まるランニングマガジン

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高知のマラソンランナー・山﨑竹丸が走る事をもっとディープに楽しむ情報を発信していきます

八王子ロングディスタンスで27分38秒69。クリス・デリックのこれまでの経歴を紹介する

今回は八王子ロングディスタンスで異例の参戦となったアメリカの長距離ランナー、クリス・デリックの経歴について紹介していきたい。

 

Chris Derrick - Wikipedia

USA Track & Field - Chris Derrick

 

デリックはアメリカの長距離界においては、まさにエリート中のエリートランナーだった。 

大学入学後すぐ、5000mで従来の記録を大幅に上回る(あのゲーレン・ラップの出した13分37秒91)13分29秒98というプロ顔負けのジュニアレコードを樹立。

 

身長が高くガッチリした体格、大人びた顔立ちは”早熟の天才”という印象もあった。

ただ同世代のライバルも強敵が多く、ややラストのスプリントに難があったデリックはビックタイトルはなかなか獲得できなかった。

2012年、大学4年時には10000mにも本格参戦。

日本の選手も数多く出場するペイトン・ジョーダン招待で非凡な長距離センスを発揮した。
5000m過ぎから集団を積極的に引っ張り、ラストのスプリント争いではユタ大学のキャメロン・レビンスに遅れをとったものの、27分31秒38という好記録。

(レビンスも大学生ながらこの後カナダ代表としてロンドン五輪に出場し、10000m11位、5000mで決勝進出という成績を残した)

www.flotrack.org

 

既に多くの学生の選手権試合を多くこなし、体調が万全ではない中で、全米選手権で4位。ロンドン五輪出場にはあと一歩の所で届かなかった。

 

全米屈指の名門チーム・バウマントラッククラブへ。


そして大学卒業後、プロランナーとしてデリックが所属するチームとして選んだのは、ジェリー・シューマッカーコーチ率いるバウマントラッククラブ

マット・テゲンカンプ、クリス・ソリンスキー、イヴァン・ジェーガーといったワールドクラスの長距離ランナーを輩出してきた全米屈指の名門チームだ。

 

才能豊かな選手が最高の環境に行けばすぐに花開くというものではない。
しかしデリックは高い適応能力を見せ、3月の世界クロスカントリー選手権で10位、トラックシーズンに入り6月のプレフォンテインクラシック(ユージンDL)では5000mで13分09秒04のまたしても自己新記録で7位に入った。

 

1500mでも自己記録を更新(3:39:53)、全米選手権10000mではオレゴンプロジェクトのラップとリッツェンハインに次ぐ3位に入り、世界選手権の切符もゲット。

 

デリックの実力は早い段階で学生レベルを超えて、国内トッププロレベル、それどころかダイヤモンドリーグで活躍するアフリカの強豪選手と十分対等に戦えるレベルまで達していた。

 

[2013年のレース動画]
・2013 men world cross country

www.usatf.tv

www.usatf.tv

 

しかし”早熟の天才”にも遂に試練の時がやってくる。

モスクワ世界選手権の10000mは直前にアキレス腱を痛めてしまい、18位という不本意な結果に終わった。
その次のブリュッセルDL5000mでは自己記録を僅かに更新してトラックシーズンを締めくくったが、以降は故障で度々順調な流れをストップされる事が多くなる。

 

長距離レースでは国内では常に上位の成績を残していたが、あと一歩という所で記録を狙うヨーロッパのレース前や全米選手権前にアキレス腱の故障が続き、自己記録の更新や世界大会での入賞といった成績を残すことはできなかった。

 

得意のクロスカントリーでは2015年はエディンバラ国際クロカン、全米選手権と圧倒的な強さで優勝し、世界クロカン前は注目選手として記者会見にも出席したが、ここでもアキレスの負傷が響いて本番では24位に終わった。


Coverage of the Morrisons Great Edinburgh XC 2015

 

www.usatf.tv

 

2016年は五輪選考会でのマラソン挑戦も噂されたが、満足なトレーニングができず断念。

復活と故障を繰り返す、不安定な選手になってしまい、リオ五輪のアメリカ勢中長距離大活躍の影ですっかり鳴りを潜めてしまった。

 

そんな中、意外過ぎるデリックの復活の舞台が決まる。

なんと毎年11月に開催される日本の八王子ロングディスタンスにバウマンTCのデリックとアンドリュー・バンバロウの出場が発表されたのだ。

 

国際陸連代理人の柳原元氏がサポート関わり、アメリカトップランナーの異例の挑戦が決定した。

blog.goo.ne.jp

 

海外では秋に10000mのレースが行われる事はほとんどない。

この中途半端な時期に世界大会の標準記録を突破しておき、本番のトラックシーズを余裕を持って選手権試合に集中する事が目的ではないかと思われた。

 

しかしいくら走りやすい事で定評のある日本の記録会タイプレースといっても、ここ数年故障に苦しんだデリックが、いきなり遠く離れた異国のレースで本来のパフォーマンスを発揮できるかはやや懐疑的と言わざるをえなかった。

 

しかし日本の実業団所属のケニア人ランナーに囲まれても臆する事無く淡々とレースを進めるデリック。世界クロカンやダイヤモンドリーグでの経験を積んだデリックにとってはペース走の延長のように感じたかもしれない。

そしてラスト1周では満を持して先頭に躍り出る。
ラスト200mで力尽きて3位に落ちてしまったものの、27分38秒69のセカンドベストで見事今回の遠征の目標を達成した。


八王子ロングディスタンス 男子10000m A組 2016年11月26日

 

しかしデリックにとっては、これで完全復活とまでは言えないだろう。

10000m27分前後のランナーがペースメイクをしてくれる日本の記録会レースは世界的にみてもほとんど例が無い。

 

ただ、これで味を占めたアメリカのランナーが今後10000mの記録を日本で狙いに来るようになれば面白い。

 

これからは日本の陸上界に海外勢がドンドン入り混じってくる混沌(カオス)な世界になっていくかもしれない。

そう考えると、これからの展開にますますワクワクする。

 

ひとまず、重い扉を開いたクリス・デリックに拍手と、今後の国際舞台での活躍に期待したい。

 

www.takemarun.com

 

 

www.flotrack.org