30代最初の挑戦、IAAF(国際陸連)ブロンズラベルレース・神戸マラソン振り返り。
レース当日、5時少し過ぎ起床、朝食をとり、7時にバスでスタート地点に移動。外は思ったより肌寒く感じた。
招待選手控え室に到着。スタートすぐ近くにウォーミングアップエリアもあり、しっかり準備して10分前程度に整列。最高に快適。
15分ジョグ、直線が短かったので短い流し2本して着替え、後でもう2本流しをした。10分前にジェル補給。
スタートラインに着くと、背中に日差しを浴び、かなり暑く感じた。この気温差が激しい感じは、かなり体感気温が上がりそう。でも20℃くらいまでだったら何度も経験しているし、ぼくにとっては不利に働かないはずだ。
スピードレースの前半戦
レーススタート!
まず、最初のポジショニングが大切だ。が、全力ダッシュで飛び出してくるお調子者ランナーもいて結構ごちゃごちゃ。めんどくさいな。
そうこう考えているとグイグイ前の海外招待選手がペースを上げてきた。キロ3分くらいになってきたか。
急激なチェンジオブペースで、あっという間に集団が分かれる。日本勢はよしきくんと実業団勢2人が前へ。ぼくは最後尾で様子見。
どうするべきか、ぼくも前と勝負してみたい、でも初めから出し切ったら潰れるのは目に見えている、しかし序盤から1人になるのもきついし…
しばし悩んだ結果、ぼくの今までの経験から引き出された答えは、「少し距離を置いて走る」。
この選択はおそらく正解だった。調子が良く一人で走ってもリズムが落ちない。そうすると前から2人の実業団勢とタンザニアのマクラ選手が落ちてきたのだ。
よしよし、ぼくは3人を吸収し、前へ。
5km通過は15分40秒!速い。単純計算すれば2時間12分のペース。このまま最後まで保つわけがないが、思ったよりキツくない。
もちろんマラソンは序盤調子良く飛ばせても、後半エネルギー切れで撃沈というのは珍しくない話。今回は走り込みに自信があったわけではないが、ここも今までの経験から、なんとなく今日の調子ならそこまでやり過ぎてはないように感じていた。
自分の調子を信じよう。
実業団勢は意外にもピッタリ後ろについて前に出る気配が無い。まぁ、同じ土俵で戦っているのだからあんまり実業団実業団とは言いたくないけど、明らかに格下のぼくが引っ張っている状況はいかがなものだろうか。でも、ここはぼくも名前負けせず堂々と走りたい。
そういうわけで、ぼくとマクラ選手が一緒に引っ張るような形で第2集団は進んだ。
マクラ選手は持ちタイム2時間11分台だけど、海外勢のうち1〜2人が調子が悪いのは驚くほどの事ではない。しかしマクラ選手はたまにペースアップして抜け出しては、それに着くとすぐ嫌そうな顔をして横に並ぶように言ってくる。
気持ちはわかるけど、着かれるのが嫌なら無理にペースアップしなければいいのに。
アフリカの選手がよく細かいペース変化を仕掛けてくること、後ろに着かれるのを過剰に嫌がることは台北でも経験していた。
よしきくんは海外勢にガンガンついている。羨ましい、ぼくも加わりたい。一気にペースダウンした時はだいぶ近づいているように見えたが、無理に追うのはグッと我慢。案の定、急激な揺さぶりを繰り返しているようだった。
丁度10km付近で集団から落ちてきたよしきくんを吸収。5-10kmは16分15秒、10kmを31分56秒で通過し、タイム狙いのハーフとほとんど変わらないペース。でも全然きつくない。
調子が良い時こそエネルギーを無駄使いしないように、少し上体を起こして集団を引っ張っていても力を溜めるイメージを忘れないようにする。リラックスしてフワフワ前に進む。
楽しくなってきた。サンテレビで「現在日本人トップは山﨑選手」とか言ってるかな。ムフフ…。
だが、気づいたらいつのまにか集団が大きくなっていた。一般参加の選手1人に、元世陸代表選手が加わり7人程度に。
快調に走っていただけに、ちょっぴり気落ち。やはり調子に乗るとよくない。これは一旦下がって冷静にレースを進めよう。
10-15kmは16分32秒。少し落ちたけどまだ自己記録は大幅に上回るペース、なのにオーバーペース感は一切ない。今日は人生最高の調子なのではないか。給水もここまで全て成功。
この後、よしきくんやマクラ選手がグッとペースアップしたりして、多少集団がバラけたりする場面もあったが、落ち着いて対処すればまた元の集団に戻っていった。
一番よく聞こえる声援は「川内がんばれー」。
とにかくこのまま、せめて25kmまでは淡々と行きたい。しかしこの後、勝負は大きく動いた。
集団崩壊、向かい風、アップダウン、試練の後半戦
20km手前で折り返すと、予想してなかった強い向い風が襲いかかってきた。
行きの調子の良さは追い風の影響だったのか…?ガクッ。
15-20kmは16分36秒。ここまで一度も出なかった実業団勢が前に出ている。そうだよね、これからは引っ張ってくれる番ですよね。
と思いきや、なんと前の2人が一気にスパート!集団は一気に崩壊。
少し遅れて一般参加のおだ選手だけがうまく対応して前を追った。
ぼくは予期せぬスパート、プラス給水も初めて失敗し(ここだけスペシャルドリンクが全く視界にさえ入らず。無かった⁇)、動揺して対応が遅れてしまった。
やられた!そっちは全く後ろに着かせるつもりはないってことか。くっそー、このままじゃ終わらないからな。ハーフ通過は今まで最速の1時間8分41秒、でもまだいっぱいいっぱいではないぞ。
しばらく後ろに着いてきたよしきくんを振り切り、ぼくは前を追って走ることを決めた。
20-25kmは16分38秒。風を浴びながらの長い単独走が始まった。
沿道からは何度も9位!そして日本人4位の掛け声が聞こえてくる。ジャパン8(日本人8位以内は来年招待)という制度もあるが、ぼくにとってはそれはどうでも良く、狙うは8位入賞。
ここで粘ったら、必ず1人!少なくとも1人は前から失速する選手が出てくるはずだ。
25-30kmは細かいアップダウン、単独走で徐々に力みが生じてきたのもあり、17分15秒までペースダウン。左足の親指のマメが痛い。しかしここで集中を切らせてはいけない。まだ前は見える。そこまでリズムも悪くない。
そして33km付近、遂に走りをやめている海外招待選手を目撃!(持ちタイムトップのネガシュ選手だった)
キ、キター!!念願の入賞圏内に浮上!
給水と沿道の応援を励みに、たまに少し楽になったりしながら、大事な30-35kmをクリア、17分32秒。よし、さっきからそこまで落ちてない!なんとかこのペースをキープできれば…
しかし最大の難関、38kmからの大きな橋のアップダウンが待ち受けていた。
これが消耗しきった身体では噂で聞いていた以上にきつく、さらに疲労で飲み物も消化できなくなってきたのか、強烈な右脇腹の痛みも襲ってきた。
本当の“マラソンの壁”にぶち当たったかのようだった。さすがにもう気持ちも強く持てなくなってきた。早くゴールしなければ。35-40kmのタイムは…怖いので見ない(18分56秒まで落ちていた)。距離表示の横に電光の時計があって、それで2時間15分という数字は見えた。22分くらいではゴールできるか?
下りも筋肉と脇腹の痛みでスピードを上げれない。親指のマメもグチュグチュしてる。目もチカチカして何かが見える?視界がおかしくなってきた。
でも、ここまで来たらなんとか逃げ切れるはずだ。一度も後ろは振り向かなかった。今まで何度もマラソンの後半で大きな集団に抜かれて順位を落とす屈辱は味わってきたけど、他の選手だってきついはず。
残り1km…「川内がんばれー!」
あっ、やばい…
ラスト200mで抜かれるとか、ここまで頑張ってそんな終わり方できるか。
ぼくは残った力をなんとか振り絞ってペースを上げた。
2時間23分45秒。後ろから最後の切り替えを見せたよしきくんとの差は11秒。
粘れたとは言い難い、ドロドロの走りでなんとか入賞を死守した。
【神戸マラソン/KOBE MARATHON2018】2時間14分~2時間47分
表彰式。どうせなら狙いたいとは思ってたけど、このメンバーで本当に入賞できるとは。
IAAFラベルレースで初めての8位入賞。
これはぼくのマラソン競技人生最高の実績だと、誇りに思いたい。
自己ベストには届かず、後半の走りには課題は残ったが、海外勢も35-40kmは17分以上かかっておりなかなかタフな条件だったのだと思う。
うまくバランスをとった形でハイペースにチャレンジできたのは納得いく内容で、またこの8~10月は調子がなかなか上がらず、ロング走も不足している中で本番に良い状態を持ってこれたのも自信になった。
今回優勝が狙えるレベルの地方大会を選ばなかったのは、やはりぼくの中で国際大会で勝負したいという気持ちが強くあったからだ。
もちろん東京や、びわ湖、福岡国際のような世界トップクラスの大会で上位を狙うのは難しい。
でも神戸や世界各地のブロンズラベルのレースならどうだ?自分の生きる場所が見つかったのかもしれない。
神戸マラソン結果
2時間23分45秒(8位)
HALF1:08:41-1:15:04
SORTIE MAGIC LT / ターサーソックス / POLAR M430
☆IAAFラベルレース初入賞!
IAAFブロンズラベル、招待選手のお仕事はこんな感じ。
招待選手は神戸ポートピアホテルが拠点に。
三宮から直通バスがあり、ゴール地点のすぐ近く、ルールミーティングやレセプションも全てここで行われて快適。
ここでIAAFラベル制度についておさらい。基準は毎年変わったりするので、ここで詳細を説明するのは控えておきますが、招待選手のレベル、テレビ放映、ドーピングチェックやその他大会運営等が一定の水準に達したロードレース大会に「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」といった格付けが与えられます。(数が増えたので今後はプラチナラベルもできる予定だとか)
日本の大会では東京や福岡国際、びわ湖のような日本の代表的なマラソンがゴールドラベルに選出されていますが、ブロンズには神戸と長野マラソンが選ばれています。
・大会リスト
IAAF Label Road Races Archive of Past Events | iaaf.org
一般の市民ランナーにはあまり関係無いね、とか言いたくなりそうですがそう仰らず(^^;; ランネットのレポとかを見てもラベル認定されている大会は評価が高いので運営もしっかりして安心なのではないかと思います。
広々としたお部屋でリラックス。ありがたい。今までがんばってきてよかった…
ホテルから見える景色。
前日16時からはルールミーティング。控え室やウォーミングアップエリアも含め、ゴールドコーストや東京マラソンエリートの部を思い出すような洗練した雰囲気で、完全に国際仕様になっていると感じました
18時からはレセプション。神戸マラソンはゲストも有森裕子さん、谷口広美さん、中山竹通さん…と超豪華。
招待選手は壇上で紹介されました。
意外にもパスタがありませんでしたが、お寿司やパン、ポテト、蕎麦を少しづつつまみました。
昨年もおかやまで出会った有森さんと記念撮影。縁起が良いようで今回も好成績が残せました。
全てが終わり、準備完了。
IAAFブロンズラベルレースの招待選手ということで、ロゴの小さい国際仕様になります。
レース当日、朝食も選手用に5時からオープン。様々な料理が揃っていて、きっちりいつもどおりの朝食がとれました。ブラウニーは我慢しました(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
今まで5回出たと言うと喜んでくれました(^ω^)
神戸マラソンとゴールドコーストマラソンは提携しているのです。
ぼくも勝手にゴールドコーストマラソン代表のつもりで走りました。
レース後もポートピアホテルで、シャワーと軽食のおもてなしを受けました。
10位に入った地下さんと色々お話させていただきました。
実は同世代でずっと前から知っていたのですが、なかなかお会いすることができず。とてもナイスガイなお方でした。
さて、今回は全く観光をせず、レースに集中してすぐバスで帰る準備。
スイーツと中華料理食べたかった(T . T)
バスではご褒美に徳島のSAで鳴門金時ソフトクリームを購入。
副賞はなかったものも、立派な盾と賞状をゲット。
まぁ来年も招待でこの待遇を受けられるのが副賞のようなものか。
今回は最高の待遇で、最初から最後まで本当に快適に過ごせて競技に集中できました。
良い成績が出せたのも、主催者の方のサポートがあってこそです。
今回は神戸らしい観光レポは無いけど、神戸もマラソンも本当に楽しかった。次はゆっくり観光をしてみたいな。