まるランニングマガジン

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高知のマラソンランナー・山﨑竹丸が走る事をもっとディープに楽しむ情報を発信していきます

世界のランナーから学ぶ6種類のヒルトレーニング[坂道]

 ヒルトレーニングとは坂道の傾斜を利用したトレーニングの事です。


ヒルトレーニングはランナーに様々な恩恵をもたらしてくれます。

筋力アップ、心肺機能の向上、フォームの改善、様々なコースに対応するレーススキルアップ


またスプリントのように走ったり、じっくり長い坂を走ったりと練習のやり方によっても身体への刺激が変わってきます。

ここでは世界のトップランナーも取り入れている6パターンのヒルトレーニングを紹介していきます。

 

 

 

1.ショートヒルインターバル

 

ヒルトレーニングと言って様々なやり方がありますが、最も簡単なトレーニング法として、200-300mほどの登り坂を繰り返すインターバルトレーニングがあります。
このように短い坂道を90%ほどの力で駆け上がる事によって、股関節周りの大きな筋肉や上半身の筋肉も鍛えられ、また心肺にも大きな刺激を与える事ができます。


5000m日本記録保持者の大迫傑選手が所属するアメリカのオレゴンプロジェクトではトラックや芝生でのショートインターバルと組み合わせて
行っています。
上り坂だけだとスピードはそこまで上げれないので、このやり方だとフラットな場所でのスピード感覚も一度の練習で同時に鍛える事ができます。

オレゴンプロジェクトでは、このようなトレーニングを主に休養明けの基礎作りをする時期に頻繁に行います。



・メニュー例
200m×5-10×200mhill×5-10(休憩はゆっくりジョギングで元のスタート位置に戻る)

(前後に10-20分のウォーミングアップとクールダウンjogを行う)

 

 

 

 

2. ロングヒルクライムラン

 

マラソン全米最速記録(2:04:58)を持つライアン・ホール選手が所属していたマンモスレイクトラッククラブでは10km前後の長い上り坂を使ったテンポ走を定期的に行っています。

このようなトレーニングはボストンマラソンのような後半に上り坂があるコースの対策だけではなく、足の衝撃を少なく基礎的なスタミナ作りをするのにも効果的です。

ですが、身近に箱根駅伝の5区のようなずっと上り坂が続くコースを探すのは大変です。
また車かロープウェイ等のサポートでも無ければ下りも同じ距離を走らなければいけません。


そこでテレンス・マホンコーチは簡易版としてトレッドミル(ランニングマシーン)の傾斜を利用したヒルトレーニングを勧めています。

・メニュー例
30-60min or20min×2-3 UP-hill Tempo(4-8%の傾斜)


※テンポ走とはここでは最大心拍数の85%前後の力配分で行うトレーニングの事を書いています。
エリートランナーにとってはハーフマラソン~マラソンペース、10kmを60分前後で走るビギナーランナーにとっては10kmレースペースが目安になります。

このトレーニングの欠点としては、心拍数をかなり上げて走っても普段のジョギングか、それ以下のペースになってしまうのでスピードは不足してしまいます。
マンモスレイクトラッククラブでは午前中にこのトレーニングを行い、
午後に150-200mのスプリント走を5~6本行う事で脚を素早く動かす感覚を忘れないようにしています。

ヒルクライム走を終えた後に平坦な場所で100m程度のスピード走を何本か入れるだけでもスッキリした気分で終わるはずです。

ぼくも天狗高原で合宿を行った時、一番下から宿舎がある標高1400m付近まで走るトレーニングを何度か行った事がありますが、本当に素晴らしい達成感でした。
 
機会があれば、ぜひ自然の山を登るトレーニングにもチャレンジして山の神になったような気分を味わってみてください。

ライアン・ホールのボストンマラソンに向けたトレーニングが記載されている本Running with Joyも発売されています。
トップ選手の14週トレーニングが一日一日詳細に書かれている貴重な一冊です(英語)。

 

 日本のランニング雑誌では長い坂を上って下る「峠走」というトレーニングもよく目にします。下り坂は脚の負担が大きいのでやり過ぎは禁物ですが、マラソンランナーにとっては衝撃を受け止める筋肉を鍛えるというメリットもあります。

 

 

 

3. ロングヒルリピート

 


 ロングレペテイション形式のヒルトレーニング。

コリス・バーミンガム選手等オーストラリアのトップランナーが数多く所属しているメルボルントラッククラブでは毎週土曜日に800m(または3分)×6の上り坂走を行っています。

この練習の目的は、筋力とスピードの強化、そして
最大酸素摂取量の向上です。

坂を力強く駆け上がっていけば、自然に脚も呼吸も追い込まれていくはずです。まずは距離より時間を目安にして行ってみましょう。


・メニュー例
3min Up-hill×4-6(5-10kmレースの力配分で)
休憩はジョギングで元の位置に戻る

バリエーション
(3min-1min)×3-5(1分の部分は3分の部分より速く走る事を意識する)
400-800m Up-hill

 

動画の練習風景のように、自然の土道で走れればもっと気持ちよさそうです。
アスファルトのロードでも問題無いと思いますが、下り坂のジョギングで脚に負担が大きくなるので、シューズはある程度軽さとクッションを両立したアシックスのターサーシリーズアディダスのアディゼロシリーズのようなスピード練習から走り込みまで幅広いペースに対応したものがオススメです。

 

 

 

 

4. リディアード式ヒルサーキット

 

リディアードのランニング・バイブル

ヒルトレーニングといえば、「リディアードのランニング・バイブル を思い浮かべるランナーも多いのではないでしょうか?

アーサー・リディアード氏(ニュージーランド)といえば、60~70年代にかけてピーター・スネル、マレー・ハルバーグといった数多くのオリンピックメダリストの指導に関わっており、その確立されたトレーニング理論は今なお熱狂的な信奉者も多いです。

 

昔、ピーター・スネル氏(引退後は運動生理学者に転身)が来日した際の講演に参加したことがありますが、世界で最も有名なコーチと言っても過言ではないでしょう。

リディアードの提唱するヒルトレーニングでは、ただ走るだけでなく坂を使ったエクササイズで身体全身をまんべんなく鍛えることを目的としています。

 

・3つのエクササイズ
スティープヒルランニング…上り坂でのモモ上げ走。前モモや腸腰筋(付け根付近)の強化。
ヒルバウンディング…身体全体を大きく使って身体を前に運ぶ。ハムストリングスやお尻の筋肉の強化。
ヒルスプリンギング…足首周辺のバネを使って上にチョーン、チョーンと跳ねる。ふくらはぎ、アキレス腱の強化。



リディアードファウンデーション



最初のうちは無理に坂の距離や本数を決めず、トータル15分ほどで行う。
※必ず最低15分程度のウォーミングアップjogを行う。

リディアードはこの他にも下り坂をスピードを上げて走るヒルストライディングを勧めていますが、固いアスファルトの路面だと故障のリスクも大きいので、芝生のコースや緩やかな下り坂が無ければ無理に行う必要はないでしょう。

リディアードの本家ヒルトレーニングでは、これを常にジョギングを挟みながら行い、平地に戻ったら”流し”も行うかなりハードな内容になっています。
リディアードは期分け(ピリオダイゼデーション)をとても重視しており、これはマラソンコンディショニングトレーニングという基礎作りが終わってから行う練習なのです。

ですが、初心者や動き作りをあまり行っていないランナーは上の三つのエクササイズを普段のトレーニングに少しづつ取り入れていくだけでスピードや筋力強化、フォーム改善にとても効果的です。


リディアードのランニング・バイブル

 

 

 

5.テンポラン+ヒルトレーニングの組み合わせ

 

2014-07-05-14-05-16

第一回世界選手権マラソン王者のロバート・ドキャステラ氏の組み合わせトレーニング。(上の写真はゴールドコーストマラソン前日パーティでキャステラさんとの記念撮影)

坂道インターバルはスピードアップや筋力強化にはとても有効なトレーニングですが、ハーフ~フルマラソンのレースでは特に大事な
一定のペースで速く走る要素が不足してしまうという欠点があります。

そこで、坂道インターバルにテンポランを組み合わせると、
一回の練習で身体に様々な刺激を与える事ができます。

元マラソン世界記録保持者のロバート・ド・キャステラは、ヒルトレーニングをとても重視しており、毎週火曜日にはキロ3分前後ペースでのテンポ走を2-3マイル(3.2-4.8km)を行った後40秒~60秒上り坂をほぼ全力で走っていました。


キャステラさんはヒルトレーニングは長い坂をペースを落として行えばフォームが崩れてしまうので、短く急な坂を全力に近いスピードで走ることにこそ価値があると考えていました。


ビギナーランナーにとっては上り坂を全力に近いペースで走るのはかなり過酷なトレーニングのように感じるかもしれませんが、足にかかる衝撃自体は大きくないので、平地でいきなり全力走を行うよりはむしろ故障のリスクは少ないのです。
少し力を抑えて90%くらいの力で走っても凄く良いスピードトレーニングになるので積極的に挑戦してみましょう。



・メニュー例
2-3mileテンポ走+40-60"hill×8

・ビギナー向けアレンジ
3kmテンポ走(少しきついと感じるペース)+40-60"上り坂×4(90%の力で)
※必ず10-20分のウォーミングアップとクールダウンjogを行う


他に類を見ないボリュームが特徴の「ランニング事典」ではキャステラさんを始め往年の名ランナーの練習法が記載されています。
 

 

 

 

6. カノーヴァ式ヒルスプリント

 

短くて急な坂道を全力で駆け上がるトレーニングです。
これはショートインターバルとは全く異なる練習で、間の休憩は完全に息を整えてからスタートします。


この練習の目的は長い距離をゆっくり走るだけでは使えていない眠っている筋肉を呼び起こす事です。
また全力で走る事に慣れていないランナーにとっては、平地より脚への衝撃が少なく安全に行いやすいという利点もあります。

ケニアのトップ選手を指導するレナート・カノーバ氏は80-100m×10といったヒルスプリントをマラソン選手にも定期的に行わせています。

 

アテネ五輪マラソン金メダリストのステファノ・バルディーニもヒルスプリントを週1回行っていました。


このトレーニングでは有酸素的な刺激はほとんどなく、あくまで長距離選手のための筋力トレーニングの一種と考えた方が良さそうです。