っていって苦しく感じた。
バラけた集団も大体再び元に戻ったと思うが、なんとなく余裕が無い選手も出てきたのでは無いかと思い始めていた。
ぼくにとっては、神戸の方がもっと細かいアップダウンがあってきつかったぞと、言い聞かせながら走った。
15-20kmを16分05秒。やや落ち着いてきて、ここからはあまり上がらないのではないだろうか。
[20-25km]〜高揚〜
ここで前の方に位置していた走力の高いランナーがペースを上げる動きが見られた。距離の半分くらいから先頭集団から落ちてくるランナーを拾っていくうちにペースアップしているのは良くある事だ。川内よしき君も前に出ている、やはり実力のあるランナーはタイムを狙っていて積極的。
明らかに集団がバラけている。ここらでぼくは走力が近いランナーと足並みを合わせ、後ろで新しい集団を形成すべきかな?
この貯金を活かし、早めに引いてそこそこのペースを維持すればかなり良いタイムを狙えるのではないか。
しかしどんどん集団から溢れていくランナー、前の集団がドンドン離れていく、このまま見送るのは悔しい、今なら間に合う、もっとあの集団で勝負したい…。
結局ぼくは、後方集団を抜け出し、前を追う事を選択した。中間地点を67分22秒で通過。
最近ハーフのほぼベスト記録で通過するのが当たり前になってしまい、なんだか笑ってしまう。
賢い走り方ではないかもしれないが、少なくともこの時のぼくの身体はまだ行けると後押しをしてくれた。
少し体力を消耗したと思うが、そこまで無理はせず集団に追いつく。ここでだいぶ絞られたようだ。
錚々たるメンバーの中で、今ぼくはきちんと集団で勝負に参加できている。
サバイバル戦を生き残っている緊張感、高揚感、これも長距離走の快感を味わえる瞬間の一つである。んんん、きもちいい〜。
25km通過。この5kmを16分17秒。揺さぶりの後はペースが落ちていたようで、これもラッキーだったか。
[25-30km] 〜我慢〜
心肺的には大丈夫だと思ったが、26~27kmからは脚に不吉な感触を覚えるようになった。
全身がズシッと重たくなるような腹痛もジワジワ、少しずつ身体が疲労のサインを送ってきたように思えた。
しかしマラソンのきつさには波があるもの。気のせい気のせいと、気持ちを前向きにして走る。幸い前のペースも上がりそうな気配は無い。
きついが、ここまで来たら絶対に30kmまではここで勝負するぞ。28、29…
30km通過、この5kmを16分36秒。明らかに落ちている!
体感のきつさとペースの大きなギャップを感じたのはここが初めてだった。
[30-35km]〜勝負のゴング〜
前の選手もここからが本当の勝負開始のゴングだとペースを上げる。
非常にまずい。もちろん同じようにきついランナーもいるはず。
意外にも張さんは先に離れたので、そこを目指したが全く差が縮まらない。
なんとかペースが合ったNo.87の選手にひっつく。ここだけは絶対離れてはいけない。35kmまで勢いを維持したらマラソンは勝ちなんだ。
32km、香椎の折り返し、福岡国際の正念場が始まる。相当にきついが、ここを粘れば危機から脱出できるかもしれないという淡い期待で自分を振り立たせようとした。
33km、遂に、自分の中にある何かが切れたような感じがした。
心が折れたとか、精神的な話ではなく、本当に身体を滑らかに前に運ぶための燃料が底を尽きてしまった。
身体が進まない。ここまで風がそこそこ強かったので、この場面での追い風を期待していたが、まさかのここも向かい風。
頑張ろうと少し速度を上げれば、容赦無く風がブレーキをかかる。
後ろから牛山さんに抜かれ、程なくして今朝話した今年の龍馬マラソンチャンプに抜かれる。ずっと近いポジションで走っていたM×K代表松本さんにも離されてしまった。東京の再現のようだ。
次の1kmの看板が果てしなく遠い。このあたりでは猛烈に歩きたくなる衝動に駆られた。DNF一歩手前の危機。
30-35km、この5kmは18分03秒。残念ながら、勢いは完全に止まってしまった。
[35-40km、FINISH]
ここから先は意外と順位が落ちない、後ろも苦しんでいる事がわかった。前で止まっているランナーもいる。
30kmまでの順位は悪くなかった。あとはこの素晴らしい大会で、少しでも良い順位をとるんだ。
抜かれまくるよりはポシティブな気持ちでいられたかもしれない。
なんとか前に行けないかと、顎を前に突き出してみた。苦肉の策だが、少し前に進んだような気がする。
40km地点、もう時計は見なかったが、目の前の電光時計は2時間17分と想定を遥かに超える、一体どれだけ落ちたんだろうという落ち込みっぷり。(この5kmは22分16秒と参加者数の中でもここはトップクラスの失速っぷりだったようだ)
ここにきて、微妙に体力が回復したのを感じた。前を走る松本さんも思ったより離れてない。40kmで待っていたおやじマン監督の声も聞こえてきた。せめて最後くらい、良い所を見せて終わりたい。
念のため用意しておいた41kmの給水で脳がフレッシュになったのか、ラストスパートは多少はまともな走りになった。最後の絶妙にきつい平和台陸上競技場に戻る坂は腕を振ってクリア。
2人かわし、競技場で後ろからきたメタレーサーのランナーに抜かれてしまったものの、順位を上げてフィニッシュ。
結果は2時間25分59秒、54位だった。
かなり失速した時も、なんとか22分台くらいはいけないかと思ったので、後半の落ち込みについては悔しい内容となってしまった。初マラソンの頃に戻ってしまったようだ。
序盤からのハイペースに対して実力不足だったのは1番の理由だと思うが、秋はトラックに全力で取り組んでいたので、やはりマラソン練習の準備不足が響いた感は否めない。
一方で、ハイレベルな集団で堂々と30kmまで勝負できたのは自信も持ちたい。
順位的には悪くなく、実力者も後半失速していたので、気温や風の影響なのか、あまり記録が出やすい条件とは言えなかったかもしれない。
マラソンで大事なのはトータルタイムではあるが、このコースでは30kmの記録も公認され、今まででベストのタイム(1時間36分41秒・3:13/km)だった。
このまま行ければ2時間15分台のペースになる。いよいよ、30kmまでのスピード持久力は高知県記録(2:16:33)が現実に見えるレベルまで持ってこれた。
やはり速い選手と長い時間一緒に走れるのは楽しかったし、できるだけ前を追った事を後悔はしてない。
もう迷わないぞ。怖れながら走っていた3:10/km前後のペースも、これからはぼくの走る集団の標準になる。
残りはもう少しの余裕度、ペースを維持する肉体の耐久力、ほんの少しの幸運があれば行けるはず。
来年で初マラソンから10年。ぼくのマラソンプロジェクトは最終段階に入ったのだ。
第74回福岡国際マラソン結果
2時間25分59秒(54位)
使用シューズ▷ソーティマジックLT2
5km…15:54/15:53/15:56/16:05/16:17/16:36/18:03/22:16/8:59
☆30kmPB(1:36:41・3:13/km)
☆ハーフ67:22通過
△35-40km22分…
▷次回は出場者86人の特別なレースとなった福岡国際マラソンの準備、レース前後の模様を振り返っていきます。