まるランニングマガジン

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高知のマラソンランナー・山﨑竹丸が走る事をもっとディープに楽しむ情報を発信していきます

第55回愛媛マラソン5位振り返り[神大会]

初めて招待選手として出場させていただいた、愛媛マラソン振り返り。

大会前日編

 

愛媛マラソン前日午後・開会式。

ステージでは世界大会の選考レースでも観られないような最高のショーが展開され、会場はおおいに盛り上がった。

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ドキドキ。 

 

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そして本当に盛り上げるのが上手な”リアルプロランナー” 川内優輝選手(ぼくが勝手につけたキャッチフレーズなのであしからず)。愛媛出身の箱根戦士達を煽って会場が湧くは沸く。

噂には聞いていたが愛媛マラソン、本当に素晴らしい。競技と市民マラソンとエンターテイメントの融合。これこそぼくが求めていた都市型マラソン大会だ。
 

ぼくは初の招待選手としてこの大会の雰囲気を満喫していた。あとは本番のマラソンで主要登場人物の1人として全力を尽くすだけだ。

 

「見た目はあまり速そうにないランナー」

 事前の南海放送の招待選手紹介番組では「見た目はあまり速そうにない」と評されてしまったぼく。というか以前からよく言われる。自分ではそんなに思ってないのだけど。

第一、足が遅そうとかってよくわからない。例えば格闘技の選手で「見た目は弱そうだけど強い」 とかならなんとなくイメージはつくが。


この「見た目はあまり速そうにない」雰囲気は、最近ランニングコーチとしては得しているように感じることが多い。
ビギナーの市民ランナーは、現役選手のランニングコーチというとバシバシしごかれそうな体育会系を思い浮かべてしまうが、ぼくはなんとなく場にユル~い雰囲気を作ってしまう。
実際、ぼくは他人にはかなり甘い。人に言われた事をすぐ真に受けてしまうし(決して素直なわけではなく、スルー力が無いというのか‥‥)。

この持って生まれた性質で、学生時代はかなり損をしていた。いつも覇気が無く、競技に対するやる気も無いように監督や周りから思われていた事に気づいたのは高校三年の卒業間近。

特に駅伝のようなチーム競技ではかなり選考面で減点されていたのではないかと思う。

大体、ぼくは普段から周囲にやる気があるアピールや、頑張ってますアピールをするのはあまり好きじゃない(レース後はよく大げさにぶっ倒れるけど…)。

ぼくは誰かのためにスポーツをしているのではない。ただ自分が好きだから走っているだけだ。

…正直言うと、真面目にやっていれば誰かが必ず見てくれているはずだと思っていた。

世の中そんなに甘くないのだ。ぼくのようなタイプは結果を出している時はいいけど、ちょっと調子悪くなったら「やる気が無いからだ」の一言で片づけられる。

ぼくがもしサラリーマンになったら絶対に出世できないだろうな。 


そんな過去もあって、ぼくはチームで上の立場の人から選考されるようなスポーツには少なからず不信感がある。まぁ個人競技でもそんな事は、ままにあるんだけど基本的には自分の出たい試合は自分で決められるマラソンが好きだ。

 

話がだいぶ遠くに行ってしまった。

そう、ぼくも”速くなさそう(遅そう)”と言われ続けると段々自分でもそんな気がしてきたりする。というか「そもそも本当に遅いんじゃないか?」という気さえしてきた。

愛媛マラソンの招待選手の中では実際にぼくは完全に格下。招待選手用の控室に案内される時にリストをジッと見てみるとぼくは"招待選手B"となっていた(少しづつ待遇が変わってくる)。

周りは川内優輝選手はもちろんの事、歴代優勝者に、初マラソンでも箱根駅伝で活躍した大学生等錚々たるメンバー。

幸い、今回は練習で故障も体調不良もほとんど無く、今までで最高の状態と言っていい仕上がりだった。でもぼくなんかが絶好調とか言ってもたかが知れてるんじゃ?

この中で”遅そうで、実際遅いランナー”ってカッコ悪すぎるぞ…


そうですよ、どうせぼくは大したことないですよ。

卑屈な地方の雑草ランナー、ここに極まれりである。

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開会式が終わったら夕食へ。

大黒屋」で夕食。魚プラスご飯にしようと思っていて、フンパツして鰻。うどんも美味しかった(多分うどんメインの店なのだけど)。

 

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ホテルに移動し、お風呂に入って、名前付きゼッケンをつけて寝る。
今回は少しだけクッションのある SORTIE MAGIC LT  で勝負。

 

 

大会当日。その手でつかみとれ。

寒波到来で心配された天気も、日曜は素晴らしいコンディションに。

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会場周辺は実にウォーミングアップしやすかった。アップに関しては一般参加でも問題無かっただろう。整列はわからないけど。 


9時20分にスタート前招待選手用控室に移動。なんと県庁の中だ。


雑草根性?なんというか、やはり普段は都市型マラソンではあまり良い条件で走った事がないので待遇が良すぎて、ちょっと落ち着かない部分もあった。

なんにせよ準備は万端だ。

レーススタート数分前に最前列に集合。予定されていた招待選手紹介コールもカットされ(?)気がついたらあっという間に号砲。


不思議とレースが始まると気持ちは落ち着いていた。
意外にも川内選手は飛び出さない。でもぼくには川内選手がどのような揺さぶりを仕掛けてくるか、今までの経験やマラソン中継観戦でなんとなく予想することはできた。

1kmを3分15秒で通過した後、川内選手がガガッと急激にペースアップ。

一気に集団が崩れる。ここでどの船(集団)を選択するかがカギだ!

 

ぼくが迷う事無く選択したのは、招待番号5の今崎選手のいる集団。

実は2年前の大阪ハーフでも今崎選手の見事なペース配分でぼくはベスト記録を更新している。

プラス早稲田の大学生ランナー、一般参加の有力選手の4人という小さな船ができた。

他にも前にも後ろにも小さな船がポツポツ。川内選手の揺さぶりで早くも混沌としたレース展開になってきた。

5km通過は15分58秒。む、速い。まさかの15分台にちょこっとビビってしまったぼく。
もちろん調子が良いから速いペースで無理なく通過できたとも思うのだけど、なにせペース感覚にあまり自信が無いので、後ろに控えた実力者の方がベストの選択をしたのでは…という不安もよぎった。

ちょっとキツイような、ぼくには実力に見合ってないペースではないか…。

でもこのペースも落ち着き、むしろこの貯金を有効に使いつつ、リズムに乗って走れば問題無いはずだ。と気持ちを切り替えた。

 

この後は予定通りキロ3分20秒前後のペースでレースが進む。 
やはり気温が低めで身体はなかなか温まらないような気がしたし、途中少し腹痛もあったけど、徐々に調子は良くなってきたように感じていた。

おかやまの反省を活かして、序盤~中盤は集団で力を貯めて我慢する作戦だった。

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ハーフ通過は1時間9分20秒ほど。昨年のびわ湖より10秒くらい速いだけ。大学生がずっと引っ張っていたが、少しづつペース落ちてきたか。でもここはまだ温存したい。

平穏な展開を望んでいた25km手前、ずっと集団に潜んでいた一般参加の有力選手が一気にクッとペースアップして前に出る!少し面くらってしまったが、意を決して前を追う事に決めた。

 

後半戦。勝負の25km以降。


そして間違いなくこの判断は正しかった。

 少しづつ後ろの実力者集団が近づいていたからだ。せっかく良いペースで来ていたのに後ろに追いつかれたら精神的にガックリきてしまうだろう。逆に後ろの集団は前と追いつけそうな所でまた遠ざかるとかなりしんどい。

 

ここらへんから前から落ちてきたランナー達を吸収しながら、順位も狙ってレース展開が熾烈になってくる。面白くなってきた。

まだスタミナ切れの予兆も無い。やはり今日はマラソン人生最高の調子だ!

ほとんど前に出なかったぼくも30km手前から少しづつ引っ張り始める。
本当はびわ湖の成功体験を活かして、30-35kmから勝負を仕掛けたかったが、まぁ仕方ない。

どちらかというと順位重視だったけど、そろそろタイムも意識し始めていたからだ。けん制し過ぎて極端なスローペースにはしたくない。

30km過ぎてからも交代し合って、思った以上に良いペースでレースが進む。30-35kmを16分32秒で通過。この区間のリズムを落とさなければ良いタイムが出る事は確信していたけど、落とさないどころか完全にペースアップしている。素晴らしい♡


ただ、完全に予想外だったのは一般参加の有力選手、関東から参戦してきたかすみがうらマラソン王者・行場さんの仕上がりだった。

実は本職がランナーズ記者の行場さんから一緒のレースを走るという事で、事前にちょっとしたプチ取材の約束をかわしており、また持ちタイムが近い事もあってマークしていたが、今回は仕事が忙しくちょっと体調的に厳しいと聞いていた。

 

その行場さんが、ビックリするくらい強かった。

35kmを過ぎても押せ・押せムード。
今までびわ湖や福岡国際で同じように2時間20分狙いくらいの集団で走っていた時にも、35km付近にここまでペースアップを仕掛けられる人はまず見た事が無く、その好調オーラに後半は完全に圧倒されてしまった。

そこで、困った時の今崎選手(ごめんなさい…)。どうも相性が良いみたいで、ここでも淡々と丁度良いペースを刻んでくれた。 

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しかしぼくの右足は悪魔が蝕みつつあった。
最大の難所・平田の坂の上りをクリアしてホッとしていたのも束の間、下りで右のハムストリングが痛くて思うように下れない。
今崎選手も痛みが出てきたのか少しブレーキをかけたような走りになっていた。

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少しづつ危ない感覚が強くなってはいたけど、ひょっとしたらラスト数キロで歩くハメになるかも…というほどの危機感はレース中では初めて。ここで前を行く行場さんを追うのは完全に諦めざるをえなかった。

残りちょっとでも歩いてしまえばここまでペースを保った努力が全て水の泡になりかねない。

ぼくは「絶対ゴールまでもつ!ゴールまでは大丈夫!」と自分に言い聞かせて走った。

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40km通過。2時間13分くらい。ラスト2.195kmを昨年のびわ湖と同じくらいのペースで走れば、2時間21分を切れる!

スタミナは…まだ切れてない。ここまで来たらなんとかなる!
ぼくは決死のラストスパートを放った。今崎選手が少し離れていく。お、ぼくのスパートも捨てたもんじゃないな。


どんどんスピードに乗って来た。ラスト1km!後はハムがちぎれてもゴールに飛び込めばいいだけだ!42kmの看板をチラ見するとちょっとウルっとしてきた。


カーブを曲がるとゴールが見えた!タイムは…まだ2時間20分台になったばかり!

自己ベスト大幅更新!やったぞ!久々に会心のまるポーーー-ーーズ!!そしてさようならぼくの右ハム…。

 

ぼくはゴール後バタっと倒れ込んだ。ううう、ハムが、ハムがぁー……あれ?意外と大丈夫かも。
しかし担架で運ばれてしまったぼく。「すみません!大丈夫でした!」「無理しないで休んでください。」
決死のスパートでむしろ筋肉の動きが整ったのか?ちょっと申し訳ない気持ちになったけど、倒れ込んで少し休んでからぼくは救護エリアを去った。

 

まぁ、とにかくやった。もう少しで”サブ20”は達成できていたという気持ちもあったけど、念願の東京マラソンエリートの部参加資格記録(2時間21分以内)は突破。

自分的にはタイムも、四国社会人ランナートップで5位という順位(今回は勝手に四国選手権マラソンだと思っていた)も出来過ぎの100点満点。ぼくは自分にも甘い。

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注目の川内優輝選手はなんと2時間9分54秒という信じられないタイムで優勝。川内さん自身も驚いていたが、地方大会でサブテンというまた新たな伝説を作ってしまった。
2位の早稲田大・鈴木洋平選手も中盤まで果敢に勝負し、初マラソンで従来の大会記録を上回る2時間14分台でのフィニッシュ。本当に素晴らしい。

初マラソンの大学生は後半落ちて来た所を拾えると思っていたけど、駒澤大学の中村選手も2時間18分台とうまくまとめて3位だった。

そして4位の行場さんまでが”サブ20”(そして表彰式では5位の選手が4位の選手からプチ取材を受けるというかなり不思議なシチュエーションが実現してしまった)。

10位まで国内の有名な競技者向けマラソンに見劣りしないくらいの好記録続出で、本当に神懸かったような大会になった。

色んな要因はあるけど、一番は一緒に競り合う強いライバル達がいたからこその結果だと思った。

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5位でも立派なトロフィーをいただいて嬉しかった。
でも正直入賞の副賞(3位までだった模様)は何か欲しかったな。
いや、ぼくは招待選手とし最高の待遇で走れたから良いのだけど、一般参加で入賞した方々にはぜひなにかご褒美をあげてほしかった。

でもまぁ、やはり自身の好記録が一番のご褒美でしょうか。


アウェーの大規模市民マラソンで一般参加で勝負するのは本当に大変。関東からわざわざ来てくれた強豪市民ランナーの皆さんも招待選手と全く遜色ない走りでレースをさらに盛り上げてくれた。

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マメ。イテテテ。今回はそこまで酷くなかったのでよかった。

 

第55回愛媛マラソン結果

 2時間20分30秒(5位・PB)

[5km]15:58/16:22/16:32/16:50/16:55/16:47/16:32/17:12/7:21
HALF1:09:23?-1:11:07

 SORTIE MAGIC LT  //プロパッドRソックスM400 HR


・前日の開会式から、国内マラソン最高峰のエンターテイメント

・難コースとまではいかないが、細かいアップダウンは多い。有名な35km過ぎの平田の坂は緩めで長いのが特徴
・風の影響もそれなりに受けやすい。風向きが好記録の鍵?

・愛媛の2月上旬は気温低め。基本は10℃以下

・無料のおもてなしが充実(おかげで?普通のお店はあまり並ばなくてよい)

・その他細かい配慮も嬉しい

 

🏆自己記録2分以上更新!

🏆東京マラソンエリートの部参加資格突破!※2017年現在

🏆ラスト2.195kmのベスト27秒更新!

🏆四国三大都市型市民マラソン全て入賞!

  

男子4位から10位のコメント| |愛媛新聞ONLINE
 

愛媛マラソンのおもてなし

 

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恒例のおもてなし満喫モードに。 この白い塩おむすびが最高においしかった。
ぼくもそれなりには、招待選手らしい行動を心掛けていたけど、もう解放されたので皆さんと同じように楽しんでいいでしょう。
愛媛マラソンは無料の食べ物おもてなしも有名という事でそれを体験してみたかった。

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いもたき。 

 

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 ご飯が炊けるまで整列してかなり待ったマテラの豚丼
そのせいでイライラしていたのか、もらえる直前で近くにいたおじさんから「おい自分、列並んどったか!?」とイチャモンをつけられてしまった。

ちゃんと並んでたけど、もし仮に1人くらい自分を抜かす人がいたとしてもそんなに怒るほどの事じゃないでしょう。寛容な日本でありたいと思った今日この頃でした。

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足湯もあったけどこれはパスし、最後に魚のフライを普通に買って、 ぼくにしてはそんなに食べ過ぎず帰りました。

 

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といいつつ、控室でいただいたお弁当を食す。 

ここ数年は特に”おもてなし”という言葉がよく言われるようになってきたけど、お遍路文化の四国はおもてなしの本場。
招待選手として最高の待遇を受けたのはもちろん、レース中も長めの紙コップをボランティアの学生さんが手渡ししてくれるのが本当にありがたかった。地方の市民マラソンでは通常エリートランナー用のスペシャルドリンクは置けないが、紙コップはとりづらく、すぐ中身もこぼれてしまうのだ。

各地のマラソン大会も過剰なサービス合戦ばかりではなく、こういったランナーのための細かい配慮ができるようになれば素晴らしいなと思った。

 

VS川内優輝選手、連敗記録更新中。

 

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 最後に道後温泉…ではなくぽかぽか温泉でしっかり交代浴をしてから家に帰りました。

 
レース後川内さんと一緒にクールダウンジョグをしながら、たっぷりマラソン後リカバリーレクチャーをしていただき、レース後ケアの重要性、そして自分に決めたルーティーンを貫く川内さんの意志の強さを感じた。
そしてこの人も絶対に実業団チームではやれないだろうなと改めて確認…

マラソンの話が大好きでマイペースな川内さん。
周囲に理解されず、いつも自分の殻に閉じこもっていたぼくにとって、いつの間にか一緒にいてとてもホッとする存在になっていた。

2年前、地元メディアで大ボラを吹いて龍馬マラソンで川内さんにボコボコにやられたの辛い経験も決して無駄ではなかった。全ては繋がっている。
もう国内外の大会で何度も一緒に走って来たぼくは、今回も川内さんの参戦で浮足立つ事は決してなかった。

川内さんはまだまだマラソン界の常識を覆し続ける。ぼくもこれからも進化し続けていけるように努力したい。

連敗記録は絶賛更新中だけど、もうそんなことはどうでもいい。

ただ、いつかは本当の意味で”一緒のレース”をしてみたいとは思っている。


[愛媛マラソン編・完。To Be Continued…]